[2014年第20週]ドコモの夏モデル、M2M関連で新製品相次ぐ、ワールドカップは8Kで!?
2014.05.19
Updated by Naohisa Iwamoto on May 19, 2014, 18:30 pm JST
2014.05.19
Updated by Naohisa Iwamoto on May 19, 2014, 18:30 pm JST
前週の連休気分から一転して、ニュースが怒涛の勢いで押し寄せてきた一週間。NTTドコモはVoLTE対応など夏モデルを一挙発表、ケイ・オプティコムはKDDI回線を使う格安SIM、格安スマホを発表し、当初のキャンペーン1000台があっという間に売り切れた。M2M関連の話題も多く、LTE対応の通信モジュールやアンテナ型のPHS端末などがお目見えした。ブラジルで開催されるサッカーワールドカップを8Kスーパーハイビジョンで伝送してパブリックビューイングする試みも行われるとの発表があった。
まず製品のニュースから。NTTドコモは、2014年夏モデルの12機種のラインアップを発表した。スマートフォンが6機種、タブレットが2機種、フィーチャーフォンが2機種、らくらくスマートフォンが1機種、発表済みのモバイルルーターが1機種で、全12機種のラインアップとなる。そのうち、スマートフォン4機種とタブレット2機種の6機種が、国内初となるLTEによる音声通話サービス「VoLTE」に対応する。また、新しいサービスとして雑誌読み放題の「dマガジン」などもアナウンスした。夏モデルでは、VoLTE対応に加えて、「電池の急速充電、非常用節電機能」の対応拡大と、アクセサリーや周辺機器を販売する「docomo select」の提供開始の3点をトピックとして掲げた(関連記事:ドコモ、国内初のVoLTE対応6機種を含む夏モデル12機種のラインアップを発表)。
近畿地方で通信事業を展開するケイ・オプティコムは、KDDIのネットワークを利用したモバイルサービス「mineo」を6月3日から全国で提供する。LTEによる高速データ通信だけの利用ならば月額980円(税抜き、以下同)、音声通話付きでスマートフォン「DIGNO M」(京セラ製)とセットにしても月額3590円から利用できる。mineoは、KDDIのネットワークのMVNOとして提供する。利用するのは、データ通信が800MHz帯のプラチナバンドを含む「au 4G LTE」、音声通話が3G回線となる。スマートフォンとの「端末セット」を予約した先着1000人までは、24カ月分の月額基本料金(980円)を割り引くキャンペーンを実施したが、申し込み開始翌朝までに1000人の先着枠が埋まる盛況ぶりだった(関連記事:ケイ・オプティコム、au回線を使ったモバイルサービス「mineo」を全国で開始、スマホセットも)。
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M2M関連のニュースを紹介する。KDDIは、高速データ通信サービスのLTEに対応した通信モジュール「KYM11」を発売する。KYM11は京セラ製で、KDDIの「4G LTE」に対応した受信時最大75Mbps/送信時最大25Mbpsの高速データ通信が可能なM2M向けの通信モジュール。料金プランは2種類。「LTEモジュールフラット」は、受信時最大75Mbps/送信時最大25MbpsのLTEを月間7GBまで利用でき、基本使用料は月額6700円。もう1つの「LTEモジュールダブル定額」は、受信時/送信時ともに最大512kbpsに通信速度が制限される代わりに、月間300KBまでの通信が月額800円の基本使用料で利用できる(関連記事:KDDI、国内事業者初となるLTE対応通信モジュールを発売)。
エイビットは、M2M用途でデータの収集・機器の制御を行う「SensorMateシリーズ」の製品第一弾として、アンテナ一体型のPHS端末「SensorMate TypeA SMA-01」を提供する。エイビット独自の「低消費電力PHS通信モジュール」をアンテナ台座部分に組み込み、USB接続するだけで自動販売機や太陽光発電システム、証明写真撮影機などの各種の機器にデータ通信機能を提供する端末。制御は汎用モデムと同様のATコマンドで行う。防塵、防滴仕様(IP54)で屋外への設置も可能。今後、PHSだけでなく、GSM、WCDMA、LTEなどの通信モジュールを搭載したモデルの提供も予定している(報道発表資料:SensorMate TypeA SMA-01を発表)。
社会貢献に関連する話題もあった。アプリックスIPホールディングスは、O2Oや位置情報などのソリューションに活用できるBeacon製品の「MyBeaconシリーズ」を、医療、看護、介護、福祉、障がい者支援などの用途に向けて無償貸与する。貸与するのは、小型軽量で持ち運び可能なペンダント型Beaconで、Bluetooth無線は医療現場でも安心して使えることから引き合いが多かった。しかしMyBeaconシリーズは、これまで大口ロットへの対応に追われて少量提供に対応できておらず、今回は企業の社会的責任を果たすという側面から医療や看護などのソリューションに向けて無償貸与することを決定したという(報道発表資料:医療・看護・介護・福祉・障がい者支援でのBeacon活用を促進 〜 当該アプリやサービスの開発用にペンダント型Beaconの無償貸与開始 〜)。
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技術的なトライアルに関するニュースもあった。1つは、NHKが発表したブラジルで開催される「2014 FIFA ワールドカップ ブラジル」の8Kスーパーハイビジョンによるライブパブリックビューイング。「日本×コートジボワール戦」「日本×ギリシャ戦」「決勝戦」を含む最大9試合をFIFAと共同制作し、国内4会場で実施する。参加には事前申し込みが必要。なお、ライブ時間以外には、これまで制作した8Kコンテンツなども上映する予定だ。今回のパブリックビューイングの映像転送は、NTTが国際共用IP網を用いた8Kスーパーハイビジョンのライブ映像伝送の実証実験として行うもの。NTTの研究開発用テストベッドネットワーク「GEMnet2」、国立情報学研究所の学術情報ネットワーク「SINET4」、米国の「Internet2」、中南米の「RedCLARA」、ブラジルの「RNP」を相互接続することにより、ブラジルから日本まで2つの伝送ルートによる実験網を構築し、2つのルートを併用してデータを伝送するマルチパス伝送を行う(関連記事:NHK、8Kスーパーハイビジョンによる2014 FIFA ワールドカップのパブリックビューイングを国内4会場で実施)。
もう1つは、KDDIと海上保安庁による災害時の通信確保の訓練。両者は、鹿児島県が主催する「平成26年度鹿児島県総合防災訓練」に参加し、2014年5月22日に海上保安庁の船舶に携帯電話基地局(実験試験局) を開設して、商用と同等の電波を用いた携帯電話システムとしての品質を検証する実証試験を実施する。この訓練でKDDIは、災害などで通信障害が発生しているサービスエリアを早期に復旧させるため、車載型基地局、可搬型基地局、無線エントランス回線の増強などの取り組みに加え、陸上の被災状況に影響されない海上から電波を送ることで、サービスエリアの更なる早期復旧を目指す(報道発表資料:携帯電話基地局の船上開設に向けた実証試験について)。
今後の技術の道筋を紹介するイベントもあった。エリクソン・ジャパンは報道関係者向けの技術説明会を開催し、藤岡雅宣CTOが「2020年に向けた移動通信の進化〜5Gと3GPPリリース13を中心に〜」と題して解説を行った。それによると、現在の3GPPで標準化が進められているRelease 12の機能凍結は2014年9月を予定しており、次のRelease 13の機能凍結はは2015年12月を目途にしているとのこと。次のRelease 14からは「5G」として標準化されることになる。「Release13は当初マイナーチェンジと考えられていたが、5Gに入る前のLTE最後の標準としてもっと大きいリリースになると考えられている」(藤岡CTO)と言う(関連記事:エリクソンが5Gと3GPP Release 13をテーマに技術説明会を開催)。
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NTTグループのニュースを2つ紹介する。NTT東日本・NTT西日本は、光アクセスサービスを他事業者にサービス卸として提供する「光コラボレーションモデル」を発表した。2014年度第2四半期中にサービスの概要を提示し、2014年度第3四半期からの提供を目指す。NTTによれば、光アクセスの本格的な「サービス卸」は世界初。光コラボレーションモデルは、「幅広い分野の多様なプレイヤーに公平に提供」する。NTTドコモが利用した場合、現在は規制されている「光回線とモバイル回線を組み合わせたサービス」を現行法制度下で提供可能になるとしている(関連記事:NTT東西が光アクセスのサービス卸を2014年度第3四半期から開始)。
もう1つが、NTTドコモによる新会社設立のニュース。ドコモのサービス基盤の業務を運営する全国9社の子会社「ドコモCS」を7月1日に設立する。既存の機能分担子会社25社の業務を9社のドコモCSを含む12社に集約する。ドコモCSの全国9社は、現在ドコモの支店が行っている代理店支援業務や法人営業、またこれまで機能分担子会社が担当してきた通信ネットワークの建設・保守業務を担う。ドコモCSの設立で、従来の25社の機能分担子会社の体制から、より地域に密着した体制を整える(関連記事:NTTドコモ、代理店支援や法人営業などを担当する「ドコモCS」を設立し、子会社を整理)。
このほかにも、今後の生活を変化させていく可能性のある話題が続々と登場した。注目を浴びたのは、アイウェアブランド「JINS」を展開するジェイアイエヌのウエアラブル端末。同社は、「自分を見る」をコンセプトにしたセンシング・アイウェア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を2015年春に発売する。JINS MEMEは、特許出願中というJINS独自の「三点式眼電位センサー」を使い、まばたきと8方向の視線移動をリアルタイムに測定する。視線移動を検知するアイ・トラッキング技術には各種の方法があったが、バッテリーやユーザーへの負荷などの問題があった。東北大学加齢医学研究所との共同開発による三点式眼電位センサーは、鼻パッドと眉間部分のセンサーから検出される眼電位を利用するもので常時着用する「眼鏡」とセンサーを完全に一体化することに成功している(関連記事:「外を見る」から「自分を見る」へ-世界初・三点式眼電位センサーで視線を可視化するセンシング・アイウェア「JINS MEME」発表)。
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クレジット決済を手軽に。カカクコムは、同社が運営するグルメサイトの「食べログ」とEC決済事業を手がけるベリトランスが共同で、スマートフォンなどを使った飲食店向け決済サービス「食べログPay」を開始したと発表した。スマートフォンやタブレット端末にカードリーダーを挿すだけで、決済サービスが提供できる。食べログPayでは、飲食店の決済に利用しやすくするため、サービス開始記念キャンペーンとして決済手数料を3.0%に設定した。カカクコムではこの料率を「業界最安水準」とし、キャンペーン期間中に申し込んだ店舗は永続的に3.0%の料率が適用される(関連記事:飲食店向けにスマートフォンで簡単クレジット決済、「食べログPay」を提供開始)。
ICTが振り込め詐欺などから住民を守る。ウィルコム、ソフトバンクテレコム、トビラシステムズの3社は、「安全で安心なまちかながわ」の実現に向けて神奈川県と協定を締結した。ウィルコムは、自宅の固定電話回線に設置することで振り込め詐欺や勧誘電話などの悪質な迷惑電話と思われる着信を、光と音声で自動警告する「迷惑電話チェッカー〈WX07A〉」を提供している。これを神奈川県内でモニター利用することなどにより、振り込め詐欺電話被害の防止を取り組む(報道発表資料:「安全で安心なまちかながわ」の実現に向けて神奈川県と協定を締結)。
使っていれば、お得に。じぶん銀行は、KDDIと連携して、auユーザーを対象とした特典プログラム「プレミアムバンク for au」の提供を5月21日から開始する。発表された特典は、回数制限なしのATM利用手数料の無料化、同じく回数制限なしの他行宛振込手数料の無料化、「au WALLET」へのチャージ5%増額。ATM利用手数料の無料化と他行宛振込手数料の無料化は6月下旬から提供する。また、「au WALLET」へのチャージ増額は5月21日から2014年12月末までで、1回あたり5,000円以上、上限回数は月10回までとなっている(関連記事:じぶん銀行、au IDと連携した特典プログラム「プレミアムバンク for au」の提供を開始)。
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