photo by 佐藤秀明
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夕立が1時間で降り止む理由
梅雨の後半や台風シーズンになると、土砂降りの雨が何時間も続き、ときには雷を伴うこともある。このように長く降り続く大雨のことを「集中豪雨」という。
この土砂降りの雨をもたらすのは、雷雲とも呼ばれる積乱雲である。積乱雲は強い上昇気流によって発生する、とても背の高い雲である。雲の正体は小さな水や氷の粒であり、氷の粒が水蒸気を取り込んで雪の結晶として成長したり、水の粒同士でぶつかって大きくなったりすると、そのうち落下する。これが雨や雪である(なお、雪が落下の途中にとけると雨になる)。積乱雲は背が高く、雲のてっぺんから底までの距離が長いので、落下する間に雨粒が大きく成長しやすい。だから、土砂降りの雨が降るのだ。
ちなみに、夕立も集中豪雨も、積乱雲によるものだ。しかし、夕立は30分から1時間程度でやむのに対し、集中豪雨は何時間も降り続く。この違いはいったい何なのだろうか。
実は、ひとつの積乱雲の寿命は30分から1時間程度である。これは、積乱雲は強い上昇気流によって発達するが、雨が降りだすと雲の中に下降気流が発生し始め、これが上昇気流を打ち消すからだ。上昇気流がなくなれば雲が発達できなくなり、消えてしまう。夕立の雨が30分から1時間ほどでやんでしまうのは、ひとつの積乱雲の寿命がそのくらいの時間だからなのだ。
集中豪雨はなぜ起こる?
積乱雲の寿命は短いはずなのに、集中豪雨はなぜ長時間続くのだろうか。それは、寿命が短いはずの積乱雲が、同じ場所で発生し続けるからである。例えば、地表付近を吹く暖かく湿った風が、山に向かって吹き続けた場合、同じ場所で上昇気流が発生し続ける。すると山の斜面では積乱雲が発生し続け、大雨が続く。
もしくは、積乱雲のもととなる地表付近の温かく湿った風と、積乱雲を動かす上層の風が同じ方向に吹いているとする。最盛期を迎えた積乱雲から冷たい下降気流が吹き出し、それが温かく湿った風と出会うと、暖かく湿った空気が上昇して、あらたな積乱雲ができる。そして、もともとそこに存在していた積乱雲は、上層の風に流されて移動する。すると、上空の風が吹く方向に積乱雲が列をなして並んだような状態になり、同じ場所で積乱雲の雨が降り続きやすいのだ。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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