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伊勢湾台風レベルの台風がやってきたとき、我々はどうすべきか

2023.08.08

Updated by WirelessWire News編集部 on August 8, 2023, 06:47 am JST

山岳防災気象予報士の大矢康裕氏が、JRA-55(気象庁55年長期再解析)にある過去の気象データを使い、過去の山岳遭難事故が起こったときの気象条件や遭難の原因、将来の遭難リスクに迫る連載。今回は1959年9月26日に日本に上陸し、過去に類を見ないほどの犠牲者を出した伊勢湾台風が、山ではどれほどの猛威を振るったのかについて語ってもらった。聞き手は、気象予報士の資格を持つサイエンスライターの今井明子氏だ。

今井明子(以下、今井):今はまさに台風シーズンということで、過去最悪の被害を出した伊勢湾台風についてのお話を伺います。まずは、この台風はどれくらいの勢力で犠牲者がどのくらい出たのかなどの概要を教えていただきたいです。

大矢康裕(以下、大矢):伊勢湾台風といえば、知らない人はいないくらい有名な台風ですよね。この台風が日本を襲ったのは、私が生まれる少し前の1959年のことです。実際にどのような被害をもたらした台風だったかは、正確に知らない人も多いんじゃないでしょうか。

伊勢湾台風は中心気圧という観点からすると、明治以降の台風の中で4番目の低さになるんですね。最も強かった台風は、1934年に四国の室戸岬に上陸した室戸台風です。その次が1945年に九州の枕崎を襲った枕崎台風。3番目が1961年の第2室戸台風で、伊勢湾台風はその次の4番目なんです。

伊勢湾台風が上陸したときは中心気圧が929hPaになっているので、かなり低かったといえます。最近災害をもたらした台風といえば、2019年に千曲川を氾濫させて北陸新幹線が浸水してしまった令和元年東日本台風が印象に残っている人が多いと思います。しかし、この台風でさえ上陸時の中心気圧は950hPa程度だったので、それに比べても気圧の低い強い台風でした。

一応補足しておくと、台風の強さというのは本来は中心気圧ではなく、中心付近の最大風速で語られるものです。ただ、そうはいっても中心気圧が低いと、「強い台風なんだな」とイメージしやすいのではないかと思います。ですから、あえて中心気圧という切り口でお話ししています。

少し話は脱線しましたが、伊勢湾台風が今なお語り継がれている理由は、台風の災害による犠牲者の数がものすごく多く、明治以降で一番多い台風だったからです。約5,000人の方が亡くなったり行方不明になったりしています。

今井:5,000人といえば、阪神・淡路大震災レベルですよね。

大矢:はい。けた違いの多さですよね。この台風での犠牲者の8割以上が、愛知県と三重県のふたつの県に集中しています。その一方で、この台風は広島県から北海道まで、全国の広い範囲で犠牲者が出たのも特徴的でした。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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