──3G版iPadはそのまま既存の3Gネットワークにつながるわけですが、こういう新しいデバイスがネットワークにつながることで、通信ネットワークにはどんな変化があるのでしょうか。
林 : まだまだこれからいろいろなアプリが出てこないと分からない部分はありますが、まず、iPhoneに比べると、単純に画面が大きいので、通信のデータ量は大きくなるでしょう。ソフトバンクがiPhoneを発売して、それまでに比べるとデータ通信量が10倍近くなったという話がありますから、iPadならさらに4倍、あるいは6倍となる可能性があるのではないでしょうか。
──ニューヨークでは、iPhoneのデータ通信でAT&Tのネットワークがパンクして、一時期iPhoneの販売を差し止めていたという話がありましたね。
林 : 差し止めされてないサンフランシスコでもひどい状態で、目の前にいる人にSMSを送ったら届いたのが6時間後だったといったことが、当たり前に起こっています。さすがにAT&Tもこの状態を黙って受け入れているわけではなくて、今年の夏までだったと思いますが、AT&Tの中のネットワークを劇的に変えるので期待してくれと言っています。
──やはりiPhone、iPadというのは、魅力的なデバイスではあるけれど、通信事業者から見ると非常に扱いが難しいものなんですね。
林 : そうですね。ソフトバンクも先にこういう(iPhoneという)難しいデバイスをアクセプトしたので、そこから得ているノウハウは大きいと思います。
例えば、産経新聞(iPhone版)というアプリがあります。その日の朝刊の紙面をそのまま表示するという見た目が斬新で、ずいぶん話題になりました。iPhoneのキラーアプリの一つです。でもあのアプリは、毎朝決まった時間にその日の朝刊のデータを配信するということで、膨大なトラフィックの負荷をネットワークにかけています。
そういうものを扱う時に、データのスパイクがどうなるのか、それをどうやればうまく分散できるのか、さらには、そういったアプリを開発するサードパーティにどう交渉すれば、スパイクを減らすようにうまく誘導できるかなど、そういったことを含めてノウハウだと思います。
今はiPhoneのほうがAndroid に比べてアプリの種類もトラフィック圧倒的に勝っていますから、それを過去2年間扱ってきたソフトバンクは、これからAndroid端末を扱いはじめる他キャリアに比べて、それだけのノウハウを先に蓄積しています。ユーザーがスマートフォンをどう使うかというパターンも持っているだろうし、そこは他の通信事業者に比べてiPadのキャリアとして有利といえば有利かもしれません。
もっともAndroidは基本的にオープンで、すべてが自由に任されています。今後通信事業者にAndroidに関するノウハウが蓄積されたとしても、まとまった動きでアプリ開発者に負荷を減らすよう交渉するといった行動がとれるかどうかは分からないですね。
文:林 信行
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