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英欧州議会選で2大政党が大敗した理由

Why major parties lost UK’s European elections

2019.05.29

Updated by Mayumi Tanimoto on May 29, 2019, 07:30 am UTC

日本ではトランプ氏の訪日がトップニュースを独占していましたが、欧州では欧州議会選挙が実施され、イギリスでは、離脱派のブレグジット党(Brexit Party)と、残留派の自由民主党(Lib Dem)が票を伸ばし、保守党と労働党の2大政党が大敗する結果となりました。

離脱と残留を強烈に主張する派が大勝するという二極化状態ですが、イギリスはBrexitを巡って国が真っ二つに割れている様子がよくわかります。

この結果は驚くべきものではなく、むしろ想定内であった、といえるでしょう。

特に保守党の大敗は、離脱後の交渉の数々の意思決定ミスや、リーダーシップ欠如を反映した結果です。保守党へのプロテスト投票(反対意思の表明)のためにブレグジット党に多数の有権者が流れました。

POLITICOが本年2月から3月にかけて実施した世論調査をみると、有権者の保守党への失望がよくわかります。

この調査では、有権者は、保守党がBrexitを円滑に進められていない、リーダーシップがかけていると考えていることがはっきりわかります。

ロンドン、東中部(バーミンガムを中心とする伝統的な工業地帯だが経済は停滞)、スコットランド、北東部(ダーラムやヨークシャーを中心とする伝統的な重工業地帯。現在はイギリスで最も貧しい地域)と、どの地域でも、現在イギリスが直面する最大の問題はBrexitだという答えですが、保守党は期限までに交渉をまとめられなかったばかりか、ソフトすぎる対応で合意を得られませんでした。

次に、最も重要だと回答されたのが、どこの地域でも「犯罪」です。

イギリスはここ最近、青少年を中心とするナイフによる犯罪が大問題になっています。ギャングの間では、体のどこを狙えば何点というゲームまで行われている始末です。例えば頭を刺せば50点、腕なら20点という調子です。

そのようなゲームを煽るビデオクリップがYoutubeにアップされており、ドリルと呼ばれる過激なラップで歌われていますが、このようなコンテンツは表現の自由との関係でサイトから削除されません。

2018年は1946年に記録が始まって以来最悪で、今年は5月までにすでに100人もの人が刺殺されています。

その多くは、ギャングの麻薬を巡る抗争ですが、犠牲者の多くには20-30代の一般の人も含まれている上に、80代の高齢者もいます。最も若い犠牲者は14歳です。一ヶ月に約30名、1.45日あたりに一人が刺殺されているわけですが、こんな状況が日本でも起きていたら大問題でしょう。

2013年から2014年には、刃物による犯罪はケンブリッジシャー警察で95増加、ウェストミッドランド警察で87%増加、メトロポリタン警察で47 %増加です。緊縮財政による警察力の削減や、職務質問の減少が状況を悪化させているともいわれています。さらに、各自治体では若年層に対応するユースワーカーの予算が平均で40%削減され、ロンドン中心部などでは93%も削減されています。

10歳から17歳が防犯のために刃物を所持する数は急激に増加し、警察が把握しているだけでも最も若い所持者の例は9歳ですから、日本の皆さんにはこの問題の深刻さがおわかりになるのではないでしょうか。

ちなみに川崎の登戸で発生した刺殺事件は、刃物による犯罪が大問題になっているイギリスでも速報で報道され、各新聞のトップニュースになっています。ニュースのコメント欄では「あの世界一平和な日本でもこんな事件が起きてしまうのだ」と大変驚かれています。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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