2006年ごろ、NTT幹部らがスカイプやGyaoなど通信キャリアの高速インフラを利用して無料通話やコンテンツ配信サービスを提供する事業者を「ただ乗り」だと批判したことがあった。通信インフラ建設に投資しているのは、通信キャリア自らがダイヤル通話料やコンテンツ利用料などの料金をユーザから徴収して利益を上げるためであって、通信インフラ投資もしてない新興企業が収益源を脅かすのは我慢ならないというわけだ。こちらの利益を奪っているのだから、その分の金を払えというのがNTTグループ(の一部)の主張だった。
米国では2005年ごろ、地域電話会社がグーグルやヤフー、マイクロソフトなど膨大なトラフィックを生み出してインフラ会社のリソースを消費している企業にコスト負担を求める声を上げたし、最近でも映像ストリーミング配信のネットフリックスとベライゾン、AT&Tなどの通信キャリアが対立するなど、この問題は世界で今もなお後を引いている。
インドではモバイル通信キャリアがスカイプやWhatsApp、WeChatなどの事業者が、音声通話やショートメッセージで得られるはずの収益を奪っているとして規制当局(TRAI)に働きかけ、費用負担を迫っている。インドでは「無料」サービス事業者のせいでオペレーターが年間に500億ルピー(855億円)にも上るという推計もあるそうだ。インドにはインターネット利用者が1億6,000万人いて、WhatsAppは月間アクティブユーザが5,000万人を超えるという。
TRAI(インド電気通信規制庁)はすぐにも通信キャリアの意向を汲んで、「無料」事業者らにチャージするのではないかという報道が8月になって相次いだが、まずは来月以降、この件についてパブリックコメントを募るようだ。
【参照情報】
・Trai Consultation Paper on Broadband Next Month; WhatsApp, Skype to Follow
・Indian Telcos Want to Suppress WhatsApp Even if Consumers Suffer
・India planning to charge for WhatsApp, Viber, Skype: Reports
・Craze Of WhatsApp Increasing Among Women
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