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IoTデバイスで手軽にeSIMを使える新技術をIIJが開発

2022.12.05

Updated by Naohisa Iwamoto on December 5, 2022, 06:30 am JST

IoTデバイスやウエアラブル機器の回線契約をもっと自由に――。こうした世界を目指して、インターネットイニシアティブ(IIJ)は新技術「LPA Bridge」を開発した。要約すると、スマートフォンなどコンシューマ向けに使われているeSIMを、IoTデバイスやウエアラブル端末でも使えるようにする技術ということ。これにより、IoTデバイスやウエアラブル機器でモバイル通信サービスの利用の自由度が広がり、活用の幅が大きく広がる可能性が高まる。

eSIMとは、モバイル通信サービスの加入者情報などを、物理的なSIMを使わずにインターネット経由でダウンロードしてサービスを利用する方法。物理SIMを利用していると、回線契約を切り替える場合には、SIMの差し替えの必要がある。一方で、eSIMはインターネットなどを経由して情報を書き換える(プロビジョニングする)だけで自由にサービスを選択できる。ただし、IoTデバイスやウエアラブル機器では、スマートフォンと同様な仕組みでのeSIMの利用がこれまではできなかった。それを解決するのが、IIJが開発したLPA Bridgeだ。

IIJ 理事 MVNO事業部副事業部長の中村真一郎氏は、「ユーザーは、自分が持っているIoTデバイスに必要なときに通信サービスを買って使えるようにしたい。しかし現状ではeSIMをIoTデバイスで使うのは難しい。一方でデバイスメーカーは現状では回線の付いたIoTデバイスなどを作ると、通信サービスも提供することになり、請求や顧客管理をする必要がある。通信サービスは通信事業者に任せて、ものづくりに集中したいはず。これらの両面を解決することを目指して技術を開発した」と説明する。

実は、eSIMには、スマートフォンなどで使うコンシューマモデルのインタフェースと、入出力デバイスを持たない機器向けのIoTモデルのインタフェースの2種類があるという。ただし、「IoTモデルのeSIMは、エンドユーザーの回線選択の自由のために用意されたものではなく、メーカーなどによる物理SIMの抜き差しの手間を省くためのもので、ほとんど使われていない」(中村氏)という。そこで、スマートフォンと同様の使い方でコンシューマモデルをIoT機器に適用できるようにするために開発したのがLPA Bridgeである。

eSIMの機能を分割してIoTデバイスに実装可能に

コンシューマモデルのeSIMでは、スマートフォンなどの端末内でプロビジョニングするために「LPA(Local Profile Assistant)」というGSMAで標準化された機能を持つ。IIJでは、この機能を、「インターネットと通信してアクティベーションコードを入力するようなインタフェース部分を担当する機能(LPA App)」と、「eSIMとサーバー感の通信の中継をする機能(LPA Bridge)」に分割した。LPA Appはスマートフォンやタブレットなどに実装してコンシューマモデルのeSIMのプロビジョニングのユーザーインタフェースを提供する。一方で、LPA BridgeはIoTデバイスやウエアラブル機器に実装して、eSIMとの通信インタフェースを用意する。LPA Appを搭載したスマートフォンなどとLPA Bridgeを搭載したIoT機器の間は、Wi-FiやBluetooth、RJ-45などで通信を確保する。

こうすることで、LPA AppとLPA Bridgeを組み合わせた全体としては、GSMAの標準規格であるLPAと同じ挙動でeSIMのプロビジョニングが可能になる。一方で、IoTデバイスやウエアラブル機器にはユーザーインタフェースなどを設けることなく、通信事業者が提供するeSIMサービスを自由にプロビジョニングして利用できるようになるというわけだ。

IIJ MVNO事業部 ビジネス開発部 シニアエンジニアの三浦重好氏は、「デバイスメーカーや家電機器メーカーとLPA Bridgeを利用したPoCに着手した。自動販売機や制御機器などの既存デバイスに対して、物理的な改造をできるだけせず、簡単なプログラムの移植でコンシューマモデルのeSIMを使えるようにし、商用化を目指す」と言う。今回のポイントは、GSMAの標準規格を変更したり新規の規格を作ったりするのでなく、「コンシューマモデルの標準をIoTデバイスでも使えるように小さな新しいプログラムを作ったところ。標準的なeSIMモジュールを購入してIoTデバイスに装着してもらえば、通信サービスを立ち上げる瞬間だけeSIMに見えるようになる」(三浦氏)。

IIJとしては、LPA Bridgeの特許を申請しているというものの、ビジネスモデルとしてはIoTの世界を広げることを第一に考慮していて、「できるかぎりeSIMが流通しやすくなる世界を作っていきたい。ライセンス提供することでLPA Bridge利用のハードルが上がってしまうとしたら、そうならないフリーな形を選ぶ」(三浦氏)と言うように、できる限りオープンにIoTデバイスによるeSIM利用の環境を提供していく考えだ。

eSIMがIoTデバイスで自由に活用できるようになれば、グローバルに販売したIoTデバイスを自由に各国の通信サービスで利用できるようになる。通信事業者もIoTデバイスのeSIMに向けて、通信が必要な一定期間だけ通信サービスを利用できるような料金プランを新しく提供することにもつながる。IoTデバイスが利用できる通信サービスの自由度を高めることは、データ駆動形社会の自由度を高めることにもつながりそうだ。

【報道発表資料】
IIJ、ウェアラブル機器やIoTデバイスなどでコンシューマ向けeSIMの利用を可能にする新技術「LPA Bridge」を開発

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。