ディープラーニング技術で時系列データを高精度に分類 富士通研究所が開発
2016.02.17
Updated by Asako Itagaki on February 17, 2016, 06:58 am JST
2016.02.17
Updated by Asako Itagaki on February 17, 2016, 06:58 am JST
富士通研究所は、振動が激しく人による判別が困難な時系列データに対して、高精度な解析を可能とするディープラーニング技術を開発した。既存手法と比較して、人の運動行動の分類においては25%、脳波からの状態推定では20%の精度向上を達成している。
機械学習の分野で、データから自動的に物事を解釈・判断するための特徴要素を取り出すディープラーニング技術は、画像、音声などで極めて高い認識精度を達成しているが、適用分野が限られているという課題がある。特にセンサーなどのIoT機器から得られる時系列データは、人の目でも判別が難しいほど振動が激しく、自動的に分類することは困難だった。
富士通研究所が開発した技術では、まず、カオス理論を用いて、時系列データを図形に変換する。センサーにより観測されるデータの時間変化をグラフ上にプロットすることで描かれる軌跡を「運動の仕組み」を表す図形(アトラクタ)として区別できるようになる。
次に、位相幾何学にもとづくデータ分析手法の一つであるトポロジカル・データ・アナリシスを用いて得られた図形の特徴を数値化し、ベクトル表現に変換する。最後に、得られたベクトル表現を学習する畳み込みニューラルネットワーク(ベクトルデータを入力データとして特徴を抽出できるニューラルネット)によって、複雑な時系列データの分類が可能となる。
▼本技術による時系列分類イメージ(報道発表資料より)
精度については、ウェアラブル機器に搭載されたジャイロセンサーの時系列データをもとに、人の運動行動の分類を行う「UC Irvine Machine Learning Repository」のベンチマークテストにおいて、既存手法に比べて約25%精度が向上し、約85%の精度を達成した。また、脳波の時系列データからの状態推定を行う分類においては、既存手法に比べて約20%精度が向上し、約77%の精度を達成した
振動が激しい時系列データもディープラーニングで扱えるようになったことで、例えば工場設備の異常検知や故障予測を高精度に予測したり、バイタルデータ分析による診断・治療支援などの、人工知能による高度化が期待される。
富士通研究所は、時系列データの分類技術のさらなる高精度化を進め、富士通のAI技術「Human Centric AI Zinrai」のコア技術として本技術の2016年度中の実用化を目指す。また、画像・音声・時系列以外のデータへのディープラーニング技術の適用拡大を進める。
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。