original image: © Worawut - Fotolia.com
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「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるイグ・ノーベル賞は、サイエンス・ユーモア雑誌「風変わりな研究の年報」の編集者 マーク・エイブラハムズ氏により1991年に創設された(「イグ・ノーベル賞について」)。
共同スポンサーは、ハーバード・コンピューター協会、ハーバード・ラドクリフSF協会、などで、毎年9月から10月に米国ハーバード大学のサンダース・シアターで授賞式が行われる。
今年も9月13日に、長野県駒ケ根市にある昭和伊南総合病院の内科診療部長兼消化器病センター長である堀内朗氏が、「座位で行う大腸内視鏡検査 自ら試してわかった教訓」という論文で医学教育賞を受賞し、日本人が連続12年受賞という栄誉に輝いた(2018年イグ・ノーベル賞受賞者)。
紙飛行機を投げて始まることで有名な授賞式の様子は、YouTubeで見ることができる(The 28th First Annual Ig Nobel Prize Ceremony (2018))。堀内氏の受賞とスピーチは45分20秒あたりから。
創設以来28年間の間に、日本人が何らかの賞を24回受賞している。1991年から1994年の最初の4年間は、授与された賞の数が7件から11件と一定していないが、1995年以降は毎年10件の賞が授与されている。
これまでの累計で277件の賞が授与され、そのうちの24が日本人、あるいは日本人グループに与えられている。日本人の受賞結果一覧がウィキペディアに掲載されている。
ノーベル賞とは異なり、医学賞や物理学賞のようにジャンルが決まっているわけではなく、その時々に合ったテーマやジャンルでの賞が設定されるので、どの賞で何人というような単純な比較はできないし、受賞者の数も決まっていないようなので、人数での比較は難しい。
とはいえ、受賞者の国籍という観点は妥当であり、日本人の受賞が全体の約8.7%というのはなかなかの数字ではなかろうか?
「ユダヤ民族の自負 ノーベル賞受賞者大通り」という記事でも紹介したが、1901年から2017年の間に授与されたノーベル賞923件のうち、20%をユダヤ人が受賞している。これとの比較で、イグ・ノーベル賞をどれほどユダヤ人が受賞しているのか調べようと思ったのだが、さすがにXX系ユダヤ人というところまでは分からなかった。
ただ、企画運営するマーク・エイブラハムズ氏によれば、受賞者の出身国は日本とイギリスが最多だという。どちらの国にも王室(皇室)があるように、歴史に裏打ちされた伝統と文化のある国である。「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」というのは、経済基盤に裏打ちされたゆとりに加えて、伝統・文化があるところに生まれるのではないだろうか。
ビジネスの世界では、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)という4強が、我々の日常生活への大きな影響力を持ち、その裏には常にイスラエル(ユダヤ人)のイノベーションが見え隠れする。しかしイノベーションは、一般に理解されている「技術革新」だけではないのだ。
実際、シュンペーターは、
・新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
・新しい生産方法の導入
・産業の新しい組織の創出
・新しい販売市場の創出
・新しい買い付け先の開拓
といった分類をした。
イノベーションとは、技術だけではない「新機軸」であり、「新しい価値の創造」なのである。経済的な発展につながる「技術革新」だけではなく、「考えさせてくれる研究」から生まれる「新しい価値の創造」が日本からどんどん生まれることを期待したい。
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登録はこちらNTT武蔵野電気通信研究所にて液晶デバイス関連の研究開発業務に従事後、外資系メーカー、新規参入通信事業者のマネジメントを歴任し、2007年ネクシム・コミュニケーションズ株式会社代表取締役に就任。2014年にネクシムの株式譲渡後、海外(主にイスラエル)企業の日本市場進出を支援するコンサル業務を開始。MITスローンスクール卒業。日本イスラエル親善協会ビジネス交流委員。E-mail: hitoshi.arai@alum.mit.edu