アメリカのヒューレット・パッカード(HP)は2014年1月15日、インド市場でスマートフォンを販売することを発表した。同社にとってはスマートフォン市場への再参入となる。
HPでは6インチと7インチの大型液晶画面を搭載した製品「Slate6 VoiceTab」と「Slate7 VoiceTab」の2機種を開発し、2014年2月からインドで発売する。同社は2010年に携帯端末メーカーの米パームを買収してスマートフォン市場に参入したが、販売が振るわず2011年には撤退した経緯がある。価格やインド以外の地域での販売計画は明らかにしていない。6~7インチ前後の大型液晶を搭載したスマートフォンは「Phablet(ファブレット)」と呼ばれ、スマートフォンとタブレットの機能を併せ持つのが特徴。HPの製品はAndroid OSを搭載し、3Gに対応している。
HPがスマートフォン市場として再参入するインドではスマートフォンの成長が著しい。2013年12月にIDCインドが発表したレポートによると、インドではスマートフォン市場では2013年第3四半期において1,280万台の出荷台数を記録し、前年比229%(380万台)の成長を見せた。そしてインド市場ではフィーチャーフォンがまだ圧倒的に強く、携帯電話全体の販売に占めるフィーチャーフォンの割合が80%を超えている。しかし、その割合もだんだんとスマートフォンに移行しつつあることから、これからもさらにスマートフォンの販売が増加することが期待されている。またIDCによるとインド市場では「Phablet(ファブレット)」の人気が高く、スマートフォン販売のうち23%がPhabletである。
▼インド市場でのフィーチャーフォンとスマートフォンの出荷台数比率
(IDC発表資料を元に作成)
▼インド市場での携帯電話のメーカー別シェア-フィーチャーフォン+スマートフォンの合計シェアとスマートフォンシェアの比較(2013年Q3)
(IDC発表資料を元に作成)
インド市場は2014年もスマートフォンの販売は期待されている。Guardianの調査によると、インドでは2014年に2億2,500万台販売されると大胆な予測が行われている。またインド市場において2014年に新たにスマートフォンを手にする人は2億700万人とこちらも大胆な予測が出されている。
▼2014年におけるスマートフォン販売台数と新たにスマートフォンを手に入れる人の予測
このように今後も成長が期待されるインド市場ではあるが、そこでのメーカー間の競争は非常に激しい。サムスンのようなグローバルメーカーだけでなく、インド地場のメーカーや中国からのメーカーも参入し熾烈は販売競争を行っている。また日本のスマートフォン市場からは撤退を表明したパナソニックもインドでスマートフォンを販売している。(参考レポート:成長余地の高いインドのスマートフォン市場に挑むパナソニック)
HPが今後、インドのスマートフォン市場でどのような戦略で販売を展開していき、ポジションを築いていくのか注目していきたい。インドはHPにとってスマートフォン市場への再参入をかけた重要な試金石となることは間違いない。
【参考動画】
▼"Slate7 VoiceTab" の紹介
▼インドで成長するスマートフォン市場
【参照情報】
・プレスリリース:HP Launches Voice Tablets for Consumers in India
・Why HP chose India as its way back into the smartphone market
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。