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提供側の不安なしに次世代の製薬に資する健康医療データの活用法

2024.02.29

Updated by WirelessWire News編集部 on February 29, 2024, 07:52 am JST

製薬企業72社(2023年5月時点)が参加する業界団体の日本製薬工業協会(製薬協)は、広く一般に向けて製薬産業が健康医療データを利活用する意義を啓発する活動を続けている。医薬品評価委員会に設けた医療情報データベース活用促進タスクフォースを中心にした活動で、2023年4月には一般向けの啓発冊子「健康医療データと私たちの生活」を制作、公開した。製薬企業が健康医療データを利活用する価値と、具体的なデータ活用法、患者などデータ提供者との関係について、同タスクフォースのメンバーに話を聞いた。

製薬企業のデータ活用を一般向け冊子で周知するのはなぜか?

製薬企業が利活用する健康医療データとは、具体的にはどのようなものを指すのか。同タスクフォースで冊子制作チームのリーダーを務める東郷香苗氏は、こう説明する。

「大きく3種類に分けられます。一つは製薬企業が自ら収集するものです。治験や臨床研究などで患者さんに同意をいただいた上で集めるデータです。二つ目がアカデミアの先生が研究目的で集めるデータです。1回の研究で利用を終わらせてしまうのはもったいないので、プライバシーなどの問題がない形にして製薬企業が二次利用することがあります。三つ目が今回の主題である健康医療データ、すなわちリアルワールド・データです。治験や研究のためにわざわざ集めるデータではなく、日常で発生するデータを製薬に生かすものです」

三つ目のリアルワールド・データの利活用は、比較的新しい取り組みだという。日本は国民皆保険制度があり、レセプトと呼ばれる保険請求データが発生する。医療機関では電子カルテ化が進み、治療に関するデータが電子化されて蓄積されている。これらのデータを二次利用して製薬に生かす形だ。

製薬企業としては、多くのデータを活用して、医薬品をより効果的に開発したい。しかし一般の生活者の立場からは、自分たちのデータが何に使われているか分からないことによる不安や心配があるのは確かだ。

「どういうデータが何に使われているかが分からず、その分からないことが不安を増長させてしまいます。データ利活用について少しでも分かってもらうことで不安材料をなくせたら良いと思い、冊子を作りました」(東郷氏)

「健康医療データと私たちの生活」と題した冊子は、e-Book形式でも公開している。健康医療データが何に使われているのか、健康医療データ活用の現状と今後、そしてQ&Aで構成されている。

東郷氏は、「健康医療データとはどういうものかを理解いただくのが大事です。一番伝えたいメッセージは『あなたのためにも役に立つのだけれど、たくさんの人に役に立つ』ということです」と語る。個人のデータを活用することで、製薬に役立つだけでなく、医療機関や行政など多くの機関の役に立ち、最終的にはデータ提供者に利益が還元される世界を目指している。

冊子では、データ漏洩などの不利益につながることも説明している。そうしたリスクを超えて、大きな理念として健康医療データを活用させてほしいとの願いだ。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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