[2014年第33〜34週]5GHz帯のLTE実験、「エイブル」がスマホ参入、球場でビールをスマホから注文
2014.08.25
Updated by Naohisa Iwamoto on August 25, 2014, 11:30 am JST
2014.08.25
Updated by Naohisa Iwamoto on August 25, 2014, 11:30 am JST
お盆休みの時期を挟んだ2週間、モバイル関連のニュースは途切れることなく飛び込んできた。テクニカルな話題では、NTTドコモなどが5GHz帯のアンライセンスバンドでLTE通信の実験に成功したニュース、世界初の商用可視光通信システムの量産開始のニュース、さらにKDDIとGoogleなどが日米間の新しい光海底ケーブルを敷設するニュースなど盛りだくさんだった。さらに、不動産賃貸大手のエイブルが、フリービットと手を組んで独自スマートフォンの提供に乗り出したり、ソフトバンクと米スプリントが共同開発したシャープ製の端末を発売すると発表したり、業界内外で様々な連携が進んでいる。面白いのは、アプリックスIPホールディングスのBeaconが野球場に採用されたニュース。球場内の位置が特定できるため、スマートフォンアプリから手軽に「ビールの注文」ができるのだ。
まず、技術革新を感じさせるニュースから紹介する。NTTドコモは、無線LANやBluetoothなどが利用する免許不要の周波数帯である「アンライセンスバンド」で、LTEの通信を実現する実験に成功したと発表した。実験は、NTTドコモと中国ファーウェイ、ドコモ北京研究所が共同で行ったもの。LTE通信をアンライセンスバンドで使えるようにする「Licensed Assisted Access using LTE」(以下、LAA)技術の有効性を確認するために、2014年2月からファーウェイの北京研究所で実施してきた。この結果、LAAの通信に成功し、無線LANの1方式であるIEEE802.11nよりもLAAでは通信容量が1.6倍向上するという結果が得られた(関連記事:ドコモ、アンライセンスバンドのLTE通信実験でWi-Fiの1.6倍の容量向上を確認)。
可視光通信システムが実用段階に入る。アウトスタンディングテクノロジーは、世界初の商用可視光通信システムの量産を開始する。パソコンにUSB接続して使用することを想定した無線LANタイプと、工場内や機器組み込みの利用を想定したFAタイプの2種類を、2015年3月に発売する。これらを利用することで、可視光通信で接続された機器を、イーサネット経由で既設ネットワークに接続できる。無線LANタイプは、天井に設置した照明型の親機と接続することで、5Mbpsから20Mbpsまでのベストエフォートでの通信が可能とまる。通信距離は1mから5m。FAタイプは通信速度1Mbps〜100Mbps(切り替え)で、0.1m〜100mの距離で通信が可能だ(関連記事:アウトスタンディングテクノロジー、世界初の商用可視光通信システムの量産開始)。
スマートフォンなどの普及は、大陸間通信にも大きな影響を及ぼしている。KDDIは、中国のChina Mobile International、China Telecom Global、米Google、シンガポールSingTel、マレーシアGlobal Transitと、日本〜米国間の光海底ケーブル「FASTER」の共同建設協定を締結した。総建設費は約3億米ドル(約306億円)。「FASTER」は、総延長約9000kmの光海底ケーブルで、2016年度第1四半期の運用開始を予定している。初期設計容量は世界最大規模の60Tbpsとなり、スマートフォンやタブレットの普及、LTEなどの高速無線ネットワークの拡充で急増する日米間のインターネットトラフィック需要に対応するとしている(報道発表資料:日本〜米国間光海底ケーブル「FASTER」の共同建設協定締結について)。
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キャリア関連の話題では、NTTドコモが6月から提供している新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の「シェアパック」および「ビジネスシェアパック」に、新しい料金請求方法を追加するニュースがあった。これまで、シェアパックなどを利用すると代表回線に一括してパケット通信のデータ通信量を請求していた。これに新しく回線ごとに均等に分割できる請求方法を2014年10月請求分(9月利用分)から加える。利用料金をシェアグループの契約回線数に応じて分割したいというユーザーからの要望が多く、これに応えたものだ(報道発表資料:「シェアパック」および「ビジネスシェアパック」に新たなご請求方法を追加)。
またNTTドコモは、訪日した外国人向けに同社の公衆無線LANサービス「docomo Wi-Fi」を提供するトライアルについてもアナウンスしている。トライアルの名称は「docomo Wi-Fi for visitor」で、訪日外国人が渡航前でも専用サイトから申し込める。あらかじめ申し込んでおけば、来日後に空港や鉄道駅、カフェなど日本国内の約15万カ所のアクセスポイントでWi-Fiを利用できる。トライアルは2014年8月20日から2015年3月31日まで期間限定で申し込みを受け付けるもの。料金は、1週間プランが900円(税抜き、以下同)、3週間プランが1300円(関連記事:ドコモ、訪日外国人向けに1週間900円から「docomo Wi-Fi」をトライアル提供)。
コンテンツを持つ企業との協業の動きもあった。KDDIは、ポップカルチャーのニュースメディアとして知られる「ナタリー」の運営会社ナターシャの株式を取得し、連結子会社とした。KDDIはナターシャの発行済み株式の90%に相当する普通株式を8月21日に取得済み。KDDIとナタリーは、それぞれの持つ資産を活用して様々なエンターテインメントサービスの提供を通じて、ユーザーに新しい価値を提案していくとコメントしている(関連記事:KDDI、エンタメニュースサイト「ナタリー」の運営会社を連結子会社に)。
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個人向けのサービスや端末のトピックから。フリービットと賃貸不動産大手のエイブルは、フリービットが「freebit mobile」の販売方法の1つとして加えた「freebit mobile パートナープログラム」の初のパートナー企業として、エイブルがスマートフォンを販売すると発表した。エイブルでは、TGRoom原宿店 MAISON ABLEを旗艦店とし、まずエイブル直営店全国10店舗(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、京都、大阪)でスマートフォンの販売を開始。全国400を超えるエイブル直営店での販売を目指す。販売するのはフリービットの「PandA」をエイブル向けにカスタマイズした「エイブルカスタマイズ版PandA」となる。この「エイブル"PandA"」では、会員制優待サービスが受けられるほか、住生活のトラブルなどをサポートする「エイブルコンシェルジュアプリ」が使えるなどの独自サービスを提供する(報道発表資料:"スマホを変えるスマホ"のfreebit mobileと賃貸業界大手のエイブルfreebit mobileパートナープログラム第一号として戦略的協業開始「スマホが変えるスマイ(住まい)」)。
コクヨグループのコクヨS&Tは、紙のノートに専用のペンで書いた文字や図表を、ノート上の特定の場所に「チェック」を入れることでデータ化し、クラウドへアップロードできるデジタルノート「CamiApp S」を発売する。これまで同社は、紙のノートに書いた文字や図表を簡単にデータ化できる「CamiApp」を提供していたが、今回はワンタッチでスマートフォンやタブレットを経由してクラウドにアップロードできるようになり、データを一層活用しやすくなった。製品は、本体とノート、専用ペンのセットで、ノートブックタイプが2種類(Android版、iOS版)、メモパッドタイプが2種類(Android版、iOS版)のバリエーションを用意する(報道発表資料:デジタルノート「CamiApp S」を発売)。
ソフトバンクモバイルは、米スプリントとの初めての共同開発モデルとなる「AQUOS CRYSTAL」(シャープ製)を8月29日に国内発売する。AQUOS CRYSTALは、画面の額縁(フレーム)をこれまでの狭額縁デザインよりも一層薄くした"フレームレス"構造を採用した。国内発売モデルは、ワイヤレススピーカーシステム「Harman Kardon ONYX STUDIO」を標準でセットとして提供し、外出先だけでなく自宅でも高品質な音楽を楽しめる。また、日本専用モデルの「AQUOS CRYSTAL X」の開発、アプリ取り放題サービスの「App Pass」の提供についても同時にアナウンスした(関連記事:ソフトバンク、"フレームレス"のAQUOS CRYSTALを発売、米スプリントとのスケールメリットを訴求)。
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その他のトピックを紹介する。アプリックスIPホールディングスは、日本プロ野球機構のオリックス・バッファローズの本拠地である京セラドーム大阪球場にBeaconが導入されたと発表した。球場内の座席にはアプリックスのBeaconの新製品である「MyBeacon Pro MB004」を設置し、メディアアクティブが開発したアプリケーション「野球場NAVI」と連携する。Beaconの情報とスマートフォンを使って球場内の案内や誘導が可能になる。また、面白いのがビールの売り子の呼び出しサービス。観客席にいながら、ビールの売り子をスマートフォンから手軽に呼び出せる(報道発表資料:AplixのBeaconがメディアアクティブ社との協業により日本プロ野球の京セラドーム大阪球場で採用)。
またアプリックスが、デジタルサイネージ機器に接続して、その表示内容と同期したBeaconのデータを送信できる「MyBeacon デジタルサイネージ(MB001 D)」を発売するというニュースもあった。デジタルサイネージの表示内容とBeaconの送信データを連携させることで、デジタルサイネージを見た通行人や乗客などにタイムリーな関連情報を提供できるようになる。アプリックスでは、効果的な広告・販促活動の支援が可能になるとしている(報道発表資料:デジタルサイネージの表示内容と同期した関連情報をスマホに表示できるBeaconの発売開始)。
子どもの携帯・スマホの所持や利用状況の調査結果のアナウンスもあった。MMD研究所は、子どもを持つ母親に対して「2014年 子供を持つ母親の携帯電話・スマートフォンに関する意識調査」の結果を公表した。小学生〜高校生の子どもに携帯電話を「持たせている」と回答した割合からみた携帯電話所有率は、全体で51.3%となり、前年調査(母数は552)の41.9%から約10ポイント上昇した。端末の種類では、小学5年生までは「子供向け携帯電話」が各学年の首位。一方、スマートフォンは中学生では54.4%、高校生では83.8%に上り、スマートフォンへのシフトが学年を追うごとに急速に進むことがわかる(関連記事:子どもの過半数が携帯電話を所有、母親の半数が携帯所持に賛成--MMD研究所)。
最後に、安心・安全の確保のための取り組みについて。銀行を装った「なりすましメール」の被害を軽減させる取り組みとして、「なりすましメール防止安心マーク」の銀行への導入を開始したと、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とネット業界各社が発表した。Webメール利用の際に、「安心マーク」が表示されることで正しい送信者からのメールであることが一目で確認できる。取り組みを発表したのは、インフォマニア、シナジーマーケティング、トライコーン、ニフティ、JIPDEC、パイプドビッツ、ヤフーの各社。銀行としては、まず常陽銀行が「安心マーク」を採用する(関連記事:なりすまし防止安心マークの銀行への導入を開始、JIPDECなどが推進)。
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登録はこちら日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。