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東欧人がイギリスに移民する理由とその結果どうなったか?

Why do East Europeans migrate to UK

2019.09.23

Updated by Mayumi Tanimoto on September 23, 2019, 15:10 pm UTC

前回はイギリスには100万人近いポーランド人がおり、在英ポーランド大使が自国への帰還を推奨しているとご紹介しました。

ところで、なぜポーランド人がイギリスに急速に移動したかというと、その理由は仕事です。

ポーランド生まれの人々がイギリスで急増しはじめた2004年は、ポーランドの失業率は20%余りで、平均収入はイギリス人の四分の一でした。イギリスでの手取り月収が20万円ほどなら、ポーランドでは5万円しか稼げなかったのです。

現在は改善していて、失業率は3.8%と大変低くくなっています。しかし、額面年収中間値は80万円ほどで、これは額面年収240万円ほどのイギリスの三分の一です。月収にすると6万6千円ほどですからまだまだ低い。このため、イギリスやドイツに出稼ぎに行くわけです。

これは、他の旧共産圏も似たようなものです。ブルガリアやハンガリー、アルバニアなどには、ポーランドよりも現金収入が少ない地域がたくさんあります。私の知人のブルガリア人の実家は田舎にあるので現金収入が月5千円くらいです。

ちょっと頑張れば母国の3倍から4倍稼げるので、これらの地域で手に職がある人々や教育レベルの高い人というのは、どんどんイギリスに向かいます。

問題になっているのは、これら地域からの頭脳流出です。在英ポーランド大使が自国民に帰国を促しているのも、ポーランドから優秀な頭脳や若い人がどんどん出て行ってしまっているからです。

ポーランドに限らず他の旧共産圏でもこれは大変な問題で、エストニアは自国民が帰還するのに補助金を出すというキャンペーンを行っているほどです。

経済を活性化したくても技能や頭脳を持った人が出ていってしまうし、若い人がいないので高齢化や過疎化が大変な問題になっているのです。エストニアの場合は、国に残った高齢者達が子供達の送金する仕送りを頼りにしていたりします。

Brexitに関しては、イギリス経済の将来ばかりが議論されていますが、旧共産圏の人々の移動が難しくなり、イギリスに住みにくくなった場合、それらの国の経済に対してどんな影響があるかということも 議論するべきでしょう。

EUの移動と居住の自由により起こったことは、国境を超えた富と頭脳の集中化であり、大陸規模で富の偏在が起きたということです。日本の東京と地方の格差と全く同じです。人は、仕事と豊かな生活があるから移動します。

ところが現在のEUは、この問題に関してほぼ議論することがありません。重要論点を議論せず、政治論争に明け暮れる姿勢がEU離れを促進している気がします。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。