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研究の流行、追うべきか追わざるべきか

2024.03.28

Updated by WirelessWire News編集部 on March 28, 2024, 12:36 pm JST

たいていの研究者は流行りのテーマを集団で追求する

かなり昔の話になるが、大学に入りたての頃、ある人文地理の教官から、研究者の二つのパターンという話を聞いたことがある。曰く、たいていの研究者は、その時々の学問的な流れに従い、今流行っているテーマを集団で追求する。ただし、そこには例外もあり、こうした流行の変遷とは関わりなく、自分にとっての大テーマに取り組む研究者もたまにいる。しかし場合によっては、そうした孤高の探求が、新たな流行の発端になる場合もある。後者の例として教官が挙げたのが今西錦司の進化論で、誰もそれを論じなかった時期に独自の理論を展開し、後に大きな波になったのである。

この話は印象的で、殆ど40年以上たった今でもよく覚えているが、それは研究という文脈において、流行という現象との付き合いがなかなか面倒だからである。流行現象は文理問わず多くの文脈に存在するが、文系では、例えば最新の「現代思想」についての解説書の類が懲りずに出版され、それなりの売り上げがある点からも見て取れる。他方、流行現象があるのは、何も思想や哲学に限定されない。かつてアフォーダンス概念を本邦で流行らせた研究者と知り合った際、彼が開口一番語ったのは、「心理学には流行がある」という話である。

ある分野の分析が急激に進むことがある半面、未開拓地帯に迷い込むことも
さらに、科学の現場での流行現象をバイオ研究の例で論じたのが、STS研究者フジムラ(J.Fujimura)の「バンドワゴン」という議論である。バンドワゴンには複数の原因があるが、その一つは、どんな研究にも時間と労力の制限があり、基本的に一定期間内にそれなりの成果が挙げられることが求められるという点である。

これを彼女は、doable(端的に訳せば、やれる、遂行できる)と呼ぶ。かつて天然物化学のラボを観察していた際、研究者たちは、生物が生産する有益な二次的代謝物に依存するこの分野は、その成果が不確実なため、「卒論には向いていない」と冗談を言っていた。これをフジムラ風に表現すると、undoable(やれない、遂行できない)ということになる。他方、彼女が調査していた初期ゲノム研究がなぜdoableなのかというと、成果を生むための遺伝子解析技術と、それを支える理論的な説明がセットで存在し、それにより比較的確実にある程度の成果が挙げられる状況があったからである。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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