画像はイメージです original image: ANURAKE SINGTO-ON / Shutterstock.com
イギリス陸軍のDX戦略
UK Army's DX strategy
2023.07.05
Updated by Mayumi Tanimoto on July 5, 2023, 12:00 pm JST
画像はイメージです original image: ANURAKE SINGTO-ON / Shutterstock.com
UK Army's DX strategy
2023.07.05
Updated by Mayumi Tanimoto on July 5, 2023, 12:00 pm JST
DXの戦略を策定しそれを実装していくには、予算的な問題はもとより、他の様々な厳しい外部要因にさらされた組織における実例が参考になります。その例の一つが軍隊です。近年、先進国は高齢化対策などで公的資金が厳しいところが少なくなく、防衛予算削減や人員削減の圧力にさらされているところが多いのです。
イギリスも例外ではなく、2012年から人員削減によるスリム化と効率化を勧めており、2012年には10万4人だった陸軍は現在は8万人で、さらに7万人代に削減することが発表されています。同盟国であるアメリカには当然批判されているのですが、イギリス陸軍はテクノロジーを導入し、AIとDXによってより少ない人員で効率的な防衛と攻撃を行うことを戦略の中心に据えています。
軍は非営利団体という特性があります。組織の目的が利益ではない点が民間企業とは異なります。毎年予算が決まっているので、その予算をいかに効率よく使用し、コストを削減するか、が目標です。効率を高めるのにAIとDXが欠かせないわけです。
縮小していく団体で人員は少ない。そこで効率化、機械化はマストです。予算が限られているため、どこに戦略の主眼を置くべきかという点でイギリス陸軍は非常に慎重ですが、その戦略は厳しい環境にある日本の組織にも多くの示唆があります。
ポイント1:組織の実情を正しく認識する
まずイギリス陸軍は、大英帝国の時代や冷戦期のように、覇権的な力ではない、ということをはっきり明言し自覚しています。これはバブル崩壊後に競争力を失い、厳しい市場の変化にさらされるようになった日本企業に重なる部分があります。
ポイント2:同盟化を進める
冷戦時代の米国とロシアのような軍拡競争は物量と腕力で戦うやり方でしたが、イギリスにはそれは無理です。その代わりに同盟国や北大西洋条約機構(NATO)などの戦略的パートナーシップに主眼を置いています。つまり、同盟国間でお互いに役割を分担し、お互いを補完し、限られた予算をより効率的に投資するわけです。これは厳しい環境にある日本企業は大いに参考にするべきです。自社で全てを行うのではなく、戦略的同盟を広げていき生き残りをはかるわけです。
ポイント3:選択と集中、無駄を捨てる
ただし、外部組織と効率的に事業を行うには効率化、プロセスの標準化、無駄なものは削ぎ落とし自社の得意分野に注力する、という「整理」が必須です。つまりDX化するにもまずは自社の事業戦略の集中と選択が必須になるわけです。
次回の記事はこの続編の予定です。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。