イギリスは放置プレイが大好きな国であります。
俺は俺、お前はお前、お互い迷惑かけない限り、放置プレイで行きましょうや、だって俺たち大人だし他人同士だもんね、という考え方が根底にあります。
ですから、好き嫌いの激しい人に「これを食べないと病気になる」といって偏食を直したり、友達がいくら変な格好をしていたからといっても、何もいわないのです。
だから酷い格好の人が多いのです。
でも本人の選択だから、どうしょもありません。選択の責任は本人であります。死ぬのも本人の責任、変な格好だから殴られるのは本人の責任。大人だから当たり前です。
いちいち人様に注意するのも面倒です。イギリス人は無駄な労働が嫌いですからね。注意したり世話を焼くのも労働です。そんな暇があったら鼻くそを掘りながら酒を飲んでいたいんですよ。
一方、イギリスの元植民地アメリカは、放置プレイが嫌いです。親切な人が多いので、手助けをするのが大好き。変な考え方の人は直してあげましょう、ダメな国には軍隊派遣して、爆撃して、枯れ葉剤撒いて、とにかく、徹底的に修正してあげましょう、という国であります。
ああ、なんと親切なお国でありましょう!さすが世界一の大国であります。ビバ、マイアメリカ。
こんな記事を読むと、アメリカとイギリスの違いがなんとなくわかります。
Ivan Massow: My gay escape from US Christians trying to 'cure' my homosexuality
これ、俺はゲイです!と公表しているIvan Massowさんという大金持ち起業家が、アメリカのキリスト教原理主義団体がやっている「ゲイ矯正イベント」に参加した時の経験を書いた記事です。こういう団体は「ゲイは病気だから直さないといけない!俺が直してやる!!!」という熱い心を持っているんですよ。親切でいいですね。
このイベントは、同性愛を直したい人が合宿し、一週間に渡って聖書を読んだり、ゴッドの素晴らしさについて語り合ったり、体験を話し合ったりして「同性愛を直す」んであります。
で、参加者はこんな感じです。
Ivan さん、治療を受ければ受けるほど、自分がゲイであることの自覚が強くなって、最終日は「くそくらえ」という気持ちでお迎えになったそうであります。
イギリスでも60年代はゲイであることは犯罪で、80年代までは隠している人が多かったのですが、今ではオープンでも特に問題がありません。多すぎるので別に珍しくも何とも思われないという感じでしょうか。
ゲイでもホモでもオカマでもレズでも勝手にやってくれよ、俺は忙しいから鼻くそ掘りながら酒飲んでるから、という感じです。イギリス人は他人が何やってようとどうでもいいんですよ、自分と酒飲むことにしか興味ないから。
でもまあ、外国ではゲイは悲惨なんだぜ〜という事情には興味がある人がいるらしく、外国のゲイ悲惨事情を紹介する番組は放送されていたりします。
こちらはゲイと公表しているDJの方がウガンダで同性愛を直す治療に参加する、という嫌がらせのような番組です。(イギリス人はほんとに晒すのと嫌がらせが好きでありますね)ウガンダってゲイは死刑なんですよ。この人は死刑にならなかったんですけど。
アメリカでゲイ矯正キャンプに反対運動を繰り広げる方々のことも時々紹介されています。イギリス人にとっては、こういう矯正キャンプがあったり、反対運動をやる人達がいるということが、「謎の国アメリカ」状態なわけなんですよ。イギリス人にとっては動物園みたいな感じなんじゃないですかね。
まあこういうアメリカ人のしつこい親切さとか、他人にかまってしまう態度と、他人には投げやりな態度のイギリス人の態度というのは、同じ言葉を喋っているにも関わらず、日本人と中国人の違い以上に溝が大きいなあと思うのであります。
こういう違いが、通信サービスの設計や、携帯電話事業のカスタマーサービの違いに出ていたりするので面白いんですが。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。