農林業の社会課題を解決、AIによる運用自動化ソリューションの広がる応用
2021.09.03
Updated by AI Automation on September 3, 2021, 12:25 pm JST Sponsored by Sponsored by Tupl
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「機械学習というフレームワーク、アーキテクチャを用いていろんな業務を自動化していくことができるのがTuplのプラットフォーム。このプラットフォームを使って、無線などの通信ネットワークだけでなく、それ以外の社会課題に対しても貢献をしていく」。こう語るのはAIによる運用自動化ソリューションを提供する米Tuplの中江紀夫氏。Senior Technical Account Manager, APACの役職にあるエンジニアだ。
▼米Tupl Senior Technical Account Manager, APACの中江紀夫氏
Tuplでは、通信事業者、それも特にモバイル通信のサービスを提供する事業者に向けて、具体的な運用自動化ソリューションを提供している。一方で、Tuplの運用自動化アーキテクチャを提供するTuplOSは、大量のデータを一元的に活用して付加価値を実現することができ、自動化プラットフォームとして貢献できるエリアは無線ネットワークに限るものではない。中江氏自身も無線ネットワークの運用自動化の取り組みを基本にしながら、異なるエリアへの展開にも力を入れている。それが、農業、林業の分野だ。
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Tuplは、AIによる運用自動化ソリューションを無線通信の分野を中心に提供してきた。そこで用いているアーキテクチャは、各種の大量データを「収集/加工」し、そのデータをKPIとして指標化、数値化し、特徴量を検出する「データ把握/分析」を経て、機械学習を活用した「分類/最適化/予測」をする。そして、次に採るべきアクションの決定に役立てる。
これらの一連の流れを自動化アーキテクチャに仕立て上げたのがTuplOSである。中江氏は、「自動化できる社会課題や領域は多くあり、TuplOSのアーキテクチャは通信以外の分野でも活用できる。現場で困っている人や課題を抱えている人に、効率的に容易に価値を提供できるようになる」という。
Tuplでは、多様化するAIによる運用自動化の用途に対して、3つのビジネスの方向性を示している。1つが従来からの通信領域に特化した「Tupl」、農林業のスマートアグリカルチャー領域に拡大する「Tupl Agro」(トゥプルアグロ)、Tuplのプラットフォームを活用してヘルスケアや自動運転、電力削減など多様なソリューションを提案する「TuplOS」である。このうち2番目のTupl Agroのビジネスが、農業、林業の課題解決につながる分野だ。
Tuplは米国ワシントン州に本社を構えるほか、スペインのマラガに開発拠点を持つ。Tupl Agroは、スペインの開発拠点が手掛ける通信以外の分野のソリューションの1つだ。すでにスペインを中心に農業で実用化されているソリューションがある。
「日本でもスマート農業は盛んで、ドローンやカメラを利用したり、畑にセンサーを付けたりして圃場の状況や作物の生育状況を把握している。一方で、Tupl Agroのソリューションでは、ドローンやセンサーを使う必要はない。エンドユーザーは何も用意せずにWebサイトからサービスを申し込むだけで情報が得られる」(中江氏)という。ドローンやカメラ、センサーなどの初期投資や運用はスマート農業普及のハードルになる。これらを使わずにクラウド型のサービスに申し込むだけでスマート農業が実現できれば、農業の活性化につながるだろう。
Tupl Agroの仕組みを見ていこう。Tupl Agroでは、入力データとして衛星写真と気象データを用いる。衛星写真は商用衛星が撮影したデータを主に利用し、その他の無料で利用できる衛星写真を補完的に利用する。気象データはオープンデータを用いる。これらのデータをTupl Agroが分析して作物や土壌の状況の指標を作り、それらの指標を元に機械学習ベースのAIが異常の検知や推奨アクションの提案を行うというものだ。
主なKPIである指標には「HEALTH(健康)」「NUTRITION(栄養)」「HUMIDITY(水分量)」がある。これらの指標を元に、AIが土壌の状況を算出する「土壌指数」、堆肥の投与量などを提案する「堆肥に関するアドバイス」、収穫予定日前に収穫量を見積もる「収量予測」といったアクションにつながる提案を行う。
ターゲットユーザーは、欧米などに多い大規模農場の経営者や運営者。Webからサービスに登録して、農地や圃場の位置情報を指定するだけで、過去にさかのぼった作物や土壌の情報が得られ、今後の作付けや収穫に関係するアドバイスがもらえる。さらに異常を検知したような場合にはメールで通知するような機能も備えている。人手で見回って管理することが難しいような数百ヘクタールもあるような大規模農場で、大きな効果を低コストにより得られるものだ。「圃場にセンサーが備えられていれば、そうした個別のデータも組み合わせて分析してより精度の高い情報を提供できる。日本では農地が小さい為、効果の面では工夫が必要だが、広大な土地のある北海道や、複数の農地を一元的にカバーしたり、作物以外の指標も含めて管理を行ったりするなど、様々な方と適用について新しいアイディアを含めた議論をしている」(中江氏)。
そうした状況の中、特に中江氏が目を付けているのが「森林」だ。日本の国土のおよそ7割は森林で覆われている。林業をはじめとした森林にTupl Agroのソリューションを活用すれば、国内でも社会課題の解決に役立つことができる。中江氏自身が、「山守になりたいエンジニア」と自己紹介するほどであり、スペインの開発拠点と共同して森林の課題解決への取り組みを始めている。
森林関連の具体的な実証実験としては、スペイン・バレンシアの原子力発電所から伸びる高圧線の近隣で起こる森林火災の予兆を検知するものがあるという。農業と同じく衛星画像と気象データを基にして、植生密度や降水量や気温の情報から火災につながりそうな条件をWebページに表示する地図上に可視化する。さらにリスクが高まったときには発電所にメールなどでアラートを上げる。森林保全のユースケースだ。
林業に直結するソリューションとして、植栽の生育状況などを可視化する森林再生地域のモニタリング、伐採や倒木の状況可視化、伝染病や土中環境の悪化によりナラの木や松の木が集団で枯れる「ナラ枯れ」「マツ枯れ」の状況の可視化、森林内の植物の植生状況の可視化なども検討している。衛星画像と気象などのオープンデータを組み合わせて状況を分析するTupl Agroの能力が、林業の課題解決につながる可能性は高い。さらに、「盛土や皆伐などの状況を可視化することで、土砂災害のリスクを検知するソリューションにも応用できる。熱海の土砂災害のような事態にならないように、Tupl Agroのソリューションが社会貢献できるフィールドだと考えている」と中江氏は語る。
こうした社会課題の解決にテクノロジーを活用するためには、各種協同組合、自治体などと連携して取り組む必要がある。Tuplの日本法人が単体で直接的に国内の多くの組合や自治体と施策を実施するのは現実的ではなく、農林業の分野に知見を持つパートナー企業と手を組んで取り組むことが現実的なアプローチだろう。「山守になりたい」という中江氏は、「どのエリアでどの分量の木を切ったら環境を傷めずに済むか、放置林から伐採した木を排出するルートとして森林を痛めない適切な作業道をどう作ったらいいかなど、国内で必要とされるソリューションをTupl Agroの技術で作り出していきたい。日本の要望をスペインの開発チームに伝えることも私の役割だと思う」と語る。AIによる運用自動化が支える日本の未来の森林の姿が、彼の目にはすでに見えてきているようだ。
【関連情報】
AIによる運用自動化ソリューションを提供する Tupl(英語版サイト)
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