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DXのビジネスチャンスは身近なところに

Business opportunities of DX

2021.04.23

Updated by Mayumi Tanimoto on April 23, 2021, 07:00 am JST

DXというと、革新的なソリューションを入れたり、新たにシステムを導入しなければならないのではないか、と思っている方が多いわけですが、実は多くのDXは、これまで行われてきた業務の一部を既存のテクノロジーを使ってデジタルに置き換える、というパターンが案外多いのです。

DXを大げさに捉えすぎて、変革の「機会」に気がついていない企業やマネジメントが非常に多いといえます。

例えば小売の場合、DXというと大規模なシステムを入れて、業務をデジタル主体にする、というイメージの方が多いのですけれど、日用品の販売フローの一部を外部のデジタルサービスに置き換えるだけでも立派なDXなのです。

イギリスの例としては、最近450万ポンドを増資したがBeeliveryの活用例が挙げられます。同社は、スマートフォンから日用品をリアルタイムで注文できるサービスを提供しています。

Beeliveryがソリューションを提供しているのは、従来DXと全く無縁だった町内の個人経営の八百屋やタバコ屋です。UberEatsが対応しない店舗や、独自でネット販売が展開できない店舗が対象なので、DXに取り残されてしまったビジネスをすくい上げている形です。

こういう店舗は、アルコールやタバコなど、ちょっとそこまで買いに行くのが面倒という商品を扱っていて、地元密着型で固定客もいるので、デジタル化の需要はあるわけです。

最短の配達が45分でネットスーパよりも早いのも売りです。ドライバーがオンデマンドで対応なので、配送の事前予約が必要なく、ネットスーパーが需要超過で使えなくても問題なしです。商品は若干割高ですが、コロナ禍で大人気になり、我が家でもお世話になりました。

冬は外に行くのが辛かったり、仕事や育児で手が離せないときでもサクッと注文できるので、実に助かります。近くの店なので、配送も45分どころか、実際は10分程度で届いたりします。

また、地元の小規模店舗が対象なので、その店にしかないものや特殊なバケツなどの大手スーパーにないもの、タワシやティッシュなどネットスーパーで扱っていないもの、特定移民向けの食品等の商品も扱っているので助かります。

他の業界でも、こういう風に「需要はあるがデジタル化はされていないニッチな分野」があるのではないでしょうか。サードパーティーのサービスを一部に取り入れれば、DXの恩恵を受けられるわけです。

日本で考えますと、例えば無人販売の野菜、農協の直売所、道の駅、近所の金物屋などですね。配送があるなら使ってみたいという顧客は多いはずです。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。