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労働時間が長いほど貧乏という矛盾

2013.10.14

Updated by Mayumi Tanimoto on October 14, 2013, 04:22 am JST

日本ではサービス残業やブラック企業が話題にならない日がありません。ブラック労働とはほど遠いマターリ生活を送っているワタクシにも先日朝日新聞さんからブラック特区に関する取材がありました。

ワタクシはパリのカフェで茶をしばいておりましたが、隣にいた家人が「レストランガイドの取材じゃないのか?はあ?また働き系の取材?日本は本当に仕事とか働くとか、仕事に関係することが大好きだな...」と驚愕しておりました。

日本では働くことばかり考えている人が少なくない様ですが、世界では労働時間が減っています。OECDの報告書を見ますと、ほとんどのOECD諸国では1990年以後労働時間が減っています。日本でさえ労働時間が減っているのです。

労働時間が最も長いのはギリシャで、年に2,000時間近く働いています。面白いのは、欧州に関しては経済状況がよろしくないギリシャやイタリア、スペイン、ポルトガルは労働時間が長いという点です。(それでも日本や韓国の比ではありませんが)一方、最も労働時間が短いのはドイツで年に1400時間しか働いていません。北欧諸国も労働時間は短いです。

ドイツや北欧諸国の労働時間が短い理由は生産性の高さです。ドイツの生産性はギリシャより70%も高いのです。ドイツは欧州の優等生です。つまり、短く集中して働くと、生産性は高く、良いアウトプットを産むことが可能で、金持ちになることができる、ということなのかもしれません。

労働時間の長さと生産性の相関性は、実はかなり長い間議論されています。ドイツで1913年に出版されたPsychology and Industrial Efficiencyという論文は、ドイツの工場における労働時間と生産性についての研究です。労働時間が長くなるほど生産効率は落ちる、という結果は、生産ラインの設計に大きな影響を及ぼしました。

ニュージーランド政府の調査でも、労働時間の短さと生産性の高さが証明されています。ニュージーランドは他のOECD諸国よりも労働時間が15%長かったのですが、アウトプットは20%少なかったのです。ちなみに、この調査、ニュージーランドの労働者はオーストラリアよりも低い、という結論をだしています。

北九州大学が日本の医療労働者を対象として実施した調査でも同じ結果が出ています。労働時間が短いほど生産性は高く、労働の質が高いのです。

日本ではウイークデーの夜10時とか11時過ぎに延々と新製品情報や会社情報など、「こんなもん誰がみてんだろ」というつまらないニュースを延々とやっています。

休む時間、寝る時間にも仕事のことを考えている。夜10時とか11時過ぎにネジとかどうでもいいロボットの話です。夜10時というのはネジのことを考えるのではなく耳くそを掘る時間です。

そういうニュースをみることをやめて、さっさと寝れば職場でダラダラ仕事をすることも減るかもしれません。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。