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クラウドへ昇るJava。シンガポールにAmazonのデータセンター

2010.05.10

Updated by WirelessWire News編集部 on May 10, 2010, 11:40 am JST

先月、セールスフォース・ドットコムとVMwareが共同で大きな発表を行うという予告が行われてから、両者がどのような発表を行うのか、IT業界で話題になっていました。

4月28日に両者が発表したのは「VMforce」。クラウドとして提供されるJavaアプリケーションの実行環境です。Springフレームワークに対応し、Force.comのリレーショナルデータベースを利用できるため、既存のJavaデベロッパーのスキルを活かした開発が可能になります。

運用をクラウドにまかせられるため、データのバックアップ、障害時のフェイルオーバーやディザスタリカバリ、スケーリングなどは自動的に行われ、気にする必要がありません。

セールスフォース・ドットコムのCEOマーク・ベニオフ氏は「600万人ものJavaデベロッパーがいて、多くのエンタープライズアプリケーションがJavaで開発されているにもかかわらず、これまでJavaデベロッパーはクラウドと切り離されていた」と発言し、「The Trusted Cloud for Enterprise Java Developers」(エンタープライズJava開発者のための信頼できるクラウド)、それがVMforceだとしました。

エンタープライズにフォーカスしたJavaクラウド

VMforceの技術的な特徴は、ローカルで開発したJavaアプリケーションをクラウド上にデプロイできることです。Springフレームワークに対応し、Force.com のデータベースにアクセスでき、またForce.comのほかの開発プラットフォームの機能も利用可能です。

▼VMforceの仕組み。VMware vSphereで構築されたクラウド上にSpringフレームワークを乗せ、Javaアプリケーションを稼働するようにしている。デー タベースはForce.comのものを利用する。(VMforce発表イベントのストリーミング映像より)
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Javaのクラウド環境はすでにグーグルがGoogle App Engine/Javaで提供していますが、データベースがキーバリュー型データストアであるため、Javaデベロッパーは新しいデータストアについて学習が必要で、また、既存のJavaアプリケーションの移植はほとんどの場合書き直しになってしまいます。

VMforceは、今日の説明を聞くかぎりSpringフレームワークの上で標準的なJavaプログラミングができ、データベースがForce.comのリレーショナルデータベースだという点が大きな特徴で、既存のJavaデベロッパーのスキルをほぼそのまま活かすことができそうです。エンタープライズアプリケーションにフォーカスしたJavaデベロッパーのためのクラウド環境、という説明はVMforceの特徴を的確に表しているといえます。

VMforceは今年中に開発者向けの評価版が公開され、価格なども発表される予定です。

シンガポールにAmazonデータセンター開設

4月末に飛び込んできたもう1つの話題はAmazonのデータセンター。Amazonはいま米国に2カ所、ヨーロッパに1カ所のデータセンターを稼働させています。4月末に同社にとってアジアで最初のデータセンターがシンガポールにオープンしました。

日本からAmazonクラウドを利用する場合には、これまで米国のデータセンターを太平洋を経由して利用するしかなかったため、レイテンシが大きいことが課題でした。シンガポールにデータセンターが設置されたことで、このレイテンシが小さくなることが期待され、さっそく何人かの利用者がPingによってレイテンシの計測を行っています。

その結果、あるユーザーからは米国西海岸に対するレイテンシの約半分程度、80ms程度と報告がある一方で、別のユーザーからは米国西海岸とほぼ同等の190ms程度との報告もありました。どうも利用しているプロバイダなどによる経路の違いがレイテンシを左右しているようです。ただし、Webサイトの速度の指標としてレイテンシだけではなくバンド幅なども考慮すべきであり、そのため、今後シンガポールを利用して実稼働しているWebサイトの登場によって、実際の応答速度などの違いが徐々に認識されていくと予想されます。

さて、Amazonは今年の後半にはアジアでもう1カ所、データセンターを立ち上げるとしています。それは東京ではないかというのがもっぱらの噂で、期待が集まっています。

文・新野淳一(ブログ「Publickey」 Blogger in Chief)

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