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台湾で政府機関が通信速度の実測値を公表 - 結果をマーケティングに使うキャリアも

2014.04.15

Updated by Kazuteru Tamura on April 15, 2014, 14:31 pm JST

中華民国(以下、台湾)の台北に訪問した際に、現地の移動体通信事業者である遠傳電信(Far EasTone Telecommunications)の広告に通信速度が最速と記載されているのを目にした。台湾で通信関連の業務を遂行する政府機関である国家通信放送委員会(以下、NCC)の名を挙げており、NCCによる公式な通信速度の測定で最速となったことを主張しているように見て取れた。そこで調査を進めて見ると、台湾の各地で通信速度の実測値を集計したものをNCCが発表しており、その結果を遠傳電信が広告に利用していることが分かった。

▼台北市内を走るタクシーの多くは遠傳電信の広告を掲載している。「遠傳電信のネットワークが最速」と宣伝している。
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測定方法は単純であり、消費者が専用のアプリケーションを使用して得られたデータを用いている。測定地点は各地の人口密集地を中心とした台湾全土となっており、各地から通信速度の測定結果が寄せられている。台湾では第1行政区分の5直轄市、第2行政区分の3省轄市と14県に分けられており、通信速度の測定はその殆どの地域で有効なサンプルが得られている。消費者から得られた有効なデータはNCCより業務を委託された財団法人電信技術通信(TELECOM TECHNOLOGY CENTER)が集計し、考察を加えた資料をNCCが公開している。消費者が様々な環境において様々な端末を使用して測定した結果となるため、より実利用に近いデータが得られるとしている。

対象の移動体通信事業者は3GにW-CDMA方式を採用する中華電信(Chunghwa Telecom)、遠傳電信(Far EasTone Telecommunications)、台湾大哥大(Taiwan Mobile)、威宝電信(Vibo Telecom)、そして3GにCDMA2000方式を採用する亜太電信(Asia Pacific Telecom Group)の計5社である。2014年3月末現在でLTE方式のサービスを提供している台湾の移動体通信事業者はなく、結果は基本的に3G接続で通信速度を測定したものとなる。

NCCが通信速度の実測値を公開するのは2度目であり、直近では2014年1月15日付けで測定結果を発表している。NCCが公開した測定結果の資料は測定値や測定地点が詳細に記載されているため量が非常に多くなっているが、台湾メディアである蘋果日報(Apple Daily)がNCCの資料を要約した記事を2014年1月16日付けで公開している。蘋果日報は下りの通信速度が最速となった地域を移動体通信事業者毎に集計しており、遠傳電信はその記事を情報元としている。

結果は下記の通りとなっている。

■遠傳電信(計10地域)
桃園県、新竹市、苗栗県、台中市、彰化県、雲林県、嘉義市、嘉義県、台南市、澎湖県

■中華電信(計6地域)
宜蘭県、新北市、新竹県、南投県、高雄市、金門県

■台湾大哥大(計5地域)
基隆市、台北市、屏東県、台東県、花蓮県

遠傳電信が最速の地域は最多の10地域、次いで中華電信の6地域、台湾大哥大の5地域となる。そして、威宝電信や亜太電信が最速となる地域はなかった。遠傳電信は最速の地域が最多となったことで、最速の移動体通信事業者として広告を掲載しているのである。広告には「NCCの公式測定」「No.1」「遠傳電信のネットワークが最速」といった文言が並べられている。政府機関が公式に公開した資料に基づくことは事実であり、宣伝材料としては非常に使いやすいことは確かだろう。広告は台北市内を走るタクシーの他に、遠傳電信のカタログに掲載されていることが確認できた。遠傳電信のカタログでは表紙の裏に掲載されている。分かりやすい位置に掲載していることから、NCCが公開した結果を積極的に活用してマーケティングをしていることが分かる。

尚、連江県については全ての移動体通信事業者で有効なデータが得られなかったとして、該当する移動体通信事業者はなしとしている。また、複数の地域で一部の移動体通信事業者から有効なデータが得られていない場合もあり、その場合は有効なデータを得られた移動体通信事業者の結果のみを出している。消費者が実際に測定する方法を採用しているため、有効なサンプルが集まらなければ結果なしとなる点は、この方法の短所と言えるだろう。NCCが公開した資料には詳細な測定結果や測定方法も掲載されているため、興味があれば見る価値はあるだろう。

日本では通信関連の業務を遂行する行政機関としては総務省が該当する。総務省は通信速度の広告表示を理論値ではなく実測値で掲載するよう移動体通信事業者に要請する方針とも言われており、既に通信速度の測定等の在り方に関する研究会も開催されている。NCCの方法が必ずしもベストだとは限らないが、実際に政府機関が実測値を集計して公開した事例の一つとして参考にはなるはずである。

▼台北市内にある遠傳電信の直営店。
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▼遠傳電信のカタログにも通信速度が最速と記載されている。
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【関連情報】
NCCによる速度調査レポート
遠傳下載速率 稱霸10縣市(蘋果日報)

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。