中国のZTE(中興通迅)は6月25日(カナダ現地時間)、カナダの新興キャリアPublic MobileにCDMAネットワーク納入契約を獲得したが、併せて中国政府100%出資の中国輸出入銀行がPublic Mobile社に3億5000万ドルを融資するという。詳細は不明ながらZTEはPublic Mobileに少なくともCDMAの基地局1000基を供給するようだ。2008年設立のPublic Mobileはカナダで8社目のモバイルキャリアで、ケベック州とオンタリオ州の免許を取得しており、今年5月26日にトロントでのサービスを開始している。
この融資は、ベンダーファイナンスの融資機能をZTEに代わって中国政府が行う枠組みと見ることができる。ベンダーファイナンスとは、通信機器・装置のベンダー側がキャリアに自社製品を供給する際に、まず融資を行うというもので、キャリア側はベンダーから借りた資金でベンダー製品を「購入」して、その後サービス提供により上がる売上を原資にベンダーからの借入を返済していくというもの。
通信キャリアは設備産業で、全国サービスを提供する場合には加入者が少ない段階でも多くの設備・装置を揃えておく必要がある。ベンダーファイナンスを利用することで、当初の自己資金が不足していても事業をスタートすることができ、ベンダーには売上が立つというメリットがある。日本でも新興の通信キャリアが採用して数年前に話題になった手法だが、焦げ付いて回収できなくなることもあり、ノーテル(Nortel)の経営悪化の原因ともなったとされている。
中国では、自国内の3Gインフラストラクチャを構築するに当たって、通信キャリアに対してベンダーではなく政府が融資する動きを見せている。自国ベンダー(ZTEやファーウェイ(華為技術)など)が成長し始めており、自国ベンダーの製品が落札できればベンダー育成にもなり、欧米の大手ベンダーは製品の性能と価格以外の面で通信キャリアにアピールすることができなくなる。すなわち、公共事業により自国メーカーの成長を促すということだが、自国市場の規模が極めて大きいだけに、その効果も計り知れないところがある。
中国はさらに一歩進めて、他国の通信キャリアに融資し、自国製品の購入、すなわち自国メーカーの育成を図ろうとしているということだ。おそらく、カナダの事例のように、最大手ではなく、チャレンジャーの立場の新興キャリアがこうした枠組みを歓迎する可能性が高いのではないだろうか。
【参照情報】
・ZTE wins CDMA contract with $350m govt loan -Telecom Asia
・ZTE Bankrolls Canadian Mobile Network -Telecom News Analysis
・Public Mobile
・Public Mobile debuts May 26 in Toronto -IT World Canada
・中国ZTEの2010年第一四半期決算、純利益が約40%増 -WirelessWire News
・投資額の多寡は、技術の普及に関係ない -日経ビジネスオンライン(要会員登録)
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