イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究プロジェクトが、生物分解可能な電子部品の研究を行っている。近い将来、水などに溶けてしまうデバイスが実用化されるという。
携帯を水没させた経験がある人にとっては、電子部品が水に溶けるなど論外と思えるかも知れないが、かと言って携帯電話を25年も50年も使い続けたいと思っている人もいないだろうというのが研究者たちの考えだ。環境に優しく、応用範囲も広い。例えば医療分野では、一定期間しか使わない体内の診断用センサーや治療用機器を体内に埋め込むのに使うと、取り出すための手術は不要になる。
研究者たちはこの技術を「トランジェント・エレクトロニクス(一時的な電子機器)」と呼んでいる。携帯電話機そのものが何年か経過したら筐体もろとも消えてなくなるというものではなく、中の部品をゴミにせずに、溶かして自然に返すことができるという技術だ。すでにこの技術を使ってトランジスタ、ダイオード、温度センサー、光検出器、無線発振器、アンテナなどのほか、太陽電池や簡単なデジタルカメラまで試作されているという。基本的にシリコンが原料のようだが生体適合性があり、極度に薄く作られている。マグネシウムや酸化マグネシウムの水溶性の導体や誘電体も使われているらしい。
医療用のほか、化学物質などが流出した地域にワイヤレスの環境センサーにとして多数配置する、消費者家電の部品に採用し、耐用年数が来たら溶かしてしまうといった用途が考えられるという。適用分野に応じて必要な寿命が異なるので、それぞれについて個別の設計が必要になるようだ。
この研究はアメリカのDARPA(国防高等研究計画局)がサポートしているとのこと。
【参照情報】
・Next up: Environmentally safe electronics that also vanish in the body<イリノイ大学のニュースリリース>
・Researchers Developing Self-Destructing Gadgets and Chips
・Developing self-destructing mobile phones
・Self-Destructing Electronics Are on the Horizon
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