世界最大のメッセンジャーアプリ「WhatsApp」の月間アクティブユーザー（MAU）が8億人に達したことを同社のCEOのJan Koum氏が自身のFacebookに2015年4月に投稿して発表した。

WhatsAppはFacebookが2014年10月に買収完了した。買収発表時160億ドルだった買収額は約183億ドルに膨らみ、従業員引き止めのための制限付き株（RSU）も含めると総額218億ドルを超えたという、破格の買収額である。

FacebookがWhatsAppの買収を発表した2014年2月のMAUは4億5,000万人、買収を完了した2014年10月のMAUは6億人、2015年1月に7億人を突破。そして2015年4月に8億を突破した。

WhatsAppはFacebook傘下であるが、Facebookには自社のメッセンジャーアプリ「Messenger」があり、同サービスは2015年3月、MAUが6億人であることが明らかにされた。WhatsApp、Messengerは世界中で利用されている。世界中で多くの人がWhatsAppとMessengerの両方を使っており、相手に応じてアプリを使い分けている。

日本ではメッセンジャーアプリといえば「LINE」が有名である。LINEは2015年4月に業績発表を行った際に、グローバルでのMAUは約2億5,000万人となったことを発表した。また日本、タイ、台湾、インドネシアの4つの国・地域においてはLINEがトップシェアとしており、この4市場合計のMAUは約1億2,300万人と半数を占めており、市場の偏りが大きいサービスである。LINE株式会社の2014年通期売上額は863億円（そのうち基幹事業であるLINE事業が774億円）である。全世界で2億5,000万人の利用者がいても、863億円しか売上がない。単純に比較することはできないが、通信事業者NTTドコモの利用者は日本国内のみで約5,000万人だが、2014年度の売上高は4兆3,833億9,700万円である。

メッセンジャーアプリはそれ自身では全く儲からない。そもそもアプリ間での通話、テキストが無料であるのが基本であるからそこからの儲けは期待できない。WhatsAppは2年目以降99セント徴収される仕組みのビジネスモデルである。しかし、2014年10月にWhatsAppの財務状況を初めて公表し、2014年6月30日までの6ヵ月間で、WhatsAppは1,592万ドルを売上げ、2.3億ドルの損失を出していることを明らかにした。

LINEや中国のWeChatなども売上はゲームやスタンプであり、メッセンジャー自体からは収益を上げていない。ゲームやスタンプは常に新しいサービスを投入し、ユーザーを惹きつけておかなければならない自転車操業である。

WhatsAppはゲームやスタンプの提供もしていない。広告配信もしていない。それでも世界中で利用者が拡大しており、これからもWhatsAppの利用者は拡大していくことだろう。しかし収益が大きく好転する見込みはない。WhatsAppはこれからどうするのだろうか。そしてFacebookは自社の中でMessengerとどう棲み分けをしていくのだろうか。

【参照情報】
・Jan Koum氏のFacebook
・LINE：2015年1-3月期、業績についてのお知らせ