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世界最小の国際ナノカーレースで見事優勝、NIMSのナノカー「Slider-Spider」

世界最小の国際ナノカーレースで見事優勝、NIMSのナノカー「Slider-Spider」

The nanocar "Slider-Spider" participated in the world's smallest international nanocar race and won the championship.

2022.04.20

Updated by Schrodinger on April 20, 2022, 19:00 pm JST

ヨーロッパの航空宇宙産業の中心地として知られるフランス・トゥールーズ(Toulouse)で、3月24日から25日にかけて、国際ナノカーレース(第2回)が5年ぶりに開催されました。国際ナノカーレースは、独自の分子を合成・制御する技術を競うもので、開催国のフランスをはじめ世界6カ国から計8チームが参加しました。

日本からは物質・材料研究機構(NIMS)のナノカー「Slider-Spider(スライダー・スパイダー)が参戦し、見事優勝しました。ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの分子マシンを24時間走らせるこの耐久レースにおいて、Slider-Spiderは1054ナノメートルを記録、ターン数でトップだったスペインチームと優勝を分け合ったのだそうです。

NIMS・国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)副拠点長(当時)の中山知信さんをディレクターとするNIMS-MANAチームのドライバーはフランス国立科学研究センター(CNRS)に集合、会場に設置されたコンピューターを操作しナノカーを走らせました。ナノマシンは各所属先が設置した走査型トンネル顕微鏡(STM)に装着された「原子レベルまで細く加工された針」に電圧をかけ、分子を駆動・制御します。「Slider-Spider」は全長約2.5ナノメートルの分子マシン。ここを緻密に制御するのがドライバーの腕の見せ所になるわけです。

自動車レースのF1と比べることに意味があるとは思えませんが、サイズだけの比較でいうと約20億分の1になります。これは地球と野球のボールくらいの差になります。つまり、ナノサイズのドライブというのは宇宙から野球のボールを操作しているスケール感になる、ということですね。私たち素人には全く理解不能・意味不明な世界が展開されているようです。

678ナノメートルだったスペインのNANOHISPA(ナノヒスパ)チームは距離で大きく劣ったものの「広くて大きなコーナリングが素晴らしい」と評価され、同率首位という結果になりました。この結果には、累計3万8000人を超えた視聴者からもブーイングが起きる、というハプニングがあったそうですが、レギュレーションの突然の変更は欧州のお家芸、という特徴がここでも発揮(?)されたともいえるでしょう。中山さんは「マシン1台で走り切って1000ナノ超えは上出来」と会心の笑みを浮かべていたそうです。

今回は、このNIMS-MANAチームに所属する研究者、中西和嘉さん竹内正之さんをお招きし、ディレクターを務めた中山先生を交えてこの国際ナノカーレースでの裏話をいろいろお聞きしようと思います。今回の雑談のキーワードは「研究者のチームプレー」になるような予感がします。(竹田)

募集要項
4月27日(水曜日)19:30開始
国際ナノカーレースで物質・材料研究機構(NIMS)のチームが見事優勝

中西和嘉(なかにし・わか)中西和嘉(なかにし・わか)
物質・材料研究機構(NIMS)機能性材料研究拠点 ポリマー・バイオ分野 分子機能化学グループ 主幹研究員

竹内正之(たけうち・まさゆき)竹内正之(たけうち・まさゆき)
物質・材料研究機構(NIMS)機能性材料研究拠点 副拠点長
グローバル中核部門 若手国際研究センター ICYS-SENGEN 副センター長
機能性材料研究拠点 ポリマー・バイオ分野 分野長
機能性材料研究拠点 ポリマー・バイオ分野 分子機能化学グループ グループリーダー

中山知信(なかやま・とものぶ)中山知信(なかやま・とものぶ)
物質・材料研究機構(NIMS)グローバル中核部門 部門長
グローバル中核部門 若手国際研究センター ICYS-NAMIKI 副センター長

・日程:2022年4月27日(水曜)19:30-21:30(予定)
・講義は最初の30-40分程度。残りの時間を延々と雑談に費やすことで「気楽に参加できる放課後」というコンセプトで実施します。
・Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
・参加費:無料
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。


「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。

原正彦(メインキャスター、MC):東京工業大学・物質理工学院応用科学系 教授原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。

今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。

増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。

竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。

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