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「早期英才教育」は本当に必要か? 3万人超の経歴分析が示す新知見

「早期英才教育」は本当に必要か? 3万人超の経歴分析が示す新知見

December 24, 2025

中村 航 wataru_nakamura

1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。

オリンピックメダリストやノーベル賞受賞者、世界的音楽家など、何らかの分野で世界トップクラスの成果を出す人物を育てるためには、「幼少期に才能を見い出し、専門的な訓練によってその才能を最大限に伸ばす」のが近道だと一般的には考えられてきた。しかし、このような英才教育の考え方に疑問符をつける新たな研究が先ごろ『Science』誌で発表された。

この研究では、カイザースラウテルン・ランダウ大学のArne Güllich教授らの研究チームが、スポーツ、音楽、科学研究、チェスなど何らかの分野で卓越した成果を出した3万4千人以上の経歴データを再解析した。その結果、若いころに同世代の中でトップだった人と、後に世界最高峰に達した人は、多くの場合で一致していなかった。また、後にトップとなった人々は子ども時代から一つの分野に絞って訓練していたわけではなく、複数の分野に関心を持って取り組んでいたことも明らかになった。

研究チームは、複数の分野に取り組むことが後の成功につながる理由について、三つの仮説を示している。まず、複数の分野に触れることで自分に最も合った分野を見つけやすくなること。次に、多様な学びの経験が「学ぶ力」を高め、後に一つの分野に集中した際にも、より効率よく成長できるようになること。最後に、複数の分野に取り組むことで、燃え尽きやけが、興味の喪失といったリスクを減らせることだ。

Arne Güllich教授は「早すぎる専門化は避けるべきだ」とし、「若いころに興味を持った様々な分野を追求する機会を与え、二つか三つの分野で彼らを育成するべきだ」とコメントしている。

参照
Recent discoveries on the acquisition of the highest levels of human performance | Science
Are talented youth nurtured the wrong way? Top performers develop differently than assumed, says study

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