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18)絶対に失敗しないシリーズ(1)ひよこ豆のカレー

2019.07.07

Updated by Toshimasa TANABE on July 7, 2019, 14:19 pm JST

詳しいレシピを紹介するに当たっては、「絶対に失敗しない」というコンセプトで基本が良く分かるようなカレーの作り方を紹介していきたいと考えている。まずは「ひよこ豆のカレー」である(豆のカレーと野菜のカレーこそが真髄)。

豆のカレーの一番のポイントは、前日から豆を一晩水に浸しておかなければならない、だろう。思い付いてすぐに作る、という訳にはいかないのである。複数種類の豆を使う場合は、各々の豆に最適な火の通り加減があるので、あらかじめじっくり時間をかけて茹でなければならない、などということもある。今回は、豆はひよこ豆だけということにして、シンプルに作ってみたい。


材料(約8食分)
・ひよこ豆200g(スーパーなどで売っている乾燥ひよこ豆1パック)
・トマト2個
・玉ねぎ1個
・ニンニク30g
・ショウガ30g
・ホールスパイス
 コリアンダー10cc
 クミン10cc
・パウダースパイス
 パプリカ30cc
 ターメリック10cc
 カイエンペッパー5cc(辛いのが好きなら10ccに、苦手なら2.5ccに)
ガラムマサラ5cc
・塩15cc(豆を茹でるのに10cc、カレーの味付けに5cc)
・サラダオイル30cc(鍋の底面積に応じて多少の増減はOK)
・水1リットル
・トッピング(お好みで)
 ピーマン
 ショウガの千切り
 生クリーム
 バター


1)水に浸しておいた豆を茹でる
まず、前日に豆をたっぷりの水に浸しておく。翌日、水を吸った豆をザルにとって水を切ってから、1リットルの水に10ccの塩を加えて茹でる。25分から30分間くらい茹でる。

2)豆を茹でている間にカレーベースを作る。まずは材料を準備
ホールスパイス2種類をスパイスミルなどで潰しておく。コリアンダーとクミンでは粒状が異なるので、別々に潰した方がやりやすい。

トマトは粗みじんに、玉ねぎはみじん切りにする。ニンニクとショウガは、細かいみじん切りにする。すり下ろしてペースト状にしても良いが、いずれにしてもショウガのほうを少し粗めにする。

パウダースパイスは、先に計量してまとめて小皿などに揃えておくと、後で入れるときにスムースに進む。

3)ホールスパイスの香りを出してから玉ねぎを炒める
鍋にサラダオイルを熱して、ホールスパイスの香りを出す。弱火でじっくり熱する。プチプチといい始めてクミンの回りが泡立って香りが出てきたら、ニンニクを入れて炒める。
焦げないように注意しながら炒め、ニンニクが軽くきつね色に色付いてきたら、玉ねぎを入れて火を強める。もう、焦げる心配はない。

それまで入っていたスパイスとニンニクに玉ねぎをさっと馴染ませたら、ショウガを加えてさらに炒める。

4)トマトを加えてペースト状にしてパウダースパイスを加える
玉ねぎが透き通ってきたら(玉ねぎは茶色になるまで炒めないとダメなのか?)、トマトを加えて木べらなどで潰しながらペースト状になるまで炒める。全体がペースト状になってきたら、パウダースパイスと塩5ccを全部一気に入れて、全体に行き渡らせつつ良く炒め、スパイスに火を入れる。

全体的に滑らかなペースト状になる頃には、材料を刻んだりし始めてから、ちょうど30分間くらい経過しているはずだ。

5)茹でていた豆をカレーベースと合わせる
この時点で、茹でていた豆の固さを確認すると、ちょうど食べ頃になっているはずだ。固すぎると思ったら、もう少し茹でる。

茹で上がった豆を煮汁ごと全てカレーベースに投入して混ぜ合わせる。かき混ぜながら数分煮込んで、最後にガラムマサラを振り入れて、塩気を確認すればでき上がりだ。塩気がキツ過ぎることはないと思うが、万一、キツかったら水か牛乳を少し足して調整する。足りないと思ったら、少しずつ塩を足して好みの味に調える。

6)お好みで仕上げのトッピングを
トッピングはお好みだが、でき上がり直前にピーマンを輪切りにしたものを投入して、ちょっと火が入ったタイミングで盛り付けると、緑がキレイだし、歯ごたえが残ったちょっと苦いピーマンの味わいが豆のカレーに良く合って美味しいと思う。ショウガの千切りは、カレーベースにも入っているショウガの爽やかな香りをより強調してくれる。バターをひと欠片、あるいは生クリームを少し回しかけても良いだろう。マイルドなコクが出るし、見た目がプロっぽくなる。

※スパイスの量は、あくまで目安である。これを基本にしつつ、辛さや塩気なども含めて、自分の好みの味を探していこう。


こうして作ったひよこ豆のカレーは、豆を煮汁ごと入れるので豆の味わいが良く分かるカレーに仕上がる。カレーベースに豆が入っているというのではなく、あくまで「豆のカレー」になっているはずだ。ライスでもチャパティでも美味しく食べられる。さらに、豆とトマトの味わいのカレーベースとの相性が良いこと、スパイス感がしっかりしていることにも気付くだろう。最初に香りを出したホールスパイスが効いている。

豆のカレーは、材料を見ても分かるように、完全ベジタブルでヘルシーだ。とはいえ肉っ気が欲しい、というときには、多少の方便感もあるが、この豆のカレーができ上がる直前に鶏胸肉を加えて「豆とチキンのカレー」にするのもお勧めだ。鶏胸肉に火を入れ過ぎないのが最大のポイントだ。豆だけのカレーも味わい深いものだけれど、鶏を加えたこのカレーもとても美味しいと思う。宗教的に問題のない日本人であれば、粗挽きのソーセージを斜め切りにして投入しても良いだろう。

さらに応用編として、ひよこ豆と大根のカレーを挙げておこう。これも、とても簡単に作ることができる。豆を茹でるときに1~1.5センチ角程度(お好みのサイズでOKだが、大きいと味が沁み込むのに時間がかかるので、あまり大きくしない方が良いだろう)のサイコロに切った大根を一緒に入れるだけだ。茹で上がった大根と豆を煮汁ごとカレーベースに投入する。大根にカレーの味が沁みるくらいまで、煮込んででき上がりだ。味が沁みたおでんのような感じで大根の甘みを味わうことができるし、豆との食感の違いも楽しい。大根が入ったカレーには、ショウガの千切りが合うと思う。

スーパーに行くと、サラダビーンズなどという商品名で、紫色のキドニービーンズなど数種類の豆をサラダ用に茹でて、そのまま食べられるようにしたものが売っている。これをひよこ豆のカレーに追加すると、複数の豆のカレーにすることもできる。これも、多少の方便感はあるものの、豆の食感は揃っているし、手軽に見た目を華やかにできる。違った豆の味わいを楽しむことができるので悪くないと思う。

最後に豆のカレーの良いところをもう一つ。それは、冷凍保存が可能ということだ。茹でた豆の食感は、ジャガイモなどと違って冷凍してもあまり変わらないからだ。もちろんスパイス感は劣化するので、解凍して温めるときにガラムマサラを追加で投入すると良いだろう。


※本連載は、横浜市都筑区のインド家庭料理「ラニ」のオーナーシェフであるメヘラ・ハリオム氏と、同氏を師と仰ぐ田邊(富士山麓のcafe TRAILでカレーを提供中)の共著という形で、インドカレーのセオリーについて考え、それを分かりやすく提示する試みです。もちろん、いくつか代表的なカレーのレシピも掲載していきますが、いわゆるレシピそのものを紹介すること自体は目的ではありません。このレシピはなぜこうなっているのかを理解することで、レシピを見なくても、自分にとって美味しいインドカレーが作れるようになることを目指しています。また、各種スパイスについての解説は、食材やスパイス同士の組み合わせや相性を中心とし、スパイスの歴史や特性などについては、他に優れた本がたくさんあるので、それらにお任せするというスタンスです。


※この連載が本になりました! 2019年12月16日発売です。

書名
インドカレーは自分でつくれ: インド人シェフ直伝のシンプルスパイス使い
出版社
平凡社
著者名
田邊俊雅、メヘラ・ハリオム
新書
232ページ
価格
820円(+税)
ISBN
4582859283
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田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。