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2010年度適用各社公表接続料、大きな下げ幅に隠れたソフトバンクモバイルの実質値上げ効果

2011.03.30

Updated by WirelessWire News編集部 on March 30, 2011, 19:00 pm UTC

少し古い話になるが、2010年度に適用される接続料について、3月4日に発表されたソフトバンクモバイル(SBM)の発表を以って主要3社分が出揃った。今回発表の各社接続料について考察したい。

各社過去最大の下げ幅、公表義務のないソフトバンクまで公表する必要性は?

既に各社より発表されているとおり、ドコモが1月24日(参考)、KDDIが2月3日(参考)、ソフトバンクモバイル(SBM)が3月4日(参考)に接続料を発表した。

▼表1:移動体3社の規制状況
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出所:総務省資料などから筆者作成

元来、表1で示すとおり、SBMは指定第2種指定電気通信設備を保有する事業者でない為、接続料の公表義務が無い。今回、自ら進んで公表したことは透明性を確保する観点でも評することが出来よう。尤も、過去最大の下げ幅であることをアピールするも忘れていないのがさすがソフトバンクでもあるのだが。ただ、本件発表によりSBMの接続料に対するスタンスが明らかになったというのが、我々の様な業界を外から分析する者の大半の見方だ。

▼各社の3分間あたり接続料推移
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出所:総務省および各社資料から筆者作成

上図は各社の3分あたりの接続料推移過去10年分を示したもの。この10年でも昨年度から今年度の下げ幅が最も大きい。これは、昨年3月に総務省から示された「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」で二種指定電気通信設備事業者(ドコモ・KDDI)に対して、(1)電気通信の啓発活動に係る営業コスト、(2)エリア整備・改善を目的とする情報収集に係る営業コスト、(3)周波数再編の周知に係る営業コスト、の3つを除きその他営業コスト全般を接続料原価算定に含めないよう示され、これに準じた計算方法で今年度からの接続料算定がなされる為、ドコモ・KDDIの今年度の下げは大きなものとなることは予め想定されていた。

一方、SBMは先に触れたとおり、接続料の公表義務は一切無く、過去にも公表したことはない。では、何故公表したのか。

従前より、SBMの接続料はその算定方法が不透明で、SBMの「稼ぎ所」なのではないかと指摘されていたからだ。当のSBMは、「ネットワーク外部性」を理由にし、新規ユーザーを獲得することで、他事業者に対しても便益を提供していることから接続料算定の原価にこれを参入していることを理由にしている(参考:「ドコモに800MHzは不要」,ソフトバンクが携帯電話の接続料で対立姿勢をあらわに(ITpro))。

しかしながら、これは支離滅裂な理由であるというのが業界内での一般的な見方だ。競合各社も、適正な原価で計算するという法規制がないことが問題である、(参考:ドコモ古川氏、「全キャリアで接続料算定基準の透明化を」(ケータイWatch))と指摘しており、接続料の公表義務、算定方法の厳格化に関する規制が無いにしても、あまりにもかけ離れた接続料は業界でも疑問視されていた。

これに対する、SBMの抗弁というのが今回の発表なのである。今回接続料公表のSBMの報道発表文を読むと、

「当社の携帯電話接続料は、2010年度より適用となる第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者を対象としたガイドラインの考え方にのっとって算出しています。」

と記載されており、算定方法はドコモ・KDDIと同様であるとアピールする為であったと考えられよう。

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ソフトバンクの「接続料実質値上げ効果」のからくり

もっとも、今回の公表により、接続料がSBMの「稼ぎ所」であることを概ね認めてしまった側面もある。

▼表2:2009年度各社接続料の収支(区域内料金で計算)
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▼表3:2010年度各社接続料の収支(区域内料金で計算)
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出所:いずれも総務省、各社資料より筆者作成

表2および3は、各社の3分あたりの昨年度・今年度接続料収支をマトリックスで示したもの。表2・3とも見方は共通で、例えば表3では、ドコモ→KDDIの通話とKDDI→ドコモの3分間の通話がそれぞれ1回なされた際には、ドコモにとっては3.06円の赤字、KDDIにとっては3.06円の黒字となる。

この表によると、ドコモは、KDDI・SBMに対して同じ3分の通話1往復では赤字、KDDIはSBMに対してのみ赤字、SBMは両者に対して黒字という状況だ。これは、市場シェアが概ねドコモ:KDDI:SBM=5:3:2という状況を考えると、市場シェアが最も低いSBMユーザーの場合(実際は自網内定額を実施している為、通話先のほとんどがSBMユーザーであろうが)、例えば10人の通話先がいたとすると、確率的には5人がドコモ、3人がKDDI、2人がSBMとなる。つまり、発信の8割が他網あてになるので、仮に3社とも接続料が全く同じであった場合、市場シェアから鑑みてSBMが圧倒的に不利で、一番ユーザーの多いドコモが有利になることとなる。したがって、SBMの接続料が最も高いのは、規模の経済から見てもある程度仕方のない所というのが筆者の基本的な考え方だ。

注目すべきは、SBMの対ドコモ収支で、昨年度は6.27円/3分であったものが、今年度は7.20円/3分となっており、およそ1円(約+14%)ほどの値上げ効果を生んでいる所だ。一方、対KDDI収支では、昨年度4.83円/3分→今年度4.14円/3分と▲0.7円ほどの収入減となっているものの、対ドコモ収支+1円、対KDDI収支▲0.7円を相殺しても+0.3円(+2.2%)ほどの値上げ効果を生んでいる。

ところで、SBMの昨年度の接続料収支は年間で+300億円程度であったと想定される。

▼2009年度接続料の収支推計(単位・百万円)
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出所:総務省・各社資料などから筆者作成

これまで説明したように接続料を値下げしても、(他社の接続料値下げを考慮することで)実質的には、2.2%程度の値上げ効果が見込まれるほか、加入者増加分のトラヒック増加も加味すれば、それなりの利益押し上げ効果として働いていると見てよいであろう。昨年度のSBMの営業利益が2,950億円であったので構成比で言えば10%超と決して小さくは無い。「稼ぎ所」と揶揄される所以なのである。

 
文・梶本 浩平(金融機関にてアナリストとして通信セクターを担当)

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