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コロナで分かった大学教育の付加価値

Covit-19 revealed the real value of university education

2020.10.28

Updated by Mayumi Tanimoto on October 28, 2020, 10:56 am JST

前回の記事では、コロナ騒動で物理的なオフィスの空間を求める人が案外少なくないことが見えた、と書きましたが、今回の騒動では、オフィスだけではなく「教育機関の本当の価値は何なのか?」ということも問われている気がします。

例えばイギリスの大学は、現在、対面授業を開始しているところが多いのですが、その多くは、オンラインと対面をミックスしてハイブリッド型の授業を展開しています。しかし、コロナのリスクがあるにも関わらず、対面授業を希望する学生は少なくありません。来年1月の冬学期以後、キャンパスに戻ってくる学生がかなり増えます。

同じ講義はオンラインでも学べるので、どうしても対面じゃなければ勉強できないというわけではありません。むしろ、知識だけを得たければ予習復習しやすいオンラインの方が便利だったります。

一方で実際の授業では、授業に出ても内職をしている学生もいるわけで、どうしても対面でなければという感じでもありません。議論に熱心に参加するわけでもありませんし、教員に対面で質問してくる学生はごく少数です。

またオンラインでは、大学の施設が使えないという学生もいるのですが、学生は大学に来ても図書館を使うわけでもありませんし、スポーツ施設もそんなに使ってもいません。現に家人が大学図書館に行っても、どこもいつもガラガラです。

オンラインでも知識が得られるし、設備を使うわけでもない。でも学生は、やたらとキャンパスに来たがります。つまり、彼らが求めているのは、友達作りや同級生との対面での交流であったり、サークルや会合での活動、雑談や飲み会なのであって、これこそが大学教育の最も重要なコンテンツである、ということなのです。

面白いことにこれは、合理性の塊のようなイギリス、カナダ、アメリカでも同じだということです。

大学は教育機関ではありますが、「物理的な空間としての場」「所属するコミュニティとしての存在」としての存在が重要視されていて、「心理的な満足感を得るための場を提供する」ことが最も重要な付加価値であった、ということだったのです。

つまり学生達は、高価な学費を払って買っているのが、知識やスキルではなく「所属先」「他人との交流」だったわけですね。

これは、オンライン教育やサロン、講習、コンテンツ販売などの設計でも、非常に重要な示唆なのではないでしょうか。人は単に知識を求めているのではなく、所属や他人との交流を求めているのです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。