WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

by Category

どの携帯電話、スマートフォンにも電力供給できる充電器を目指すFulton Innovation

2011.03.07

Updated by Kenji Tsuda on March 7, 2011, 17:00 pm UTC

携帯電話やスマートフォンを購入した後は電池の残量が少ないため、すぐに充電してからでないと使えないことが世界的にも常識となっている。携帯電話の販売店の棚から降ろしてすぐに使いたいということがあるだろう。特に電池の消耗が激しいスマートフォンを買ってすぐ使わなければならないような仕事の状況では困りもの。箱に入ったままの携帯電話が充電されていればそれは可能だが(図1)。

▼図1 スマートフォンを箱に入れたまま電源を供給できるワイヤレス充電器
201103071700-1.jpg

ワイヤレス充電なら、こんな夢のような超特急の仕事にも対処できる。箱に入ったまま携帯電話を充電する、といったワイヤレス充電装置がMWC2010開催初日の2月14日にバルセロナ市内のホテルRey Juan Carlosで開催されたMobileFocus Globalのパーティ会場で展示された。米Fulton Innovation社が開発、提案しているeCoupled技術をベースに国際標準として、ワイヤレス充電を行うというもの。Fulton社はワイヤレス充電の標準化団体である、Wireless Power Consortiumの創立メンバーの1社であり、Qi(チーと発音)ワイヤレス電源標準規格v1.0を積極的にサポートしている。この規格は最大5Wまでの電力を必要とする携帯電話やMP3プレイヤー、デジタルカメラなどを対象としたもの。

Fulton社は、eCoupled技術をライセンスして収入を得るタイプのビジネスモデルを持つ企業で、自身は製品を作らない。eCoupled技術は、Qiのベースとなる技術であり、ワイヤレス充電だけではなく電力を供給すべき相手となるデバイスとの通信を経て充電したり電力を止めたりする。つまりこの規格には、電力を供給すべき相手との間でプロトコルを確立する必要があり、特定の携帯電話だけではなく、どの携帯にもどのデジカメにもどの音楽プレイヤーにもワイヤレスで充電できるような仕掛けがある。

eCoupled技術では、電力を供給すべき1次側の充電器から磁気共鳴によって、2次側すなわち充電したいデバイス側にまず通信プロトコルを送る程度の弱い電力を送り、本当に充電したいデバイスかどうかIDプロトコルで確認する。もし相手が全く違うデバイスだったり、すでに満充電されているデバイスであったりするとすぐに送信電力を停止する。IDプロトコルを確認したら、電力を伝送する。この技術は、ダイナミックに共鳴状態を探し、電力伝送を最適化するというインテリジェントな機能もある。電力伝送効率は、120Vを1.4kW伝送する場合98%以上だとしている。

磁気共鳴技術を使う理由は、あくまでも安全性を重視したことによる。磁気共鳴では1次側の電力伝送回路にはコイルLとコンデンサCによる共鳴回路を設け、2次側でもLとCの共鳴回路を設け、その周波数が一致した場合のみ電力を最大限にワイヤレスで伝送することができる。このため、共鳴できない周波数のデバイスが充電器の上に置かれていても反応しない。すなわちむやみに充電しないという訳だ。単なるコイル同士による結合だと、電力供給を望まないデバイスにも電力が伝わる恐れがある。

WPCコンソーシアムに加盟している企業は72社あり、Texas Instruments、Samsung、Motorola、三洋電機、Verizon Wirelessなどがメンバーだ。例えば、TIはWPCのV1.0に準拠する、電力を供給する側の新製品IC、bq500110を送信マネージャーという位置付けで開発した。また、電池メーカーの米Energizer社は2010年10月に磁気共鳴のワイヤレス充電器を発売している。会場のデモではEnergizerの充電器を用いていた(図2)。

▼図2 Energizer社が販売するワイヤレス充電器 qiのロゴマークの上にQi準拠のデバイスを載せると充電する
201103071700-2.jpg

 
文・津田 建二(国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長)

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

津田建二(つだ・けんじ)

現在、英文・和文のフリー国際技術ジャーナリスト兼セミコンポータル編集長兼newsandchips.com編集長。半導体・エレクトロニクス産業を30年以上取材。日経マグロウヒル(現日経BP社)時代からの少ない現役生き残り。Reed Business Informationでは米国の編集者らとの太いパイプを築き、欧米アジアの編集記者との付き合いは長い。著書「メガトレンド半導体 2014-2023」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」など。