カンボジアの携帯電話事情(2) - Smart AxiataのプリペイドSIMでLTEを使う
2015.02.16
Updated by Kazuteru Tamura on February 16, 2015, 17:30 pm JST
2015.02.16
Updated by Kazuteru Tamura on February 16, 2015, 17:30 pm JST
カンボジア王国(以下、カンボジア)には7社の移動体通信事業者が存在しており、そのうちSmart AxiataがLTEサービスを2014年1月より開始している。Smart AxiataのLTEサービスはプリペイドSIMで利用できるため、カンボジアを訪問する外国人でも手軽に高速なモバイルインターネットを楽しめる。実際に筆者がカンボジアの首都・プノンペンを訪問してSmart AxiataのLTEサービスを試してきたので、今回はSmart AxiataのLTEサービスやプリペイドSIMなどを紹介する。
プノンペン国際空港では国際線の手荷物受取所を抜けると、各移動体通信事業者のブースが並んでおり、海外からの訪問者はそこでプリペイドSIMを購入できる。移動体通信事業者のブースはSmartブランドで展開するSmart Axiata、Beelineブランドで展開するSotelco、qbブランドで展開するCambodia Advanced Communications、Cellcardブランドで展開するMobiTel、Metfoneブランドで展開するViettel (Cambodia)、CooTelブランドで展開するXinwei (Cambodia) Telecomの6社が連なっている。カンボジアの移動体通信事業者ではExcellブランドで展開するSouth East Asia Telecom (Cambodia)のみブースを設けていない。
なお、South East Asia Telecom (Cambodia)はカンボジアで唯一のCDMA2000方式を採用する移動体通信事業者であり、SIMカードは採用していない。各移動体通信事業者は社名よりブランド名が浸透しているため、本記事では以下ブランド名で記載する。
通信方式はSmartがFDD-LTE/W-CDMA/GSM方式、CellcardとMetfoneがW-CDMA/GSM方式、qbがW-CDMA方式、BeelineがGSM方式、CooTelがMcWiLL方式を使用している。CooTelのMcWiLL方式は対応端末が少なく、またSIMカードを採用していない。そのため、CooTelは端末の販売だけではなくレンタルも用意している。手持ちの端末がSIMロックフリーでない場合はCooTelのスマートフォンをレンタルしてテザリング機能を活用するような使い方もできる。返却の手間はかかるが、日本から持ち込む端末がSIMロックフリーでない場合など、状況に応じてCooTelのレンタルを選ぶのも良いだろう。
プリペイドSIMを購入してSIMロックフリーの端末で使用する場合はCooTel以外を選ぶことになる。BeelineはGSM方式のみであり、快適な通信は期待できない。SIMロックフリーの端末の多くは2.1GHz帯(Band I)のW-CDMA方式に対応しており、2.1GHz帯のW-CDMA方式を利用できるSmart、Cellcard、Metfone、qbから選べば問題ないが、SmartはLTEサービスを利用できるため、高速な通信を利用できる。そのため、筆者はSmartのプリペイドSIMを選択した。
▼プノンペン国際空港の手荷物受取所には移動体通信事業者が広告を出している。
▼プノンペン国際空港ではExcellを除いたすべての移動体通信事業者のブースが連なっており、プリペイドSIMを購入しやすい。
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Smartは2014年1月22日に、カンボジアで最初にプノンペンでLTEサービスを開始し、後にシェムリアップもLTEサービスの提供エリアとした。LTEサービスはプリペイドSIMでも利用できる。世界のLTEサービスで最も多く採用されており、端末の流通量も多い1.8GHz帯(Band 3)のFDD-LTE方式を使用しているため、、SmartのLTEサービスを利用できる端末も多くなっている。
SNSへの画像のアップロード、動画の視聴、テザリング機能を用いたパソコンの利用など、高速な通信環境が求められる場合はSmartのLTEサービスが役に立つ。プリペイドSIMで手軽にLTEサービスを利用できる点は、出張や旅行などでカンボジアを訪問する外国人にとってありがたい存在と言える。
▼プノンペン市内ではSmartの4G LTEを宣伝する広告が多く見られる。
Smartが提供する「USD 5 SIM」がLTEサービスを利用できるプリペイドSIMで、その名の通り販売価格が5米ドルとなっている。カンボジアでは米ドルが通用するため、プリペイドSIMやチャージの購入は米ドルで支払える。現地通貨のカンボジアリエルも流通しているが、筆者は米ドルのみで過ごした。釣り銭がカンボジアリエルとなる場合はあるが、あえてカンボジアリエルを用意する必要はない。
USD 5 SIMには5米ドル分の初期残高、10分の無料通話、10件の無料SMS、1.5GBの無料データ通信が含まれており、有効期限は40日である。開通作業などはブースのスタッフが行ってくれるため、利用者側は身分証明書としてパスポートを提示するだけで良い。
APNは任意のAPNで問題ないため簡単に利用できる。なお、残高の確認は*888#、電話番号の確認は*887#、残りのデータ通信容量の確認は*093*0#、BBMの残りのデータ通信容量の確認は*081*888#、残高のチャージは*888*PINコード#である。
USD 5 SIMは海外からカンボジアを訪問する外国人向けとの位置づけの「Traveller SIM」の一つとして用意されている。なお、Traveller SIMにはUSD 5 SIMの他に「Free SIM」も存在しており、こちらはLTEサービスを利用できないため、注意が必要である。
▼プノンペン国際空港のブースではLTEサービスを利用できるUSD 5 SIMの案内が掲載されている。
▼SmartのプリペイドSIMと台紙。
▼プリペイドSIMを購入すれば電話番号や各種残高の確認方法を記した紙を渡してくれるので、旅行者にとってはありがたい。
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USD 5 SIMはTraveller SIMであることから、プノンペン国際空港とシェムリアップ国際空港のブースのみで取り扱っており、それ以外の販売店では購入できない。空路で入国してプリペイドSIMを購入する場合は、到着時に空港で購入することを推奨する。空港のブースは外国人がメインターゲットで市内の販売店より外国人客の扱いに慣れているため、購入の手続きがスムーズに進められるという利点もある。
初期残高やデータ通信容量が不足しそうな場合はチャージすれば問題ない。チャージは市内の販売店でも受け付けている。筆者はデータ通信容量が不足しそうになったため、本社併設の販売店でチャージしてからデータパッケージを購入した。
▼Smartの本社や販売店が入る建物。チャージは空港のブース以外でも受け付けている。
▼Smartにはマスコットキャラクタが存在する。
プノンペン滞在中はSmartをメインとして利用したのであるが、プノンペン市内では概ね快適に利用できた。LTEサービスの提供エリアは市内中心部から順次拡大しており、行動した範囲ではLTEネットワークに接続されていることが多かった。帯域幅は5MHz幅と10MHz幅と15MHz幅であり、場所によって帯域幅が異なっている。大半は10MHz幅で展開されているが、本社併設の販売店を含むSmartの本社内は15MHz幅となっている。カンボジアでは1.8GHz帯をGSMサービスでも使用しており、LTEサービスで利用できる帯域幅が限られているが、屋内の一部など帯域幅を広げられるエリアから順次帯域幅を広げているという。15MHz幅でLTEサービスを提供しているSmartの本社内では通信速度が下り100Mbps近く出ることもあった。
Smartの本社以外では基本的に10MHz幅となるため通信速度の理論値は遅くなるが、それでも通信速度や応答速度は実用的には十分であった。筆者が宿泊したホテルではホテルの無線LANよりもSmartのLTEサービスの方が快適で、プノンペン滞在中のインターネット接続はSmartのLTEサービスに頼ることになった。SmartのLTEサービスは非常に心強く、次にプノンペンを訪問する機会があるとすれば再びSmartのUSD 5 SIMを選ぶことは間違いないだろう。
▼本社併設の販売店において通信速度を測定した。下りは100Mbpsに近い速度を記録した。
▼本社併設の販売店にはカフェが併設されている。
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登録はこちら滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。