Gary Burrell氏と高民環 (Min H. Kao)氏が創業したガーミン(Garmin)社は航空機や船舶向けの産業用をはじめ、乗用車向けのカーナビなどで使われるGPS機器の大手メーカーだが、ここ数年、株価の低下に苦しんでいる。そんな中、アメリカで6月初旬、自ら電話機事業に参入し、T-Mobile向けにGPSスマートフォンを投入したのだが、売れ行きが芳しくないようだ。投資銀行Morgan KeeganのアナリストであるYair Reiner氏の調査では、発売から1ヶ月の販売台数は2万台程度であろうとのことだ。
Garminfoneと名づけられた電話機のサイトには、「あなたの暮らしをナビゲートするスマートフォン(the smartphone that navigates your life)」と書かれており、2年契約で199.99ドル(1ドル=87.52円換算では約17,503円)と表示されている。
ハードウェアは台湾のエイサー(Acer)製でOSはAndroid。特徴はGPS関連機能で、GoogleMapのみならず、ガーミンのGPS機器で使われている地図データが搭載されており、画面上や音声でナビゲートしてくれるし、交通情報、天気情報、近隣のガソリンスタンドの価格をリアルタイムで知らせてくれる。ディスプレーは3.5インチ。乗用車のダッシュボードに装着するマウントは標準装備。チャオ(Ciao!)という位置情報ベースの独自SNSや、ナビ音声を変更する機能もある。
ただし、GarminfoneのAndroidは1.6なのだ(NTTドコモのXperiaと同じ)。Googleが5月にAndroid 2.2(FroYo)を発表しており、Android 2.1のスマートフォンでも同程度の金額で買えるこの時期に、なぜ1.6の新製品かというと、ガーミン社にとってこれまでドル箱であった地図情報が高いため、スマートフォンの本体のコストを抑えるためなのではないかとも言われている(単純な比較はできないが、日本で売られている同社のGPS専用の日本語地図は、マイクロSDカード版が2万円程度で販売されている)。また、T-mobileが、ソフトウェアの安定性を重視した決断だったという説もある。いずれにせよ2年契約でありながら、最新のAndroidの機能を必要とするソフトウェアを使えない。
AP通信のレビューでは、キャンプに出かけるためのドライブでGarminfoneを試用したことが紹介されている。GPS機能は十分で電話の音声品質もよかったが、カメラ機能や音楽再生機能に不満があること、見た目が最新のスマートフォンほどスタイリッシュでないことを挙げ、「電話付きGPSとしては優れているが、スタイルに欠ける」と評している。
ガーミンは2008年にはAT&T MobilityからGPS機能を備えた多機能携帯電話「nuvifone」を出しているが、こちらの売れ行きも期待外れのようだ。スマートフォンの普及で、GPS専用装置の市場は縮小すると見られており、米国GPS業界ナンバーワンのガーミンの株価は2007年10月の119.40ドルをピークに現在は29ドル程度にまで下がっている。
【参照情報】
・Garminfoneサイト(T-Mobile)
・nuvifoneサイト(Garmin)
・Garminphone Sales Sluggish at T-Mobile - Analyst -cellular-news
・Garminfone Sales Sluggish? -TmoNews
・Analyst: T-Mobile struggling to sell Garminfone -FierceWireless
・Review: Garminfone gets you there, but lacks style -The Associated Press
・GARMIN 日本版マップソース(いいよねっと)
・急成長するスマートフォンのナビ市場にPNDベンダーが急接近 -WirelessWire News
・GPS のGarmin、iPhoneのような多機能携帯「nuvifone」を発表 -マイコミジャーナル
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