[Xi Watching Report #1]LTEが周辺産業にもたらす影響を考える
2011.01.21
Updated by WirelessWire News編集部 on January 21, 2011, 18:30 pm JST
2011.01.21
Updated by WirelessWire News編集部 on January 21, 2011, 18:30 pm JST
2010年12月24日に国内で初めてのLTEによるサービス「Xi(クロッシィ)」がNTTドコモで開始された。本年1月11日にTCAより公表された、各社の契約状況では12月末の契約者数は1,200件と、24日のサービス開始から実質1週間しかなかったものの、スモールスタートといった印象だ。
昨年12月24日の「Xiオープニングセレモニー」でドコモ山田社長が明らかにしたように、契約者の獲得目標は2011年3月末で5万契約、2011年度末で100万契約、2014年度では1500万を目指すという。W-CDMAによるサービスである「FOMA」は2001年10月にサービスを開始し、2003年9月末に100万契約、2005年7月に1500万契約を達成したのだが、FOMAがサービス開始の翌年度が33万であったのに対し(図1)、Xiはその3倍である来年度100万を目指すというのはかなりアグレッシブな計画であると見て良い(表2)。
▼図1:FOMA契約者数実績(単位・千契約) ※2010年度末数値は計画値
▼表2:LTE加入者目標(単位:千契約)※数値は計画値
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一方、設備投資の計画を見ると、2010年度は350億円、2011年度は1,000億円、2012年度は1,700億円と、FOMAのサービス開始時に比べると、2001年度は3,810億円、2002年度は3,423億円、2003年度は3,915億円と、その差は初年度で10倍以上、翌年度で3倍以上、翌々年度で2倍と大きく差がある(表3)。
▼表3:LTEとFOMAのサービス開始から3年度目までの設備投資額と基地局数の比較
※LTEについては計画値
これら設備投資計画は、無論、FOMA開始時はそれまで全く運用したことのなかった2GHz帯ということもあり、基地局建設用地の新たな確保、鉄塔建設などの土木工事も含まれていたこともさることながら、「世界初の商用3Gサービスの提供開始」に拘る余り、3GPPで仕様策定される前に後の世界中の多くの通信事業者が採用するRelease99やRelease2000とは異なる仕様(標準化会議で標準仕様が策定される前に先行してドコモと日系メーカーが開発した仕様)でサービスを開始した為、割高な機器を購入していたということにも起因する。
更にドコモは2004年以降、世界中のW-CDMAオペレータが採用するRelease99対応の為の設備改修工事を実施しているため、FOMA向けの設備投資額は長らく高い状態が続いた。
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このようなFOMA導入時の経験を踏まえ、LTEにおいては「世界初」でなく、「世界の先頭集団」としてLTEを開始し、必ずしも1番最初には拘らないという言い方が随分前から経営陣などからなされていた(参考記事:【WIRELESS JAPAN 2009】ドコモ尾上氏が語る、LTEの現在と今後の4G(ケータイWatch))。加えて、LTE導入の目的は高速化によるビット単価の低減もさることながら、設備投資額と設備運用コストの抑制も目指されており、鉄塔、アンテナ、基地局装置(eNode B)などの全部又は一部分が3G設備との共用がなされている。
▼表4:ドコモLTEの2010年6月以降の基地局数の推移
表4は2010年6月以降のドコモLTEの基地局数推移であるが、今年度計画に1,000局に対して、昨年12月時点で概ね70%程度の690局ほど設置が進んでいる。350億円の予算に対して単純化しても250億円程度ということになろうが、表3にあるとおり、FOMAが1,860局を3,810億円で設置(単純化すると1,000局で2,000億円程度)したことを鑑みれば随分と安価であることが理解できるだろう。
LTEのサービス開始は、KDDIが2012年、ソフトバンクは明確な開始時期の明言を避けているが2013年頃ではないかと言われており、機器メーカー、工事会社など周辺産業への恩恵を期待する声をよく聞く。しかし、ドコモの設備投資の状況からも判るとおり、通信事業者にとってLTEについては、設備投資額の低減が重要な課題の一つであり、周辺産業への恩恵はあまり期待できないというのが実情だ。
連載1回目の今回は、設備投資の面からLTEの影響を考察したが、次回以降、契約者数の定点観測、期待される端末・サービス像、実際の使用感、料金制度などレポートしたい。
文・梶本浩平(リサーチアナリスト)
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