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スカイプに歩み寄る米携帯通信大手 - ベライゾンにつづいてスプリントも端末に搭載か

2010.05.31

Updated by WirelessWire News編集部 on May 31, 2010, 11:30 am JST

P2PのIP電話ソフト「Skype」の携帯電話機用アプリが、スプリント・ネクステル(Sprint Nextel:以下、スプリント)の提供する「HTC Evo 4G」などのスマートフォンでも利用可能になるのではないかと複数の媒体が報じている。

Sprint - HTC EVO 4G
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ルクセンブルクを本拠地とするスカイプの、社名と同名の製品Skypeは、P2PとVoIPで、電話会社の主たる収入源であるダイヤル通話料を奪っている。特に高額だった国際電話はSkypeの登場で大きな打撃を受けている。そのため世界各国の通信事業者がこれまでSkypeを毛嫌いしてきた。日本のPCメーカーのなかには、国内の通信事業者に遠慮して、Skypeを自社製PCにプレインストールすることを自粛している大手も存在する。

そんなスカイプが、米国で携帯加入者シェア首位のベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless:以下、ベライゾン)と手を組んだというニュースが今年2月に報じられ、3月以降に発売された同社のスマートフォンには「ベライゾン純正Skype」が搭載されている。ベライゾンとの契約で同社以外の加入者は、Android版はおろかWindows Mobile版もBlackberry版もダウンロードできなくなっている。3Gのデータ通信ばかりでなく、Wi-Fi経由であってもiPhoneとSymbian以外のスマートフォンからSkypeを利用することはできなくなってしまった。

スカイプ側は公式には何も発表していないようだが、記事はこの状況が年内に変化するのではないかと予想している。同アプリが搭載されそうなのは、6月にスプリントからリリースされる予定の、同社初のAndroid搭載4G対応端末「HTC Evo 4G」で、後述するSkypeの音声通話やビデオ通話が可能になる可能性がある。

通話料収入を犠牲にしてまでベライゾンがSkype公式サポートにシフトした理由についてはいろいろと語られているようだが、2003年に登場したP2Pの目ざわりな存在を、2010年になった今、通信キャリアとして無視できず、協調関係を築く時代が来たことには間違いなさそうだ。特にSkype目的でベライゾンを選択した最近の新規ユーザのARPUは、他のサービスやアプリケーションの利用頻度の高い先端ユーザであるため、平均的に高くなっているとも一部では言われている。

スカイプはこのところ、法人向けに新機軸を打ち出してきている。5月19日には、従来のSMBでのSkype利用を管理する「ビジネス・コントロールパネル」の後継にとして、Web ベースの管理ツール「Skype Manager」を発表。このツールは現在は無料トライアル期間だが、いずれは有償化される見通しだ。また、13日には発信者を含めて5人まで参加できるグループビデオ通話が可能なベータ版「Skype 5.0 Beta 1 for Windows」が公開されている。消費者(一般ユーザー)が5人までの映像会議をする場面は想像しづらく、こちらも法人ターゲット、つまりは有償サービスとなる可能性が高そうだ。eBayとシナジーを生めないまま再びベンチャーキャピタルの資金で自由の身になったスカイプは、固定電話、携帯電話への発信と着信というプリペイドの通話料以外の収入源を真剣に求めているようにみえる。

【参照情報】
Skype Mobile Coming To Sprint HTC EVO 4G (Skatter Tech)
HTC Evo 4G Update & Evo 4G Likely To Get Skype Client (LA News Monitor)
ベライゾン・ワイヤレスとスカイプの提携が、携帯電話のVoIP対応に道を開く?(InfoComモバイル通信T&S)
企業内 Skype 利用の新管理ツール「Skype Manager」、無料トライアル開始(japan.internet.com)
Skype、5人のグループビデオ通話に対応した最新ベータ版を公開(INTERNET Watch)

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