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EU離脱派のイギリス経済予測は大外れ

George Osborne’s "Project Fear" was totally wrong

2019.05.30

Updated by Mayumi Tanimoto on May 30, 2019, 07:32 am JST

日本ではイギリスが国民投票でEU離脱を決定した頃の状況をすっかり忘れている人が多いようですが、非常に注意するべきことがあります。

それは、離脱直後に残留派がイギリス経済はクラッシュすると予測していた件です。特に元財務大臣のジョージ・オズボーン氏の超後ろ向き予測はほぼ全てが外れています。

https://www.express.co.uk/news/politics/947617/brexit-news-george-osborne-project-fear-farce-brexit-boom-philip-hammond-economy

2018年から2019年のイギリス経済は、どちらかというと好調で、失業率は史上最低で実質賃金は上昇しています。女性の労働参加率も上昇の一方で、これは単に低賃金の仕事が作られたというだけではなく、仕事が全体的に増えているということの結果です。

住宅価格も、離脱決定前よりは伸びてはいませんが、下落率は思ったほどではなく、その多くはロンドン中心部の高価格の物件で、中国を中心とする新興国の経済状況が関係しています。

郊外の家族持ち向けの物件は、相変わらず不足気味で価格低下は小さめです。

ロンドン中心部と郊外は建設ラッシュで、特に郊外の通勤は次々と新しい物件が建っています。

これはイギリスだけではなく、EU やその他の地域からロンドンに働く人々が集まってきているからです。また、移民する人々の少なからずは出産適齢期ですから子供を持つ人も少なくありません。

このような状況であるため、政府の債務は削減傾向です。またテック業界として注目すべきなのは、スタートアップへの投資は史上最高で、欧州各国からの資金が流れ込んでいることです。

イギリスは相変わらず欧州の IT市場の中心地であり、欧州で最も起業が容易であること、税制的に創業者利益が大きいこと、英語が共通語であるので高技能人材の調達が容易であること、ケンブリッジとオクスフォードには世界最高レベルの研究者がいること、また英語圏なので学校教育が英語、世界レベルの教育機関が揃っており、公立から私立まで学校の選択肢が多いので技術者や起業家は子供の教育に頭を悩ませる必要がないことなど、優位なことが多いのです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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