March 4, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
人間の脳は一般的に加齢とともに衰えていくものだが、高齢になっても20~30歳若い世代と同等の記憶力や脳機能を保つ人もいる。「スーパーエイジャー」と呼ばれるこのような人々の脳の中で一体何が起こっているのか。英科学誌『Nature』に掲載された最新の研究が、こうした人々の脳に共通する特徴の一端を明らかにした。
この研究では、イリノイ大学などの研究チームが亡くなった人から提供された脳の組織を詳しく調査。健康な若者、一般的な高齢者、スーパーエイジャー、そしてアルツハイマー病などの認知症患者の脳を比較した。その結果、スーパーエイジャーの脳内では、高齢になっても記憶をつかさどる領域で新しい神経細胞が活発に作り出されていることがわかった。実際、一般的な健康な高齢者と比べて2倍も多くの新たな細胞が作られていたという。
研究者は、脳内で新しい細胞が育つプロセスを「人間の赤ん坊が幼児になり、やがて10代の若者へと成長していくようなもの」と例えている。スーパーエイジャーの脳内では、未熟な細胞が立派な神経細胞へと育つ活発な様子が多数確認できたが、逆に認知症患者の脳では、新しい細胞の誕生がほとんど見られなかった。
今回の研究は、加齢とともに脳機能が必ずしも一方的に低下するわけではないことを示した点で大きな意味を持つ。将来は、新しい細胞が生まれるプロセス(神経新生)を促す治療法や生活習慣の改善策が、認知機能の維持につながる可能性もあり、今後の研究の進展が注目される。
(中村 航/翻訳家)
参照
Human hippocampal neurogenesis in adulthood, ageing and Alzheimer’s disease | Nature
Superagers show greater neuron growth linked to strong memory | News-Medical
Super-Agers’ Brains Have a Special Ability, New Study Suggests – The New York Times