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自動運転から車内のセンシングや環境改善まで 「オートモーティブ ワールド 2019」レポート

自動運転から車内のセンシングや環境改善まで 「オートモーティブ ワールド 2019」レポート

2019.01.28

Updated by Hitoshi Arai on January 28, 2019, 16:44 pm JST

去る1月15日から17日まで、東京ビックサイトにて「オートモーティブ ワールド」というイベントが開催された。自動運転やコネクテッド・カーなど、自動車業界の先端的なテーマに関わる技術を持った各社が集まったセミナー及び展示会である。イスラエルからも15社が参加し、ブース展示を行うと共に、17日には12時半から17時半の5時間に及ぶこの15社によるセミナーの場が設けられた。参加したのは以下の15社である。

AiGENT-TECH
Alango Technologies
Argus Cyber Security
Enigmatos
eyeSight Technologies
Foresight Automotive
Hailo
Jungo Connectivity
Regulus
Silentium Ltd.
Taditel
TriEye
Upstream Security
Valens
Vayyar Imaging

この中で、特に興味深かった自動車のサイバーセキュリティとセンサー技術に関連した4社を紹介する。

Vayyar Imaging

ミリ波の送受信回路72個を1チップに集積した3次元イメージセンサーを開発。もともとは、乳がんの検診に使われるマンモグラフィーが、2次元の撮像で被爆リスクも有ることから、それを代替するセンサーとして開発した。マンモグラフィーに比べて1/100の低コストで、3次元画像で腫瘍の検出ができ、かつ被爆もない技術としてスタート。農業や小売り、ロボティクスなど様々な分野にセンサー応用を拡張し、自動車応用まで展開した。

自動車内のモニターに応用すると、カメラではないのでプライバシーのリスクもなく、人やモノの区別だけではなく、子どもや大人の別、その位置が測定できるため、シートベルトを締めていないことを認識したリマインダー、幼児の置き去り検知、人の大きさに合わせて最適なサイズで膨らむエアバッグ、事故時の車内にいる人の人数や呼吸のパタンの検出、といった様々な応用が考えられる。車外のセンサーとしても天候に関わらず利用可能なため、駐車のアシストや障害物検知も可能。

自動運転から車内のセンシングや環境改善まで 「オートモーティブ ワールド 2019」レポート

Argus Cyber Security

コネクテッド・カーをサイバー攻撃から守るための監視、分析、レスポンスのプラットフォームを提供する。攻撃のスキルを持ったサイバーセキュリティ専門家チームが、30,000時間以上かけて自動車へのサイバー攻撃を調査、ECU(Engine Controle Unit)やネットワークを守る特許を51件保有(申請中も含む)。この蓄積に基づいて監視やリアルタイムのレスポンス対応サービスを提供する。

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Foresight Automotive

15社の中で最もアグレッシブなプレゼンをした企業で、完全な障害物検知のための4眼カメラ画像認識システムを提供。CMOSの光学カメラ2台と赤外カメラ2台の計4台で、天候や明るさに関係なく障害物を100%検知するという。

通常の赤外カメラは熱検知だが、独自のアルゴリズムでモノを検知している。単眼カメラでは認識(アルゴリズム)に"classification(分類)"が必要であり、世界中のものを分類することはできないので、見えないものが出るため多眼が必要だと主張している。

また、合流してくる車の認識の場合、既存技術では車全体がほぼレーンに入ってきたところで認識するが、Foresightの場合は、先端が入りかけたところで既に対象物の認識ができることもデモで説明した。評価キットを自動車メーカーへ提供しているということで、今後、OEM側がどのような判断をするか注目される。

自動運転から車内のセンシングや環境改善まで 「オートモーティブ ワールド 2019」レポート

Enigmatos

車の特徴を示す固有のディジタルプロファイル(DCIP : Deep Car Identity Profiling)を取得し、万が一、車輌ネットワークへの攻撃・侵入があった場合に、そのシグネチャを見ることで早期に不審な動きを検知する。AIを使った制御システム・セキュリティの異常検知ソリューションの考え方に近い。

エージェントがそのプロファイルを取得するので、自動車メーカーから情報を得ることなしに、どのような車にでも対応可能。実際の車のシグネチャの例も紹介された。

自動運転から車内のセンシングや環境改善まで 「オートモーティブ ワールド 2019」レポート

この他、音声による操作が普及することを想定し、様々な雑音の中から正確に音声を取り出す信号処理技術(Alango Technologies)や、ヘッドフォンを装着することなく、特定の空間のノイズリダクションを実現する技術(Silentium Ltd)などが紹介された。Silentiumの技術では、運転席と助手席にQB(Quiet Bubble)という静かな空間を作ることができる。今後、自動運転の世界に向けて、車外の安全対策だけではなく、車内のセンシングや環境改善もテーマとなってゆくことがよく分かるセミナーであった。

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新井 均(あらい・ひとし)

NTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu