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「きわめて有益であるばかりか人間の統治にも必要欠くべからざるもの」だった中世ヨーロッパの商業

2023.03.17

Updated by WirelessWire News編集部 on March 17, 2023, 06:30 am JST

世界中に輸出されたヨーロッパの「契約書」

19世紀末から第一次世界大戦にかけてのヨーロッパ、とくにイギリスが世界中に植民地をもち、世界を支配したことは言うまでもない。欧米の歴史学界においては、ヨーロッパの世界支配においては、軍事力の重要性が強調されることが多い。

たしかに、それは間違いのない事実である。だがそれとともに、ヨーロッパは、自分たちの商業システムを世界中に採用させたために、世界が「ヨーロッパ化」したことも重要な事実である。

現代のビジネスでおこなわれている慣行の多くは、ヨーロッパを直接の起源とするものである。たとえば、われわれは契約書を交わすが、それは元来ヨーロッパで実行されていたことなのである。

具体例を出そう。18世紀において、イタリアのリヴォルノ在住のユダヤ人(イベリア系ユダヤ人)が地中海産のサンゴを輸出し、インドからはヒンドゥー教徒がダイヤモンドを輸出した。その契約書は、ポルトガル語で書かれていた。

しかし、この頃のヨーロッパの経済力がインドよりも強かったとは考えられず、またイギリスがインドを軍事的に制圧していたわけでもない。にもかかわらず、ヨーロッパの契約書が使用されたのは、ヨーロッパの商業システムが世界中に輸出されつつあったことを示すものであろう。

ヨーロッパの商業システムの形成に寄与したものの一つに、商売の手引(商業に関する事典のようなもの)の出版があった。商売の手引には、商業に関する方法、商人の教育法などが書かれていた。商業全般にかかわる、百科全書かつマニュアルである。

商売の手引は、ヨーロッパ商業が「遍歴型」から「定着型」へと変化する12世紀にイタリアで作成された。すなわち、商人が自ら各地をまわって取引していたのが、一定の場所に定着し、代理人を介して商業活動をするようになったため、どのようにして商売をおこなうのかを記した商売の手引が書かれるようになったのだ。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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