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モトローラのタブレット「Xoom」が欧州のプロフェッショナルに感動を与えた理由

2011.03.03

Updated by Kenji Tsuda on March 3, 2011, 12:00 pm UTC

▼欧州現地で人気の高かったモトローラのXoom
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欧州のビジネスパーソンやエンジニアを3日間取材し、複数の通信・半導体業界の人たちが感動した携帯機器は、実はモトローラのタブレットXoomだった。このタブレットは指タッチによってスイスイとイラつくことなく画面の拡大、縮小、移動、回転、切り替えなどを行うことができる。「ストレスが全くなく、画面の応答速度の速さに感動した」と絶賛したエンジニアは一人や二人ではなかった。最後の日にブースへ見に行った。このタブレットは、モトローラの起死回生といった携帯端末になる可能性を秘めている。

モトローラは、現在の携帯電話の原型(マイクロタックと呼ばれた)を開発したものの、最近ではサムスン、LGにも抜かれ、携帯電話業界で落ち目になり、誰からも注目されなくなっていた。だからこそ、今回のMWCでは日本のメディアからも見放されていた。

Xoom(ズームと発音する)は、1月のCES(コンシューマエレクトロニクスショー)で初めて発表され、2月中に発売すると言われていたが、米国時間2月24日(日本時間25日)からVerizonのネットワークを通して発売することを2月22日に正式に発表した。MWCでは来場者が手にとって見ることのできるように10台程度並べており、コンシューマにとってはこれが初めての実物となり、来場者の感動につながった。

この端末はAndroid 3.0(コード名Honeycomb)という最先端のアンドロイドを使っており、モトローラの担当者は「タブレットに最適化された初めてのアンドロイドだ」と胸を張る。画面サイズが16×10のアスペクト比になっており、16×9のHD(high definition)コンテンツを見るのに適していると言う。性能的には1GHzのデュアルコアプロセッサを用い、RAMメモリは1Gバイトあるため、容量的には余裕がありそうだ。

特長としては、ブラウザベースでの仕事を行いやすくできているとしている。会場のデモでは、複数人数の仲間とのテレビ電話会議の様子を見せた。数人相手の顔を写す画面は小さくして多画面を表示し、パワーポイントなどの資料の画面は大きくする。会議では資料を見ながら複数の人間と行うことができる。担当者の話では、テレビ電話会議を行う上での人数に制限はないという。

画面のユーザーインターフェースはさらに身近になり、まるでボリュームのつまみのように右に回すと画面が大きくなり、左に回すと小さくなるといった、pinch-to-zoomと呼ぶ、つまみ機能を搭載している。この機能は4~5本の指による動作を読みとれるタッチスクリーンをベースにしている。すなわちタッチスクリーンコントローラICを使い、縦横2次元画面をそれぞれスキャンして多数の指を検出する。画面に現れるグラフィックスの動作が速く、指でコマンドを要求するとその反応は速い。

タブレットの中核をなすSoCチップには、NvidiaのTegra 2デュアルコアプロセッサを使っているらしい。モトローラが以前、開発していたPowerPCプロセッサではないようだ。Tegra 2は、ARMのCortex-A9のデュアルコア、Nvidia が昔から得意としてきたグラフィックスコアGeForce、さまざまなビデオ規格の圧縮・伸長を行うビデオコーデックコア、画像処理プロセッサ、オーディオプロセッサ、そしてSoC全体を制御するARM7プロセッサを内蔵している。デュアルコアのCortex-A9はブラウザや画面操作の高速化を行うようだ。

携帯電話では、サムスンやLGに抜かれ、今や存在感が失われつつある通信機器大手のモトローラだが、このタブレットXoomは巻き返しの大きな武器になる可能性を秘めている。実際に手にとって操作してみると実にスムースに画像の回転や拡大縮小を扱いやすく、何よりもウェッブベースでテレビ電話会議やコンテンツを見るという操作が、常時接続を前提とした新しいタブレットの使い方を示唆しているかもしれない。

日本の企業にもこういった新しい感動を生むような機能を付加し、一発逆転を狙うことは十分可能である。モトローラのこのタブレットが成功するなら、それは日本企業にとって大きな勇気を与えると信じている。モトローラという企業風土は日本の大手メーカーのそれとよく似ているからだ。

 
文・津田 建二(国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長)

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津田建二(つだ・けんじ)

現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長兼newsandchips.com編集長。半導体・エレクトロニクス産業を30年以上取材。日経マグロウヒル(現日経BP社)時代からの少ない現役生き残り。Reed Business Informationでは米国の編集者らとの太いパイプを築き、欧米アジアの編集記者との付き合いは長い。著書「メガトレンド半導体 2014-2023」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」など。