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優柔不断な政府に激怒するイギリスの有権者

UK businesses angry about indecisive government

2019.06.29

Updated by Mayumi Tanimoto on June 29, 2019, 18:38 pm JST

前回は、不信任決議で党を追い出される保守党の議員についてご紹介しましたが、有権者の間で盛り上がる不信任決議運動は、保守党のリーダーシップ欠如を反映しています。

以前に保守党で地元選挙区で不信任決議を受けたAnna Soubry氏、Sarah Wollaston 氏、Heidi Allen氏は、地元選挙区の総会がUKIPの党員に乗っ取られていると主張しています。

強烈かつ単純な主張を繰り返してきたUKIPが人気を集め、前回の総選挙ではEU離脱党が多くの票を集めました。かなり過激な主張を繰り返す政党が、伝統的な保守党の支持者の支持も集めるということは、有権者は相当な怒りを溜めているということです。

保守党の議員がここまで強烈な不信任決議を受けて、党を追い出される羽目になっている理由は、合意なき離脱に対して反対をすることでBrexitがどんどん遅れるからです。

有権者は、合意があるにしろないにしろ、とにかく一刻も早く離脱を取りまとめて欲しいのです。

離脱するならするでまとめてしまえばなんとか対策が取れますが、 どうなるかわからない状態では企業活動にも大きな影響が出ます。不安定な先行きを受けて不動産の値段も上がりませんし、ポンドもどんどん弱くなってしまいます。離脱がまとまれば不動産市場も復活するでしょうし、企業の投資判断もはっきりとします。現在は、どう転がるかわからないいので、企業の少なからずが、リスク回避のためにコンティンジェンシー計画を用意しておかなかればなりません。

テック企業の場合だと、EU県内に情報システム部の一部を置く、GDPRでデータ移行が難しくなった場合に備えEU圏内にもデータを置くなど、ロジスティックスも費用もかなりの負担です。

合意なき場合、合意ある場合の双方に備えなければなりませんが、すでに2年以上も宙ぶらりんな状態なので、勘弁してくれという企業が増えています。

実際、テック企業の担当者や金融関係者に話を聞いても、Brexitにうんざりした、要員確保が大変というボヤキばかりを聞きます。一旦決めてしまえば何をするかはっきりするのにな、という意見が大半です。

イギリス国内はすでにBrexitに賛成か、反対か、という話は通り越して、離脱前提でさっさと前に進めようという総意なのに、政府だけが前に進んでないという状態です。イギリスの実体経済の弱さが原因ではなく、政府の優柔不断が懸念材料なわけですから、有権者が激怒するのは当たり前です。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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