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台湾4キャリアのLTEを一足早く体験 - 各社のLTE戦略も明らかに

2014.04.25

Updated by Kazuteru Tamura on April 25, 2014, 10:00 am JST

台湾でLTEの開始が迫っている。2014年中に複数の移動体通信事業者が台湾でLTEサービスを開始する予定で、早ければ2014年7月にも開始するとされている。国策でWiMAXを推進した影響もあり、LTEの導入が遅れた台湾であるが、LTEの開始に先立って4G体験会が開催された。4G体験会では各移動体通信事業者がLTEの優位性などをアピールしていた。

▼ようやく台湾にも「4G LTE」が到来。
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台湾では中華電信(Chunghwa Telecom)、遠傳電信(Far EasTone Telecommunications)、台湾大哥大(Taiwan Mobile)、威寶電信(Vibo Telecom)、亞太電信(Asia Pacific Telecom Group)が移動体通信事業を展開している。そのうち威寶電信を除く既存の4社と新規参入となる台湾之星移動電信(Taiwan Star Cellular)と國碁電子(Ambit Microsystems)の2社を加えた計6社が周波数オークションを経てLTE用の周波数帯を獲得している。台湾では1.8GHz帯(Band 3)、900MHz帯(Band 8)、700MHz帯(Band 28)をLTE用に割り当てられており、各移動体通信事業者が保有するLTE用周波数帯は下記の通りである。

▼各社が保有する周波数帯と帯域幅
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※当初、遠傳電信について、Band 8に10MHz幅、Band 28に保有なしと表示していましたが、正しくはBand 8に保有なし、Band 28に10MHz幅を保有でしたので、表を修正いたしました(2014/12/24 19:50)

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4G体験会にはLTE用の周波数帯を獲得した6社のうち中華電信、遠傳電信、台湾大哥大、台湾之星移動電信の4社が出展し、各社のLTEの特徴を説明していた。HTC One (M8)の発売記念イベントに併設する形で実施されたので、LTEを利用可能な状態のHTC One (M8)が展示されて、一足早く台湾のLTEを体験できるようになっていた。HSPA+で接続したHTC One (M8)が並べられており、LTEでは滞りなく高解像度な動画のストリーミング再生が可能であることをデモしていた。

▼中華電信のLTEに接続した状態。
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▼台湾之星移動電信のLTEに接続した状態。(ネットワークはまだPLMN番号で表示されている。)
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最多の帯域幅と最多の対応端末をアピールする中華電信

台湾で最も早くにLTEサービスを提供すると言われている中華電信は、「最多の35MHz幅」「最多の対応端末」をアピールしていた。周波数オークションでは1.8GHz帯の25MHz幅と900MHz帯の10MHz幅を獲得し、最も多くの帯域幅の取得に成功している。帯域幅が多ければ、それだけ理論値の引き上げや混雑の緩和に繋がるので、その点をアピールするのは当然と言えるだろう。ただ、一般消費者に向けては今回のように「最多の35MHz幅」だけでは伝わりにくいかもしれない。

そして、「最多の対応端末」という点も見逃せない。台湾では1.8GHz帯(Band 3)、900MHz帯(Band 8)、700MHz帯(Band 28)をLTE用に割り当てているが、中華電信はそのうち1.8GHz帯と900MHz帯を獲得している。世界には1.8GHz帯や900MHz帯でLTEを開始している地域が存在しており、またそれらに対応した端末も広く出回っている。特に1.8GHz帯は世界で最も多くLTEで使用されており、それだけ対応端末も多いのである。一方で、台湾で使用される700MHz帯はAPT 700と呼ばれる700MHz帯で、Band 28に規定されている。この700MHz帯で提供するのは台湾が世界で最初となる見通しで、対応端末は少ないのが現状である。

LTE用の周波数帯を獲得した6社のうち1.8GHz帯を保有して700MHz帯を保有しないのは中華電信だけであり、保有する全ての周波数帯を使える端末と保有するいずれかの周波数帯を使える端末を合計すると、中華電信が最も多くなるのは間違いない。

しかし、Band 28の700MHz帯で提供する予定の国や地域は多く、今後は対応する端末も増える見込みであるため、「最多の対応端末」は事実であっても優位性は低くなるだろう。帯域幅が多いことはユーザが増えた際にも大きな強みとなるので、「最多の35MHz幅」という点は大きな武器になると考えられる。

尚、1.8GHz帯は25MHz幅を保有するが、連続した25MHz幅ではなく15MHz幅と10MHz幅に分離している。そのため、LTE-Advancedの主要技術であるキャリアアグリゲーションに非対応であれば最大で15MHz幅での通信となる。LTE開始直後からLTE-Advancedを開始するとは考えにくく、通信速度の理論値は後述の遠傳電信よりも劣ることになるため、通信速度に関するアピールは一切見られなかった。

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▼中華電信ブース。パネルには「帯域幅が最大の35MHz幅」、「対応する携帯電話やタブレットが最多」、「よりリッチなコンテンツサービス」と記載されている。
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▼中華電信のLTEに接続したHTC One (M8)。
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速さとエリアの両立をアピールする遠傳電信

遠傳電信は速さとエリアの両立をアピールしており、特に速さでは台湾最速となる下り最大150Mbpsのサービスが提供可能としている。1.8GHz帯の20MHz幅と700MHz帯の10MHz幅を保有しており、1.8GHz帯の20MHz幅は連続しているため、LTE UE Category 4に対応した端末ではキャリアアグリゲーションに非対応でも理論値が下り最大150Mbps/上り最大50Mbpsとなる。通信速度は一般消費者に響きやすい指標であり、遠傳電信は抜かりなくそこをアピールする狙いである。

また、台湾でLTE用に割り当てられた周波数帯は最も低い周波数帯となる700MHz帯も保有している。電波は低い周波数ほど遠くに到達し、また回折しやすいために障害物の裏、屋内、入り組んだ場所にも強く、広いエリアをカバー可能であることを示していた。

1.8GHz帯で20MHz幅を利用した「速さ」と700MHz帯を利用した「広さ」を武器にする。遠傳電信は既に広い地域でLTEネットワークを展開しているが、まずはエリアの拡大を優先するために、1.8GHz帯よりも700MHz帯を優先して展開している。ホテルの地下では700MHz帯を使用した遠傳電信のLTEが既に圏内となっており、屋内や地下における強さを見せつけた。

▼遠傳電信ブース。パネルには「700+1800で低周波数と高周波数の組み合わせで世界クラスの4G体験を提供」と記載されている。また、「700 MHz帯では最も広いエリアをカバーすることが可能」、「1.8GHz帯では最大の連続した帯域幅で下り最大150Mbpsを実現する」と説明が加えられている。
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▼遠傳電信のLTEに接続したHTC One (M8)
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高品質な電波を広いエリアで提供することをアピールする台湾大哥大

台湾大哥大は1.8GHz帯の15MHzと700MHz帯の15MHz幅を保有する。他社と比べて帯域幅が多いわけでもなく、連続した帯域幅でも15MHz幅に留まる。そんな中、「高品質な電波を広いエリアで提供」することをアピールしていた。先述の通り700MHz帯のように低い周波数は広いエリアをカバーするのに優位である。そんな700MHz帯は台湾大哥大を含めた4社が保有しているが、帯域幅は他の3社が10MHz幅であるのに対して台湾大哥大は15MHz幅である。LTE UE Category 4に対応した端末であれば、他社の700MHz帯では下り最大100Mbps/上り最大50Mbpsとなるが、台湾大哥大の700MHz帯では下り最大112.5Mbps/上り最大50Mbpsとなる。また、帯域幅が広いほど、ユーザが増えた際に混雑を緩和することもできる。そのため、「高品質な電波を広いエリアで提供」ということは、強みであることに間違いない。

▼台湾大哥大ブース。700MHz帯の15MHz幅で提供することを「全国で最高品質の電波」としている。「屋内でのエリア展開に優位」、「カバー可能なエリアが広大」と強調している。
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▼台湾大哥大のLTEに接続したHTC One (M8)。
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まずはブランドの定着を狙う台湾之星移動電信

台湾之星移動電信は食品大手の頂新グループに属する企業で、電子機器受託製造大手の鴻海精密工業グループである国碁電子と共に新規参入となる。4G体験会では他社が帯域幅、通信速度、エリアといった観点でアピール合戦を繰り広げていたが、台湾之星移動電信にはそのようなアピールは一切見られなかった。他社と比べて保有する周波数帯に大きな優位点がなくアピールしにくいことは否めないが、新規参入であるが故にまずは台湾之星移動電信の認知度やブランド力の向上を狙っている。頂新グループが大株主の一つであり、建設完了当時は世界一の高層ビルであった台北101においては「台湾之星 4G飛揚」とライトアップするプロモーションを大々的に実施したこともあり、4G体験会では「台湾之星移動電信 4G LTE」と書かれたフラッグやパネルを設置して「台湾之星移動電信=4G LTE」を定着させようとする狙いが見て取れた。

尚、LTEネットワークのPLMN番号は新規に割り当てられており、SIMカードの移動体通信事業者も台湾之星移動電信として認識していた。ただ、3Gの周波数帯は保有しておらず、違法電信のネットワークを使用することが決定している。台湾之星移動電信は威寶電信を傘下とすることで合意しており、人材採用なども共同で実施している。威寶電信の3G加入者の移行を促進する意図もあるのか、台湾之星移動電信のイメージカラーは威寶電信のそれを継承している。

▼台湾之星移動電信ブース。ブースの看板には台湾之星移動電信のみが「4G LTE」の文字を入れた。あまり目立たないが、ブース内やパネルには威寶電信のロゴも見られる。台湾之星移動電信と威寶電信のイメージカラーは同じであることも分かる。
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▼台湾之星移動電信のLTEに接続したHTC One (M8)。
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LTEの移動基地局車が出動

LTEサービスの開始に備えて中華電信、台湾之星移動電信、遠傳電信は各地でLTEネットワークの展開を進めている。特に中華電信と台湾之星移動電信は、空港や主要駅など多くのスポットでLTEの電波が入るようになっていた。一方で、台湾大哥大はまだLTEネットワークの展開を開始しておらず、遠傳電信は広い範囲ではまだ展開していないという。そのため、4G体験会では一時的にLTEエリアを構築するために、遠傳電信と台湾大哥大の移動基地局車が出動した。LTEの移動基地局車が出動するのは4G体験会が初めてとのことである。LTEが本格的に展開されれば出動する機会は少なくなると思われ、LTEの移動基地局車が出動した場面を見られたのは貴重だと言えるだろう。

尚、4G体験会で展示されていたHTC One (M8)は中華電信が1.8GHz帯、台湾之星移動電信が900MHz帯、遠傳電信と台湾大哥大が700MHz帯で接続されており、LTEの移動基地局車はいずれも700MHz帯の電波を出していたことが分かる。

▼LTEの移動基地局車。左が遠傳電信、右が台湾大哥大である。
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台湾ではLTEサービスの開始を目前にして、LTEに関連した動きが活発になっている。移動体通信事業者や端末メーカーもLTEを使ったマーケティングを展開しており、早くも移動体通信事業者のブランドを冠したLTEスマートフォンまで登場している。新たな時代を迎えて盛り上がる台湾の移動体通信事情は今後も目が離せない。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。