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[2011年第7週]ガンバレ日の丸、バルセロナで気を吐く日本企業たち

2011.02.21

Updated by WirelessWire News編集部 on February 21, 2011, 11:53 am JST

スペイン・バルセロナで開催された通信業界最大のイベント「Mobile Workd Congress 2011」(MWC 2011)。2月14日〜17日の会期中は、世界中の通信業界の企業やそのトップがバルセロナに集まっている様相を呈していた。

MWC 2011には、1400社近出展企業があり、来場者は6万人を超えたとのこと。地元欧州のベンダーやキャリアーはもちろん、米国の企業もグーグルやマイクロソフトなどがスマートフォンのOSを提供するベンダーとして存在感を示していた。そして、国内の展示会との大きな違いは、アジア各国の企業の勢い。韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスは新作のスマートフォンやタブレット型端末を引っさげ、大きなブースに来場者を引き寄せていた。中国や台湾からもZTE、ファーウェイ、HTC、エイサーなどが存在感を誇示していた。

そんな中、日本企業も世界での戦いに挑むべくMWCの会場にブースを構えている。日本からの出展企業の展示の模様をレポートしよう。

アンリツ

計測器などを手がけるアンリツは、ホール1に大きなブースを構えて存在感を示していた。マイクロソフトやHTCといったネームバリューの高い企業と同じホールだ。MWCには例年出展しているということで、世界のマーケットへの訴求の場としている。今回の展示では、「LTEのシミュレーターに力を入れて展示しています。LTEおよびTD-LTEの双方のシミュレーションができることをウリにしています」(説明員)。出展を続けることで、各国のオペレーターやメーカーに興味を持ってもらえるようになってきているという。

▼LTEのシミュレーターを展示(アンリツ)
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富士通セミコンダクター

同じくホール1には、富士通セミコンダクターがブースを設けていた。メインの展示は携帯電話向けのISP(画像信号プロセッサー)の「Milbeaut」。携帯電話やスマートフォンでは、画像関連の処理をCPUで行うことが多い。しかし、国内で多くなってきたカメラが1000万画素を超えるような携帯電話では、CPUの負担が大きくなりすぎる。ISPを使えば、CPUに負担をかけずに画像のノイズ除去や画質最適化などの画像処理を行える。「最近では海外製品でも画素数が500万画素〜800万画素というものが増えてきました。画像処理にISPを使うソリューションを世界に広めていきたいです」と抱負を語った。

▼評価用のISPボードで、静止画の3D映像化をデモ(富士通セミコンダクター)
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日立製作所

ホール2にブースを構えていたのが日立製作所。今回は、映像ソリューションに関連する展示を行った。その1つが、マルチスクリーンでのビデオ配信ソリューションの展示。マルチスクリーンとは、テレビ(IPTV)やパソコン、スマートフォンなどの携帯電話の複数の"スクリーン"に対して、コンテンツを提供することを指す。デモでは、(1)複数の画面に対して、同じコンテンツの視聴を遠隔操作する、(2)帰宅途中に携帯電話で見ていたコンテンツの続きを、帰宅後にテレビで見る--といったシーンでの利用法を示していた。ほかにも、ドコモ ユーロラボと共同で開発した動画のダイジェストを自動的に作るシステムの参考出展もあった。

▼タブレット端末から指示でPCもテレビも同じコンテンツを再生(日立製作所)
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NTTソルマーレ

アプリケーションを中心に展示していたホール7で存在感が高かったのがNTTソルマーレのブース。マンガのコンテンツを携帯電話に配信する電子ブック事業の紹介をしていた。マンガのキャラクターが大きくあしらわれたブースは、各国の来場者の興味を惹いたようだ。これまでの国内の携帯電話向けサービスから、グローバルへの展開を目指す。すでに提供を初めているiPhoneやiPad向けのアプリに加えて、Android向けのアプリの開発・提供をすることで、日本発のコンテンツを世界に広めていく意向だ。

▼iPadでマンガを読む「地球書店」でタイトルを表示(NTTソルマーレ)
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ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ

半分は日本企業のソニー・エリクソン。スマートフォンのXperiaに新ラインアップを発表したことは記憶に新しい。その1つのキーワードには、"ソニー"がありそうだ。PLAYSTATIONのゲームができる「Xperia PLAY」はもちろん、「Xperia neo」や「Xperia pro」に搭載している裏面処理型CMOSセンサーの「Exmor R」や画像処理エンジンの「モバイルBRAVIAエンジン」は、ソニーの技術と連携したものだ。ブースと呼ぶには広すぎるエリクソンの展示会場の片隅にあったソニー・エリクソンのコーナー。そこには日本の技術があった。

NEC

クラウドサービスを前面に押し出していたNECのブース。ノキア・シーメンス ネットワークスやグーグル、サムスンなど世界の大手の出展が集まっているホール8での出展だった。クラウドのサービスはこれまでSaaSやPaaSといったものに注目されていたが、NECでは利用者に応じたアプリケーションをクラウドで提供することを提案する。Android端末を使って、自動車メーカーが車載型の情報サービスを提供できるようなものや、インテリジェントホーム、遠隔医療などをクラウドで提供する計画だ。クラウドならば、日本発のきめ細かいサービスを世界に向けて提供できる。そうしたクラウドサービスに利用できる端末として、2画面のコミュニケーターの参考出品も目を引いた。

▼タテでも横でも使える2画面端末(NEC)
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NTTドコモ

NECと同じくホール8にあったNTTドコモのブース。広大なホール8のちょうど中央に位置していて、来場者の目に付くこともあり多くの人が立ち寄っていた。デザインケータイやコラボケータイなど国内で販売しているさまざまな携帯電話の端末を前面に並べ、似たような形ばかりになってしまった他社のスマートフォンの一群とはテイストの異なる展示が印象的。特に国内の関係者にとって、NTTドコモがFeliCaとNFCの共存のマイグレーションパスを示したことは、大きな潮流への道しるべとなりそうだ。

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富士通

ホール3というと、なにか部屋がありそうなのだが、ここはホール1、2、4、5に囲まれた中庭。ここにはボーダフォンやオレンジなどの大手事業者に並んで、富士通とACCESSの日本勢がパビリオンを出していた。富士通のブースでは、2画面のAndroid端末が目を引く。2010年のCEATECで出展していた2画面端末も並べて展示して、新しい端末の姿を示していた。このほか、国内で提供している防水の端末やLTE端末、またWAC(Wholesale Applications Community)への対応などで、世界に存在を示した。

▼防水端末は世界でも要求が高い(富士通)
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ACCESS

富士通と同じくホール3にパビリオンを設けたACCESS。Android端末向けのテレビ電話アプリケーションや、ブラジル向けの"ワンセグ"ブラウザーなど、最新のソリューションを展示していた。そのほかにも、エンドユーザー向けのアプリのシリーズである「NetFront Life」の最新版を展示。Evernoteとの連携が可能になったほか、Android端末にDLNA機能を付加できる新アプリの「NetFront Life Connect」もシリーズに追加し、DLNAでリンクしたデモも重なっていた。

▼DLNAでスマートフォンからテレビに映像出力」を指示(ACCESS)
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これは国内企業のMWCへの出展の一部だが、世界への取っ掛かりをつかもうと一生懸命な姿が伝わってくる。来年のMWCに、より多くの企業が出展して世界に技を見せていければ、日本の産業の活性化に少しでもつながりそうだ。

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