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貧しい環境ほど人は助け合う? 英研究

貧しい環境ほど人は助け合う? 英研究

February 18, 2026

中村 航 wataru_nakamura

1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。

「心に余裕がある時ほど、他人に優しくなれる」―そう考える人は多いだろう。しかし、人が置かれる環境の違いと助け合いの関係を調べた最新の研究は、その常識を覆す可能性を示している。厳しい環境に置かれている時ほど、人は他者を助けようとする傾向があることが明らかになった。

この研究は、イギリスのバーミンガム大学などの国際的な研究チームが主導し、500人以上の成人を対象に実施された実験をまとめたもので、英科学誌「Nature Communications」 に掲載された。

研究では、実験の異なる場面ごとに、参加者に対して「選択肢や見返りが多い豊かな環境」または「選択肢が限られた貧しい環境」に置かれていると説明した。その上で、参加者に映像を見せながら、「今していることを続けるか、それとも少し手間をかけて他人を助けるか」という選択を繰り返し提示した。

その結果、選択肢が乏しく、得られる見返りも小さい「貧しい環境」に置かれた参加者の方が、選択肢が豊富で大きな見返りが期待できる「豊かな環境」にいる場合よりも、進んで他人を助ける行動を選ぶ傾向が強いことが明らかになった。

研究チームは、環境が豊かになり、自分にとって魅力的な選択肢、つまり利己的なメリットが増えすぎると、人は「どれが最も得か」を複雑に吟味するようになると指摘する。その結果、他者を助けるという決断が後回しにされたり、行動に移しにくくなったりする可能性があるという。

一方で、環境が厳しい時には、周囲との協力が生存や安定につながりやすい。いわば「ご馳走が並んでいる時は自分の皿を選ぶのに忙しいが、パンが一つしかない時には分け合うことの価値を自然と意識する」といったメカニズムが働いていると考えられる。

バーミンガム大のTodd Vogel博士は「私たちの研究は、日常生活で人が置かれている選択肢の多さや状況の違いが、目の前の行動を中断してまで他者を助けようとする意欲に、大きな影響を与える可能性があることを示している」とコメントしている。
(中村 航/翻訳家)

参照
People are more helpful when in poor environments | EurekAlert!
Humans are more prosocial in poor foraging environments | Nature Communications
People act more helpfully in poor environments than rich ones, research reveals

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