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ロンドン 諜報機関 通信 イメージ

コロナ禍で諜報機関も働き方を変える

Covid changed the way secret agencies work

2021.11.22

Updated by Mayumi Tanimoto on November 22, 2021, 07:00 am JST

前回は、イギリスの諜報機関であるMI5とMI6がAmazonのAWSを使用して業務を行うことになった、というニュースをご紹介しました。

データの漏えいを最も恐れるべき、国家機密を扱うような機関でさえAWSを使わざる得ない状況になっている、というのは非常に興味深いわけですが、彼らはクラウドサービスを一体どんなことに使うのかということが気になりますね。

フィナンシャル・タイムズの報道によりますと、 例えば 収集した音声データの分析をAIを使って行い、複数の組織で共有して分析するとされています。どちらの機関も、普段は膨大な量の音声データを収集して分析を行っていますから、 これを自社のインフラだけでやろうとするとかなり難しいのでしょう。

ちなみに、こういった音声データを収集して分析する専門家の求人が、イギリスでは無料の新聞や大学によく出ています。彼らはせっせと盗聴して、様々な言語の音声データを集めて分析しなければなりません。

これは非常に労働集約的な作業ですし、 また近年では様々な地域の諜報活動も行わなければなりませんから、 かなりマイナーな言語の分析もあるはずです。行政の予算は最近非常に厳しいので、こういった作業をかなり効率的に行い、 場合によっては外部リソースに依頼することもあるでしょう。

そういった組織運営的な面を考えますと、 AWSを導入してAIのツールを入れて効率的に作業をせざる得ない、という背景が見えてきますね。

さらに、この背景にはどう考えてもコロナ禍の影響があります。

イギリスでは、民間企業だけではなく行政機関のほとんども可能な場合は在宅勤務になりました。諜報機関でも、オフィス内の端末にアクセスできなくなる人が相当数いたはずです。イギリスの場合は、日本よりもコロナに関する規制が厳しく、在宅勤務も徹底していましたから、諜報機関といえど感染症を無視して業務を行うことはできません。

そうなると、クラウドを活用してデジタルな形で仕事を行っていかなければなりませんので、AWSの導入もやむなし、というところだったのでしょう。諜報機関でさえ、ここまで効率化して仕事をしないと回らないわけです。

また、次にいつパンデミックが発生するかも分かりません。事業継続という観点からも、デジタル化、クラウドの活用は重要なのです。

このような仕事のやり方は、日本にとって非常に示唆に富みます。

実はイギリスでは、コロナ禍以前から法律事務所や会計事務所、政府機関などでも在宅勤務がかなり進んでいて、仮想デスクトップやクラウドを使用してどんどん仕事をしていました。機密性が高い情報を扱う機関でも、しっかりしたインフラを導入して、きちんとプロセスを分析して対応すれば、それなりにデジタルな形で業務をこなすことができたわけです。

そして現在では、こういった諜報機関でさえもデジタルで仕事を処理しているわけですから、日本でも相当数の企業や政府機関がもっとデジタル化を推進して物理的な場所にとらわれずに仕事をしていくことができるはずです。

さらに日本は、地震や台風も頻繁にありますし、原発事故さえも経験しています。原発事故の記憶が薄れつつある人もいるでしょうが、今一度、対面での仕事のやり方を見直しておくべきです。

在宅勤務で効率が落ちるという話ばかりがクローズアップされていますが、それよりも重要なのは、事業の継続性と従業員の安全です。どうしたら効率低下を防げるか、という方向で議論を進めなければ、いつか再びやってくるであろう災害への備えは覚束きません。

しかし、メディア経由で日本の状況を見ていますと、まだ相当数の人々が通勤していますし、 無駄なオフィススペースがあまりにも多いことが見て取れます。

今回、紹介したようなイギリスの事例を分析して、日本でも働き方を変えていってほしいものですね。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。