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語り継がれず消えてしまう、もうひとつの東京

2023.06.20

Updated by WirelessWire News編集部 on June 20, 2023, 07:40 am JST

当事者が亡くなると消えてしまう、ホームレスたちの物語

精神科医である筆者は、どちらかといえば平凡な人間であるが、縁あって研究者としてホームレスの人の支援に10年以上関わっている。現場で実際にホームレスの人を支援している人たちは尊敬すべき人々である。彼らと友人となり、共に喜び、悲しみ、学び、発信してきたことで、精神科医として大きく成長させて頂いた。

弱者のために生きる彼らこそが社会の希望であると思う。筆者の人生は、ホームレス支援に関わる前後では大きく変貌した(前はずいぶん退屈な人生だった)。ホームレスの世界を知ると、この世界は全く別の姿に見える。美しくかけがえのない世界だと私には見える。

ホームレスの世界の歴史は貧困と排除の「もうひとつの東京史」であるが、デジタルにはなっておらず、いや紙にすらなっておらず、人々の記憶の中にだけあり、おそらく当事者が亡くなってしまうと消えてしまうナラティブであろう。デジタルトランスフォーメーションの及ばない、外部世界という意味でも興味深いのではないか。

貧困と排除の東京史

下町にほど近い東京大学で指導医をしていた時、ある研修医が「ホームレスの人って理解不能だな。やつらは好きでああいう生活をしているのでしょうね」といったので、『いや実は私はホームレスの研究をしているのだよ』『君の認識は無知から来るものだよ』と伝え、説明したところ「はじめて聞いた話だ」とたいそう感謝された。その時のようにお話ししたい。

日本のホームレスの人の数をご存じだろうか? 政府統計では5,000人程度である。50万人ともされる米国と比べても圧倒的に少ない。もっともこれは定義と数え方が違うからである。数え方に関していうと、我が国ではある1日に「あからさまに路上生活者に見える人」を数えている。あからさまにホームレスに見えてしまう人は、まず襲撃されるリスクがある。そして、風呂に入るために店に入ることもできない。よって多くのホームレスの人は、スーツを着ていたりして、数日に一回は入浴もしている。数えきれていないのだ。

定義に関して言うと、諸外国では安定した住まいのない人(たとえばシェルターにいる人)もホームレスである。日本の「ホームレス」は、外国ではstreet homelessというカテゴリーであるが、実は米国でもsheltered homelessというカテゴリーの方が大きいのだ。日本ではこのシェルターのカテゴリーは、すっかり見落とされている。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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