Exploring the “indeterminate” cognitive state in understanding literature and art
May 22, 2026
シュレディンガーの水曜日事務局 Schrödinger
オンラインイベント「シュレディンガーの水曜日」の運営事務局です。東京工業大学・物質理工学院・原正彦研究室で始まった、WirelessWireNewsが主催するオンライン・サイエンスカフェです。常識を超えた不思議な現象に溢れた物質科学(material science)を中心に、日本の研究開発力の凄まじさと面白さを知っていただくのが目的です。
量子的シリーズ第3回のコーディネータは若手のホープ布山美慕さん(立命館大学立命館大学文学部准教授)です。布山さんからいただいた今回の趣旨をご紹介します。
自分が影響できないはずの事象に影響してしまう気がするお守りやジンクス。相手を助けるのではなく自分が変わる可能性にひらかれるケア。悲しいから美しい、恐ろしいのに惹きつけられる、寂しくて恋しい、基本的な感情の足し合わせに還元できない混合感情。没入しているのに曖昧になる解釈/あるいは曖昧な解釈でしか生まれない没入感。「なにも描かれていない絵」「空白が描かれている絵」はどう違うのだろう。無音はどうしたら認識されるのだろう。私たちは不定さ抜きに無を感じ、扱えるのか。
私たちの認知には不定な部分があふれる。
お守りやジンクスについてはShafir & Tversky (1992)がQuasi-magical thinkingとしての一種として議論し、囚人のジレンマやNewcomb’s problemを例に実証研究の可能性を示唆した。近年では、全確率の違反に関連して量子確率論を用いた議論も行われている(Busemeyer & Bruza, 2012) 。布山・山田 (2025)では、これらの議論を基盤としつつ、Solnit (2016)『暗闇のなかの希望』らの議論も踏まえ、Quasi-magical thinkingを対象(世界や他者)の確率分布を寄与のものと考えるのではなく、変えうるものと考える認知として論じた。これは、ある種の自己の拡張と解釈できる。『利他とは何か』(伊藤ら, 2021[MOユ5] )では、利他を議論するなかで、利他にはむしろ自己を変える余地・余白が必要とされる。また、この利他を自己や他者といった行為者・被行為者の文脈ではなく、出来事(中動態)の文脈において捉え直す。これらの議論は、自己他者における不定性が、世界や自己・他者を変えうる可能性や、自己他者といったエージェントドリブンとは異なる観点をひらくことを示唆する。
芸術鑑賞において特に喚起されるとされる混合感情(石津, 2019; 源河, 2019)や不定な解釈と没入感の関係性は、わたしたちの情動や感情的側面、あるいは現実感やプレゼンスもまた、不定性によって多様な可能性にひらかれていることを示唆する。身体と結びついているはずの情動や没入感が、“一つ”であるはずの身体の制約をこえたかのようなありようを示す。また、定まらなさは無の認知にも関連する。私たちは本当に「無い」だけの空間や時間を認識できない。無いことはその枠(枠の外や枠はある)やノイズのような揺らぎと共に認識される。無いことは不定さとはどのように関係するのか。
本セッションでは、量子認知の観点から不定性を扱う布山がコーディネートをつとめ、自己他者認知、感情、ケアなど多方面の観点から不定性のもつ可能性について神経美学、美学、哲学を専門とする研究者が議論する。
原先生を始めとするいつものシュレディンガーな人たちと、量子的第1回でご登場いただいた桜田先生、第2回でコーディネータを務めていただいた入來先生あたりも参加していただけるはずです。乞うご期待。
| 名称 | シュレディンガーの水曜日「量子的」シリーズ第3回 不定性・余白・無/量子認知とアート・テクノロジーの観点から |
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| 開催日時 | 2026年6月17日(水) 18:30~20:30 |
| アジェンダ (敬称略) | 1)イントロダクションおよび話題提供 「不定性・余白・無」布山美慕(立命館大学文学部准教授)2006年京都大学理学部、2008年京都大学大学院理学研究科物理学修士課程修了。アクセンチュア株式会社戦略コンサルタント等を経て、2011年大阪大学大学院文学研究科で「読書」の研究を開始。2013年同修了。2017年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学、同大学博士(学術)取得。2016〜2018年玉川大学にて嘱託研究員、2018年度北陸先端科学技術大学院大学研究員、2019年度から早稲田大学講師、2022年度から現職。 ![]() |
2)ディスカッション石津智大(神経美学者/関西大学教授)2009年、慶應義塾大学大学院で心理学博士を取得後、渡欧。ウィーン大学心理学部研究員・客員講師、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ生命科学部上席研究員などを経て、2020年より日本に活動拠点を移し、神経美学の教育・研究に従事している。著書に『神経美学—美と芸術の脳科学』(共立出版)、『なぜアートに魅了されるのか』(共立出版/分担執筆)、『泣ける消費』(サンマーク出版)など。
源河亨(九州大学大学院比較社会文化研究院准教授) 専門は心の哲学です。感情を中心に美や道徳を理解する「センチメンタリズム」を、現代の諸科学と接続させる方針で研究しています。これまでは音楽美学を中心に研究してきましたが、最近は、愛する人を特別扱いすることと道徳の公平性が両立するのかに関心があります。
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| 実施形態と参加方法 | Zoomウェビナー(Webinar)を利用したオンラインイベントです。 お申し込みはこちらから |
| 参加料 | 無料 |
| 申込期限 | 2026年6月17日 (水)の17時まで |
| 主催 | 「シュレディンガーの水曜日編集委員会」/スタイル株式会社 |
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。