○2010年10月末時点の携帯電話ユーザー数と固定電話ユーザー数が中華人民共和国工業和信息化部(中国情報産業部、以下簡名称:工信部)から発表された。最新の市場状況と、伸び悩む3G市場活性化に向けた三大キャリアの取り組みについて紹介する。
発表によると携帯電話総ユーザー数は8.42億人で、固定電話ユーザーが3.00億人とのことであった。
▼中国通信市場推移
中国編第1回でも指摘したとおり、やはり携帯電話ユーザーは順調に伸び続け、固定電話ユーザーは徐々にその数を減らし続けていることが改めて確認できる。特に、移動体電話の伸びについては、2009年末から2010年6月までの半年の増加が600万人だったのに対し、2010年6月から10月の4ヶ月で3700万人の増加となっており、成長が加速している。
また、時期を同じくして工信部より3Gユーザー数は3,864万人と発表され、中国移動(チャイナ・モバイル)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)、中国電信(チャイナ・テレコム)のモバイル通信キャリア3社のユーザー数内訳も発表された。
▼2010年10月 3Gユーザー数(単位・万人)※カッコ内はシェア
2010年上半期の2925万人であったことに比べると、通信キャリア3社ともに3Gユーザー数を伸ばしてはいる。
しかし、冒頭で紹介したとおり、携帯電話ユーザーの総数が8.4億人であることを考慮すると、市場全体での3G携帯電話普及率はわずか4.6%と、まだまだ低い水準に留まっていることがわかる。
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3Gユーザーの数が伸び悩んでいる現状を見て通信キャリア3社が指を加えて眺めているだけではないことは以前もお伝えしたが、最近の各社の施策として目立つのが、低価格端末の推進と2年縛りの通信契約の推進である。
低価格端末に関しては中国編第3回でもお伝えしたのでそちらを参照していただくとして、2年縛りの通信契約について少し例をあげてみたい。
▼中国聯通が提供する2年縛りの"データ通信重視"タイプ
▼中国聯通が提供する2年縛りの"通話重視"タイプ
上の画像は中国聯通が推進する一般的な2年縛りの契約形態における料金表であり、モバイルインターネットなどのデータ通信に重きを置くAタイプと、通話を重視したBタイプとに分かれている。例えば、同じ月額66元のプランでも、Aタイプでは最大データ通信量300MB+国内無料通話50分に対し、Bタイプでは最大データ通信量60MB+国内無料通話200分となっている。
筆者自身は中国聯通Aタイプ(データ通信重視)の66元/月(最大データ通信量300MB)を契約しているが、主に出張や外出時のマイクロブログやインターネットでのニュース閲覧などの利用に留まるため上限を超えたことは1度くらいしかない。
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この2年縛りの契約を応用した"0元で端末を入手"というのもよく行われている施策であり、実際に中国聯通がメイン端末として販売を推進しているiPhone 4やレノボの楽Phoneなどにも適用されている。
▼iPhone 4を0元で入手、という広告
▼こちらはレノボ楽Phoneを0元で入手、という広告
ただ、0元で入手といっても当然ながら本当に0元で入手できるわけではなくiPhone 4で1ヶ月286元の2年契約、レノボ楽Phoneで1ヶ月186元の2年契約を最低でも締結しなくては0元で入手することはできない。
しかし、よほどのデータ通信か通話のヘビーユーザーでない限り、先に述べたように、筆者が契約しているような1ヶ月66元の契約で事足りる。例えば楽Phoneを利用し、かつ月額66元のデータ通信重視型契約をする場合、初期費用として2199元を支払えばよい。2年間の合計費用を比較すると、0元で入手の方が681元ほど割高となってしまう。よほど初期導入費を安く済ませたいなどということがない限り、長期的に見ると0元での入手はほとんどの場合割高になってしまうのが現状である。
また、中国人の平均的な携帯電話買い換えサイクルは、約15ヶ月程度で、年代別にみて一番長いサイクルの51歳以上でも2年に達していないという調査結果もある(参考記事)。「2年縛りでも初期費用0元」が(実際には割高だとしても)はたしてどこまでお得感を演出できるかが今後の鍵となるであろう。
2010年第3四半期のモバイルインターネットユーザー数は前期比約3,000万人増の2億4,315万人となり、今後ますます増加していくことが見込まれている。中国聯通に限らず中国移動や中国電信でも同様に実施されているデータ通信重視型の2年縛りの契約はその数を伸ばしていくであろうことが予測される。
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そしてもう1つ、低迷する3Gユーザーの伸びに対する打開策と有望視される施策が政府から発表された。
それは日本では2006年から開始されたナンバーポータビリティ(MNP)である。これは10月22日から天津と海南の2地域のみに限定され、且つ試行段階ではあるため適用されるキャリアやサービスなどに制限があるのだが、今後時期を見て本格運用及び中国全土への展開が期待される。
以前の記事で紹介したとおり、2Gユーザーが3Gに移行しない理由の1つとして「電話番号が変わってしまうから」が挙げられているが、これを解消する非常に有効な施策である。
しかし当然ながら、中国移動(2G)から中国聯通(3G)へとキャリア替えを行っても携帯電話番号は引き継がれるため、2Gユーザーを5億人超かかえる中国移動にとっては手放しで喜べる話しではない(参考記事)。
日本でMNPが実施された際は、当時の最大キャリアであったNTTドコモからその他通信キャリアへ多くの顧客が流出した。中国移動にとっては、今後、同じ轍を踏まないための差別化戦略が必要であろう。逆に中国聯通と中国電信にとっては、大きなビジネスチャンスであり、この機会に一気にユーザーを獲得するための施策を打ってくることが予測される。
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