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「ご近所付き合い」を支えるデジタルサービス

2024.10.03

Updated by WirelessWire News編集部 on October 3, 2024, 13:48 pm JST

「うちのマンションの入り口に着いたら、このQRコードを見せてね。私の方のアプリで承認するから」

インドに住んでいると、頻繁にインド人の友人や同僚の家に招待される。インド都市部の大型高層マンションに住む友人の家を訪問すると警備員が常駐しており、最近はどのマンションでもアプリを用いて入館手続きを行う。以前は、訪問者の名前と連絡先をノートに書き、警備員が居住者に電話する、という流れだったが、アプリのおかげで手続きがかなりスムーズになった。インド都市部の中間層や富裕層が住む大型マンションでは、このような入館管理からマンション内のコミュニティ活動まで、アプリが大活躍している。今回は、インド都市部の住宅事情と、「ご近所付き合い」を支えるデジタルサービスについてシェアしていく。

インドの都市部に林立するタワーマンション

2023年に、中国を抜いて世界人口1位となったインド。現在でも人口の約7割は農村部に暮らしている一方で、都市部への人口流入、人口集中も著しい。インドの都市部では、中心部から郊外まで、高層、大型マンションが次々と増え、中間層や富裕層にとって一般的な住宅となっている。

こうした大型マンションは「Gated Apartment」または「Gated Community」と言われる集合住宅で、複数棟のタワーマンションが壁や境界の壁やフェンスで囲まれ、入口は常駐の警備員によって出入りが常に管理されている。敷地内には、居住者用の様々な施設(スポーツジム、プール、体育館、集会場、公園、食料品店、クリーニング店など)が揃い、居住者は入居期間中に一定の管理費用を支払うことで、こうした施設を利用できる。利便性を重視して、大型ショッピングモールに併設するかたちで開発されたマンションもある。

「マンション」「集合住宅」というよりも、「マンション複合施設」という方がイメージしやすいかもしれない。筆者の住むバンガロールでも、中間層や富裕層の多くがこうした大型マンションに居住している。

住人は「マイクロシティ」に住んでいる

筆者が住んでいるバンガロールは、「インドのシリコンバレー」と言われ、アジアで最も速く成長している都市のひとつであるが、人口の急激な流入に対して都市開発が十分に進んでおらず、交通渋滞が深刻な課題となっている。バンガロールは、以前は「ガーデン・シティ」と言われ、緑豊かな地方都市のひとつだったという。それが今となっては、IT都市となり、インド各地から人口が流入し、ニューヨークと同じ規模(約800平方キロメートル)にまで拡大した。

バンガロールやインドの多くの都市では、都市内での「マイクロシティ」化が進む。渋滞によって「移動にかかる時間、コスト」が大きすぎることを背景に、都市部内の各エリア(2-3km圏内)の中だけで、基本的な社会生活基盤(学校、病院、食料品、モール、レストラン街など)が揃っており、自分の生活圏は居住区の中だけで完結する、居住エリアから出ないという人が多い。それぞれの「マイクロシティ」で人々の生活が完結するように、公共施設や商業施設が出来上がっていく。

そして、先に述べた、インド都市部にある「複合型施設」のような大型マンションは、「マイクロシティ」より、さらに「マイクロ」な生活圏である。マンション内で生活必需サービスが揃い、インドの都市部ではデリバリサービスも発達しているので、居住者はマンションの中から一歩も出ずに、食料品の買い物からジム通い、運動など、あらゆる生活ニーズを満たせる。

筆者の周りでも、インド都市部の大型マンションに住む人からは、在宅勤務の日や週末は、マンションの敷地内から一歩も出ない、マンションの外に出るのは週に数回だけ、という声も多い。

バンガロールにある大型マンション Prestige Shantiniketan には、居住者用の大きなプールが併設されている。大型マンションの敷地内で時間を過ごす人が多いので、マンション内のコミュニティのつながりも強くなり、マンション住民を対象にしたデジタルサービスも増えている。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の前半部分です。
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