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池添泰弘(いけぞえ・やすひろ)日本工業大学 基幹工学部 応用化学科

紀元前の科学で現代科学を創造する

Creating Modern Science with B.C. Science

2022.03.16

Updated by Schrodinger on March 16, 2022, 19:00 pm JST

モノを浮かすのに引力は使えません。反発力を生み出せるのは、磁気力だけです。磁石に反発する性質を持つ物質はたくさん存在しますが、この反発力は極めて小さいので、例えば水を磁気で浮上させようとすると、巨大な超強力磁石がなければ無理、というのが常識でした。実際、この磁石による水の浮上は1995年頃にフランスで実現していました。

その頃、大学院生だった池添氏は当時の指導教員だった北澤宏一氏(故人、元・科学技術振興機構 理事長)と徹夜の(ただし酒を飲みながらの)研究に没頭していましたが、北澤氏が何気なく「このフランスの話、面白いんだけどウチ(東大)じゃできないだろうなあ」と呟きました。

浮力といえば「アルキメデスの原理」です。酸素が実は磁石に引き付けられることに着目した池添氏は「水の周りを酸素で満たし、下に磁石を置いておけば、水は浮上するかも」というアイデアを思い付きます。朝の4時くらいだったそうです。

これにピンと来た北澤氏は「それイケる。すぐに特許申請せよ。論文を書け」と言います。一旦帰宅して仮眠をとった2人は、同じ日の朝10時に研究室に再度集合しますが、なんとその時点ですでに北澤先生が論文のドラフトを周到に用意、池添氏が数値を入れて計算すれば完成する、という状態になっていたのだそうです。

自然科学系の研究は、過去の成果の上に積み重なる「巨人の肩(Standing on the Shoulders of Giants.)」という考え方がありますが、池添氏の『磁気アルキメデスの原理』、すなわち「浮かせたい物体の周りに磁石に引き付けられる物質を満たせば、小さな磁石でもその物体を宙に浮かせることができる」というアイデアは、まさにこれを地で行くものでした。一方、そのアイデアが秀逸であることを瞬時に見抜いた故・北澤氏にも優れた研究者としての数々のエピソードがありそうです。

というわけで今回のシュレディンガーの水曜日は、1)現在の池添先生の最先端研究、2)故・北澤宏一氏にみる研究者のあり方、3)学生がエキサイティングになれる環境を作る方法、という三題噺になると予想します。面白いですよ。(竹田)

募集要項
3月23日(水曜日)19:30開始
紀元前の科学で現代科学を創造する

池添泰弘(いけぞえ・やすひろ)日本工業大学 基幹工学部 応用化学科 教授

池添泰弘(いけぞえ・やすひろ)日本工業大学 基幹工学部 応用化学科 教授
1996年東京大学工学部応用化学科卒、1998年東京大学・大学院工学系研究科(超伝導工学専攻)修士課程修了。修士論文は「水・酸素共存下での磁場効果(指導教官 北澤宏一教授)」、その後、東京大学工学部助手、東京工業大学研究員、理化学研究所研究員、ニューヨーク市立大学研究員等を経て現職。

・日程:2022年3月23日(水曜)19:30-21:30(予定)
・講義は最初の30-40分程度。残りの時間を延々と雑談に費やすことで「気楽に参加できる放課後」というコンセプトで実施します。
・Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
・参加費:無料
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。


「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。

原正彦(メインキャスター、MC):東京工業大学・物質理工学院応用科学系 教授原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。

今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。

増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。

竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。

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