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WSJ報道:米アップルがiPhoneのCDMA版を開発か - AT&Tの独占契約に終止符?

2010.03.30

Updated by WirelessWire News編集部 on March 30, 2010, 22:40 pm JST

Wall Street Journalが米国時間3月30日付で"New iPhone Could End AT&T's U.S. Monopoly"という記事をWSJ.comに公開し、これを後追いする形でさまざまなオンラインメディアやブログがこの記事を参照した記事を出すなど、大きな話題を呼んでいた。

WSJ.comのこの記事は、2007年に結んだAT&Tとの独占契約が今年期限切れになるのに伴い、米アップル(Apple)がAT&TのGSM対応版の新機種のほかに、ベライゾン・ワイアレス(以下、ベライゾン)やスプリント・ネクステルが展開するCDMAネットワーク向けの別バージョンも用意しているのではないかという主旨のもの。実際に、台湾のOEMメーカー、ペガトロン・テクノロジー(Pegatron Technology Corp:和碩聯合科技)でCMDA版の製造が進んでいるという「事情に詳しい関係者」からの情報を載せている。従来のGSM版iPhoneは、ホンハイ・プリシジョン・インダストリー(Hon Hai Precision Industry:鴻海精密工業)というやはり台湾のOEMメーカーが受託生産している。

この記事については、徹底した秘密主義で有名なアップルはもちろんのこと、関係する携帯通信キャリア各社からも事実と認めるコメントが得られていない、いわゆる「とばし記事」の可能性も指摘されている。ただ、いっぽうでは、AT&TのiPhoneに対する依存度の高さや、アップルが複数キャリアへのiPhone提供を実施した場合の売上増加予測などについて具体的な数字が並んでいて興味深い。以下にその一部を列記しておく。

  • 米スマートフォン市場におけるAT&Tのシェアは43%超で、2番手のベライゾン・ワイアレスのシェア23%を大きく引き離している。そして、AT&Tのこの躍進の原動力がiPhoneであり、2009年第4四半期のiPhone契約台数(アクティベーション件数)は310万件に上った。それに対し、同期中のAT&Tの契約者純増数は270万件だったという(それだけ多くの既存契約者がiPhoneに乗り換えたということか)。AT&TにとってのiPhoneの重要性については、「iPhoneの独占契約を失った場合、その潜在減少分をほかの商品で補うのはとても難しい」という証券会社Sanford C. Bernstein & Co.のアナリストのコメントが引用されている。
  • ベライゾンは以前からアップルへ秋波を送ってきているが、それに対してアップルではこれまでCDMAを過度的な技術とみて対応してこなかった。この背景には、ベライゾンが現在、次世代高速通信技術へのアップグレードを進めているという事情がある。ところが、このアップグレードが予想以上に長引くとわかって、アップルは方針を転換することにしたという(事情に詳しい関係者の談)。
  • 9100万人の契約者を有するベライゾンをはじめとして、アップルがCDMAを採用する通信キャリア各社にiPhoneを提供するようになれば、すでにスマートフォン市場で支配的な立場にあるAppleのシェアがさらに強力なものとなる。米国だけをとっても、iPhoneユーザーの数は現在の2倍近くまで増える可能性があるという(Bernsteinの談)
  • 複数のアナリストによればAT&Tはアップルに、iPhone1台につき600ドル以上を支払っているという(しかし契約者への提供価格は199ドル以下で、約400ドル程度の持ち出しとなるが、それだけ月々のデータ通信料の旨味が大きいということだろう)。
  • iPhoneのCDMA版が実際に登場すれば、CDMA技術の特許を持つチップメーカー、米クァルコム(Qualcomm)の業績にも大きな影響があると考えられる。

【参照情報】
New iPhone Could End AT&T's U.S. Monopoly(WSJ.com)
WSJ: Verizon iPhone in the works(CNET News)
WSJ: Apple 'developing new iPhone,' plus another for Verizon(Engadget.com)

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